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2014年11月20日

【島倉原】経済政策の乱気流

From 島倉原@評論家

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●三橋貴明公式チャンネルに最新Videoが登場
https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress/videos

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おはようございます。
今回は、政治に振り回される近頃の経済・金融動向について、思いつくままに述べてみたいと思います。
ちなみに今回のタイトルは、こちらの本から連想したものです。特に脈絡はありませんが、ご参考まで。
http://amzn.to/1HcOsz0

まずは今週月曜に発表された、7−9月期のGDP第1次速報値。
駆け込み需要の反動減があった4−6月期からリバウンドするどころか、さらにマイナスになろうとは…さすがに驚きました。
http://on.fb.me/1vjEysc

今回のマイナス成長の直接的な要因は「在庫の取り崩し」で、それを除けばプラス成長、と言えなくもありません。
とはいえ、下記リンク先でも示したとおり、民間企業設備投資は前期比マイナスですし、かろうじてプラスだった民間消費にしても17年前よりも低調で、停滞感は明らかです。
ことによると今回の結果は、「緊縮財政を続けてきたことによって、日本経済が景気変動のショックに対して以前より弱体化している」という悲しい現実を示しているのかもしれません。
http://on.fb.me/1wQ8KGi

ちなみに17年前の7−9月期といえば、タイの通貨バーツが変動相場制に移行し、アジア通貨危機の引き金が引かれたのがちょうど1997年の7月
今回はそうしためぼしいイベントが無い一方で、経済の悪化度合いは当時を上回っています。
まさか、当時よりもより一層深刻な景気後退を示している国内経済の状況を、ウクライナ危機を含めたロシア・東欧地域の経済動向のせいにするわけにもいかないでしょう。

他方で、日本経済への影響度は別として、7月以降のユーロ安のトレンドとともに、同地域の新興国市場(下記リンクはギリシャ、ロシア、ハンガリー)のパフォーマンスが著しく低下しているのは事実です。
http://on.fb.me/1uqyCdx
http://on.fb.me/1qSh1rd
http://on.fb.me/1u6bT2D

11月に入ってからも、ロシア中央銀行が為替介入額を制限したのち、自国通貨ルーブルを変動相場制に移行させるというイベントが発生しています。
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPL4N0SV4EO20141105
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0IU0QO20141110

こうした動きは17年前のアジア地域の動向を想わせるところもあり、以前本メルマガでも可能性を論じた「ロシア・東欧地域発の新興国危機」に至るのかどうかはともかくとして、引き続き注目されるところです。

(拙ブログからの参考記事)
「新興国危機が起こるとしたら…」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-66.html
「アメリカ株の先行きをどう考えるのか」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-70.html

さて、日本経済に話を戻します。
ことここに至っては、17年前も今回も緊縮財政こそが景気後退の真犯人であり、財政政策を軽視したアベノミクスの欠陥が図らずも露呈した、と認識すべきでしょう。
こうした状況で、なぜ追加増税凍結の是非を問う解散総選挙を行うことになるのか、理解に苦しむところです。
増税を凍結したいなら、現在の多数派与党の下でまずは増税凍結法案の成立を図るのが王道で、そうでないなら失政の責任を取って内閣総辞職をするのが筋でしょう。
何せ、百点満点の内容かどうかはともかくとして、増税凍結法案自体は既に国会に提出されているのですから。
http://www.sankei.com/politics/news/141104/plt1411040024-n1.html

それとも、現政権の真の狙いは「景気条項を削除した増税法案を成立させ、緊縮財政を確実に前進させる」ことにあるのでしょうか?
直観的なものに過ぎませんが、経済政策についての正しいビジョンを持たない関係当事者の思惑を超えて、そうした流れができつつあるかのような危惧を覚えます。
例えば下記のインタビュー記事などは、「もはやアベノミクスなど支持するに足らないことが明確になった」というメッセージなのかもしれません(おそらく、ご本人の思惑とは異なるのでしょうが)。
http://mainichi.jp/select/news/20141119k0000m010171000c.html

経済政策の柱となるべきもの、それは積極財政です。
前回(先々週)寄稿した「『財政健全化』と『緊縮財政』は似て非なるもの」という記事では、

「財政支出を拡大する『積極財政』を行うことが、経済のマクロなメカニズムを通じて、単年度の政府の収支を改善する『財政健全化』をもたらす」

と述べました(お忘れの方は、同記事、および拙ブログの下記記事をご覧ください)。

(拙ブログからの参考記事)「積極財政こそが財政健全化を実現する」
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-69.html

これに対して、藤田昭仁さんという方から、「日本の財政の借金漬けの状態を放置しておいて、健全な財政とは言えないのではないか」という趣旨のコメントを、「新」日本経済新聞のWebサイト上でいただきました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/11/06/shimakura-9/

