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2013年12月10日

【藤井聡】「震災ゴジラ!」と「巨大地震Xデー」

From 藤井聡@京都大学大学院教授

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今,「特定秘密保護法案」を巡って,メディア上では様々な意見が供出されておりますが,そんな様子を様々なメディアで拝見しつつ....改めて佐藤健志さんの「震災ゴジラ!」の破壊力に思いを馳せておりました.

先々週も「震災ゴジラ!」をご紹介差し上げましたが,この本,どれだけ考えても,やっぱり超絶に面白い本です!

ついては,今週も改めてこのご本,取り上げたいと思います.実はこの本,「国土強靱化」を考える上で,メチャクチャに大切な視点を提供している....と感じたからです.

まず,この本のお話を,当方がこれまで考えてきました論考で使って参りました用語を用いて, ものスゴク集約して一言で言うと,

「日本は『近代』という異物に直面して以来,
それと大人としてきちんとした付き合いをする事に失敗し続け,
その結果,破滅へとまっしぐらに向かっている」

ということになろうかと思います.
(例えば,http://www.ikuhosha.co.jp/public/introduction06834.html_の最後の論考「村上春樹を巡る戦後日本のクロニクル」をご参照ください)

こんな事書くと,新自由主義的ホシュ派は

「そっか,だからやっぱ,欧米流の改革(=近代化)しなきゃ!」

とか言うでしょうし,シンセイ・ホシュ派は,

「そっか,だったら,舶来の近代を全て排除(=破壊!)して,
もう一度古い日本に戻ればいいんだ!」

とか言うでしょうし,サヨクの人達は

「そっか,だからやっぱ,戦前のニッポンコッカや古いニッポンなんて全部忘れて,
近代にまるまる成っちゃえばいいんだ!」

なんて言いますが,これらは全部,絶対,無理.

古くから日本にあるものを「全部捨てる」なんて事はどう考えたってできませんし,古い日本に「完全に戻る」っていう道も,ここまで近代化しちゃった今となっては到底無理だからです.

だから,そんな「無理」をおして無理矢理そんなメチャクチャな事をやっちゃうと結局,いずれも「破滅」へと向かいます.

つまり,新自由主義ホシュも,シンセイ・ホシュも,サヨクも結局は皆,突き詰めれば「破滅」しかもたらさないわけす.

ですから,この「破滅へと向かう」というプロセスは,

「日本国家の脆弱化」

と呼ぶことができます.

サヨク的主張で日本が脆弱化したことは言わずもがなですし,
新自由主義ホシュ的主張で日本が脆弱化したことも,今となっては多数の方が知悉しておられるでしょうし,
シンセイ・ホシュ的主張でもまた(近代的軍隊を全部捨てて日本刀だけで防衛なんてできませんし,舶来の資本主義と完全に手を切ってしまうといきなりエネルギー危機にも陥ってしまうわけですから)脆弱化することも明白です.

・・・

ところで,今政府で進めようとしている「国土強靭化=国家強靭化(ナショナルレジリエンス確保)」の第一歩は,過日国会で成立した(祝!!!)その基本法(国土強靱化基本法)でも明記されているように,

『脆弱性評価』

なのです.つまり,「強靭化するために,まずは日本の何が脆弱なのか,どういう原因で脆弱化しているのか,しっかりと明らかにしましょう」ということが,その基本法に明記されているのです.強靭化しようとするなら,まずどこが弱点なのかをしっかりと理解することが,何よりも先決だ,というわけです.

で,政府ではもちろん,これを実務的に進めている訳ですが,

もしこれを「思想的」な次元からやっていくとするなら,我が国の「近現代」を

「日本は『近代』という異物に直面し,
それと大人としてきちんとした付き合いをする事に失敗し続け,
その結果,破滅へとまっしぐらに向かっている」

と認識する必要があるのではないかと思うわけであります.

つまり!実はこの佐藤さんの「震災ゴジラ!」に記載されている様な「戦後日本/近代日本のマクロ精神分析」こそが,思想的次元における脆弱性評価の「第一歩」となるのではないかと感じた次第であります.

・・・

ただし,精神病理への対策においては,その病理構造を的確に解釈することは極めて重要ではありますが,その医療を前に進めていくためには,様々な実践を重ねて行くことが必要であることは論を待ちません.

当方は今,その意味におきまして,わたしたち日本人が,今,目の前にある様々な危機の一つ一つをしっかりと認識し,それに対してなし得る具体的な対策を,具体的に取り組んで行くことこそが,佐藤さんが指摘されているような「集団的精神病理状況」に対する,最善の対策になるのではないかと考えています.

で,それこそが,今政府で進められている「国土強靱化」と呼ばれる行政の方針そのものではないかと考えている次第であります.

