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2014年12月4日

【島倉原】「財政健全化」と「緊縮財政」は似て非なるもの(パート2)

From 島倉原@評論家

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●日本はなぜ、負ける戦いへと突き進むのか?
月刊三橋の最新号「消費増税特集」を聞けるのは12/10まで
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

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政治家、御用学者、マスコミの「嘘」を見破る具体的なテクニックを公開。

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おはようございます。
前回の予告通り、今回は、

「いわゆる『政府の借金漬けの状態』(あるいは『国の借金問題』)も、積極財政によって解決することができる」

というお話で、先週出演した「チャンネルAJER」でのテーマでもあります。

(参考記事)積極財政が「国の借金問題」を解決する(島倉原ブログ)
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-73.html

さてさて、「国の借金」といえば、

「政府はGDPの2倍を超える借金を抱えている。国家財政は今や危機的状況だ!! だから増税だ!! 歳出削減だ!!」

というのがお決まりの論調であることは、本メルマガの読者の多くは、ご存じのことでしょう。
例えば…。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/141030/mca1410300500007-n1.htm
(ちなみに、この記事で「財政赤字」とあるのは「政府粗債務」の誤りです。まさかわざとではありますまいが…)

ということで、問題とされている「(名目)GDPに対する政府債務の比率」を議論の対象としてみましょう。
当然ながら、「積極財政をどのくらい行えば、『GDPに対する政府債務の比率』がどのくらい変化するのか」を求めようとすれば、正しいか否かは特定の専門家にしかわからない緻密なシミュレーションが必要になり、私にとっても専門外の領域です。
ところが、

「積極財政と緊縮財政ではどちらの方が、『GDPに対する政府債務の比率』は改善(=低下)するか」

という問題であれば、実は前々回(4週前)に述べた結論を用いれば、「簡明かつ論理的に」答えを出すことができるのです。
前々回述べた結論とは、

「積極財政を行うと政府の財政は健全化し(財政赤字が縮小し)、緊縮財政を行えば政府の財政は逆に悪化する(財政赤字が拡大する)」

のことです。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/11/06/shimakura-9/

ここで、「政府債務=財政赤字の累積」であることを考慮し、なおかつ、

「積極財政を行うほど、名目経済成長率が高まる」
http://on.fb.me/1wUxylr

という歴然とした「事実」を加味すれば、

積極財政⇒財政赤字の縮小によって「GDPに対する政府債務の比率」の分子を抑制し、なおかつ名目経済成長率を高めることで分母を増加させる。
緊縮財政⇒財政赤字の拡大によって「GDPに対する政府債務の比率」の分子を増加させ、なおかつ名目経済成長率を低めることで分母を抑制する。

となるのは、小学生レベルの算数から明らかです。
つまり、「分子を抑制し、分母を増加させる」積極財政の方が、「GDPに対する政府債務の比率」を抑制(=改善)することもまた、自明な結論となるのです。
つまり、歳出削減同様民間所得を削り取り、「財政収支や経済成長にマクロのマイナス効果」を与えてしまう消費税増税は、財政再建にとって有益どころか、むしろ有害な政策なのです。
このことを出発点とすれば、あるべき経済政策の姿も、取り得る選択肢も、一般に議論されている内容とはほぼ180度変わってしまうはず。

ではでは、「GDPに対する政府債務の比率」が長期的に減少に向かうには、どのような条件が必要なのか?
その条件が成立するためには、どの程度の積極財政が必要なのか?