ここでいう「借金漬けの状態」とは、恐らく「国際的に見て突出して高い、日本の名目GDPに対する日本政府の債務残高の比率」のことを指しているのではないかと思われます。
マスメディア等で取り上げられるのは単年度の財政赤字よりもむしろこちらの指標で、積極財政に対して「なんとなく」ネガティブな印象を多くの国民に与えているのもこちらでしょう。
したがって、同指標についての明確な説明も用意しなければ片手落ち、という意味では、藤田さんのご指摘はもっともなものだと思います。

実はこのテーマについては、来週のチャンネルAjer出演とも合わせて、次回のメルマガでご説明するつもりでおります(おりました)。
これもまた、「緊縮財政こそが日本の長期不況の原因である(積極財政こそが経済成長をもたらす)」という現実的な前提に立てば、

「いわゆる『政府の借金漬けの状態』(あるいは『国の借金問題』)も、積極財政によって解決することができる」

という結論をある程度簡明に提示できるのではないか、と考えている次第です。
乞うご期待!?

↓島倉原のブログ&フェイスブックページはこちら
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/
https://www.facebook.com/shimakurahajime

PS
2017年の消費増税が決定! 日本経済は底割れへと向かうのか?
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI

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【島倉原】経済政策の乱気流への2件のコメント

  1. ハリケーン力丸 より

    そもそも失われた20年、すなわちデフレ突入はバブル崩壊からではなく、橋本政権の消費増税3→5%からはじまったというのが当方の認識です。キャッチアップ型の経済成長は出来なくなっても、それが成長鈍化の原因ではなく、日本人は消費することが出来づらくなったことが原因です。厳しい消費者であるからこそ、商品に厳しくメーカーが切磋琢磨に競争して、いい商品が産み出される。欧米の背中を追えなくなったから、国民の消費意欲が停滞して、経済も停滞したのではなく、単に増税後の影響で不可分所得が減ったから必要最低限のものしか買えなくなったことが原因です。

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  2. 藤田昭仁 より

    島倉さんの次回記事楽しみしております。それで 更なる質問と言うか島倉さんのお考えをお聞きしたいので、私の考えているところをさらにコメント差し上げます。島倉さんは失われ20年は緊縮財政が原因だと主張されていますがら、積極財政によって、景気を浮揚させ税収を増やす事ができ、それによって財政赤字を減らして国の借金も減らしていけるいう論理の流れの方向はわかります。しかし私は緊縮財政は結果だと思います。日本社会の停滞がまずあって、だから政府は緊縮財政にならざるを得なかったのではないかと考えています。そしてこの停滞は通常の景気循環とは構造的に異なっていると読んでいます。 だから1999年から継続している日銀の低金利政策が実質効を奏せずにきたのではないでしょうか。「企業は低金利なら借金しやすいので借金して投資に回すはずですが、それは投資して儲けが増える見通しが立つからです。家計から見れば消費したいものがはっきり見えている状態です。失われた20年はバブルが弾けたあとに始まりまったわけですが、あのバブルは日本が1853年以来歩んできたキャッチアップ経済社会が欧米に完全に追いつた爛熟の相であり、追いつけエネルギ-が消える直前の蝋燭の炎であったと思います。 日本経済には1853年から約150年間は米欧工業化社会モデルの豊かさがはっきり目標としてあった。日本は米欧という工業化社会のお手本教科書どおりに成長の線路にのってキャッチアップをすすめた。景気の循環も工業化社会の理論どおりのものであったので、金融政策でコントロ−ルがきいた。 また積極財政の典型例としての東海道/山陽新幹線が大きく成長に寄与したことは間違いないでしょう。そしてそれが単に建設需要の一時的GDP成長にとどまらず、その後の日本経済の成長にも大きく寄与しつづけたのは、 明確な目標があったからこそ成長の潜在力を顕在化しえたのだと思います。バブルが弾けてからはもう日本の前にはその背中を見ながら走る手本はなくなりました。 ポスト工業化社会の日本はどこへ向かって走るべきかまた迷っているところでしょう。経済成長とはそれまで必要でなかった何かを必要と認識し、 それを生産し消費することによって成り立つものです。現在のデフレはポスト工業化社会の日本にとって新しい必要が見えていないことが原因でしょう。ここで積極財政の話にもどると、財政赤字があってデフレの状態で即座の税収増が期待できない場合は赤字補填の国債発行ということになるります。 その上に積極財政となれば、さらに国債発行ということになる。ここで積極財政で国土強靭化のインンフラ整備といえばそれは必要とは誰もが考えるでしょうが、それが将来のGDPの成長につながるものでなければ、後の世代に借金だけ残して直近の一時的建設需要の果実を先食いすることに終わってしまいます。それでは増税の実質先送りにすぎません。ここで日本社会全体の創造力が必要とされるわけですが、現在のところ生存しているのは米欧工業化社会の豊かさを目標モデルとしたキャッチアップ経済社会で成長してきた企業やキャッチアップに適応的教育を受けた個人=想定外に直面すると思考停止に陥る個人がほとんどです。 先が見えないことのあせりからか すべてとは言わないが改憲論も含めて世間には改革と言う名のかきまわしが横行していいます。がんばれ日本、でも何に向かって頑張ればいいのか。

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