といったところにもご興味があれば、冒頭でもご紹介した、拙ブログ記事を是非ご覧ください。
政府関係者が財政問題でよく取り上げている「プライマリーバランス」にしても、実は積極財政によって経済成長率を高める方が改善できる、というのが実証的な結論です(プライマリーバランスに金融収支を足しただけの財政収支が改善するのだから、ある意味当然の結論ですよね)。
そう考えれば上記の問いに対しても、、あまり複雑な理屈を用いずに、見通しを立てることができるのです。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-73.html

とはいえ、そうした見通しをもって経済政策を立案する政党が存在しないのが、はなはだ残念なところ。
アベノミクスも相も変わらず、「大胆な金融政策」がデフレ脱却の手段のようですし…。
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/126585_1.pdf

↓島倉原のブログ&フェイスブックページはこちら
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/
https://www.facebook.com/shimakurahajime

PS
「この道」の中味を数字を基に具体的に検証するなら、
「月刊三橋」が参考になります。12/10まで。
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI

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【島倉原】「財政健全化」と「緊縮財政」は似て非なるもの(パート2)への3件のコメント

  1. 藤田昭仁 より

    この間藤井先生の記事にもコメントさせていただいたことですが、「小学生レベルの算数から明らか」なことがエリ−ト官僚や政治家はなぜ理解できないのか。 あるいはもし理解していても政策として出力しないのは何故か、奇怪千万です。 

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  2. 宇野克人 より

     このまま需要は喚起することなく、成長政策(供給過剰競争政策)が進むと、また公共関係が潰されていき、民間は昔の家電業界の底辺への価格競争みたく、起業家はパイの無い中で潰されていく。 どうしてそんな堂々巡りばかり繰り返すの?アヅチョンブリケーッ!

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  3. 一筆 より

    「積極財政と緊縮財政ではどちらの方が、『GDPに対する政府債務の比率』は改善(=低下)するか」これほどの愚問はありません。主要各国の通貨が相対的に変動している世界で、それぞれの国内財政が積極的であろうが無かろうが、本質的な問題になり得ないのです。時期によって、様々な価値は相対化されるということを忘れてはいないでしょうか。日本のような政府は、その政府債の大半を国内で消費し、今後はその大半を日銀が所有していく。政府債の利息は、一般会計から捻出されるがその受取手は誰になるのでしょうか。所詮、その利潤もまた国内を巡る訳ですから、このような健全な政府の場合、プライマリーバランスを問う時には、償還する政府債とその利払いに充てる予算は、そのバランスから差し引いて計算させるのが自然です。換言すれば、日本国政府に対しプライマリーバランスの問題を提示すること自体が、狂っている訳です。現状の国内経済に於いて最大のリスクは、銀行の存在理由を市場が全く問題にしていない事です。銀行はいつから、政府債での利潤で経営を良しとするような信認形態が出来上がったのでしょうか。市場は、何故BISと主要格付会社への信託に、チェックポイントなりバリアーを設けないのでしょうか。民間で、国内の資金を最大に外国へ流出させている機関が大手銀行群である事実に対して、誰も問題視しない現状に、私は理解不能状態にあります。財政を出動させても、それを貨幣に代え、民間へ流通させるのが銀行の役割という基本原則がないがしろにされています。資金の貸し手であるべき銀行が、債権の持ち手に変貌している現状に、誰かがクレームを付けなければなりません。日銀の当座預金も金利ゼロにし、もっと銀行にリスクを取らせなければなりません。銀行にリスクが存在するからこそ、市場に資金が流通するのですから。市場原理主義者が愛するミルトン・フリードマンでさえ、米国政府債券の最大にして最終受け手である「国防費」には、無用であるとのノーを言いませんでした。これは米国に於ける安全保障概念が明確であったからです。日本は島国であり、天然災害が世界的にも集中し、資源が無い場所にある国です。そこで政治経済を担う政府は、その安全保障概念に「国防、防災、食料、エネルギー」を入れるのは必須であり、仮にこの国の政府が新自由主義的概念を用いようが、これら「国防、防災、食料、エネルギー」特別枠で保護しなければなりません。地政学的な意味だけで無く、地域的な意味合いに於いても、地球上に存在する政府は全てが相対的に相違しているのですから、フリードマンでさえも容認せざるを得ません。肝要なのは、安全保障概念の確立と発信ですね。これらを思考してみただけでも、絶対的な意味合いに於ける「積極財政と緊縮財政ではどちらの方が、『GDPに対する政府債務の比率』は改善するか」という問いが愚かだという事が分かって頂けるのでは無いでしょうか。

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