その具体的な内容は,まさに先週,政府で「大綱」(案)という形でまとめられましたが,それと同時に,その内容を

『巨 大 地 震 Xデー 〜南海トラフ地震、首都直下地震に打ち克つ45の国家プログラム』
<メガクエイク>

という一般の方々向けの書籍にまとめ,それをこの度,出版することとなりました!

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もちろん,「巨大地震」への対応だけで,この病理状況から脱出できはしませんが,それに向けた「具体的な第一歩」としては,もっとも現実性の高い具体策となるのではないかと...思います.

逆に言うなら,これほど科学的に明らかな巨大危機の存在という「状況」をすらまともに見据える事が出来ない民族には,明るい未来などあり得ない....ということですね.

ですから,「巨大地震」という危機に対する対応という「エクセサイズ1」を優秀な成績で終える事ができたケースにおいてのみ,我が国日本は,より高次の危機対応を図る「エクセサイズ2」「エクセサイズ3」....に進むことが可能となるのではないかと...思うわけであります.

・・・・

ということで,この国の精神病理的状況から脱却し,この国それ自身を強靭化していくためには,今日的な我が国の「状況」を十二分に踏まえるなら,

・認識論的には,「震災ゴジラ!  〜戦後は破局へと回帰する〜」を,
・実践論的には,「巨大地震Xデー  〜南海トラフ地震、首都直下地震に打ち克つ45の国家プログラム〜」

をご参照いただくと,治癒の縁(よすが)が見いだせるのではないかと....本気で考えている次第であります.

ということで皆様,ゴジラと巨大地震Xデーもご参照いただきつつ,(松本人志の『しんぼる』の様に!)まともな大人になるためのエクセサイズを重ねて参りましょう!!

PS
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「巨大地震Xデー」は今週13日発売です.「東北復興」のためにも(←本書の印
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【藤井聡】「震災ゴジラ!」と「巨大地震Xデー」への4件のコメント

  1. はまちゃん より

    >(松本人志の『しんぼる』の様に!)まともな大人になる>ためのエクセサイズを重ねて参りましょう!!先生は松本人志のこの映画をごらんになったのですか?私も見たのですが、よく理解できませんでした。是非先生の感想が聞いてみたいです。

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  2. ろんどなー より

    「特定秘密保護法」に纏わる事象で明らかになったことは、今まで主流派だと思われていたいわゆる「リベラル派」メディア、「リベラル派」政治家、「リベラル派」知識人達の劣化(老化?)です。彼らがただただ廃案に持ち込もうとなりふり構わずあせっている様子が国会中継にもマスメディアにも溢れ、一歩引いて俯瞰している国民からは、「議論に応じていないにはどちらか」「強行に言論を封殺しようとしている側はどちらか」が、相当バレてしまったはず。そしてバカのひとつ憶えのように「ファシズム復活!」「息子が戦場に行く!」というレトロ・フレーズをリサイクルしているだけの人たちは、学ぶことを止めてしまったとしか見えないのです。今時こんなフレーズに乗る若者がいるとは思えないので、多分左翼OB・OG達を呼び戻そうとしていたのかもしれませんが・・・。昨今英米政府が時効切れの戦時下機密情報を開示しつつあり、歴史の見直しはすでに始まっているというのに・・・。ところで、ここ数日のどの新聞社説よりも「特定秘密保護法」に関して中立で正確な情報と示唆に満ちた考察をネット上で見つけました。人気ブログなのでご存知の方も多いと思われますが、「極東ブログ」2013年12月7日付けの記事です。その中にある著者finalvent氏の以下の記述に私もまったく同感だったので、引用させていただきます。>もう一つ余談めくが、知識人の頽落した光景にも溜息が出た。そんなものは1980年代の反核騒動で経験済みと言えないこともないが、むしろ、それ以降に登場した、オールタナティヴな知性が今回の件で、ばたばたと屈していく光景を見た。洒落た諧謔や、中立的な冷静な視点で議論を展開していたオールタナティヴな知性が、たとえば反自民ならなんでもいいといった素朴な政治構図に落ちていく様を見るのは、なんとも言いがたいものだった。

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  4. ヌコ より

    お〜〜〜 藤井師匠!まさに、今日のエントリー、我が意を得たりちう内容どす。右も左も保守も革新も(別になんて言ってもいいんですが(笑))、バランス感覚ちうか、相手を許容する部分が乏しく感じますわ。お互いに、ある意味では良い事も言っておるのに、プライドなのか?尊重し合おうとしとりませんよね。そこをアメやシナに漬け込まれるのでせうね(ちうか、明らかに米中の意見を代弁する者たちもおりますが)。そこに引きずられてしまう人達が仰山居てまうのも、日本人全体が価値判断基準を失っておるちゅう事なのでせうか..その基準喪失の背景に、近代という異物に直面して失敗し続けちう事があるのでせうね。夏目漱石氏が留学先でノイローゼになったちうて聴きました。特に、真面目で嘘をつかなかった先達の日本人らは、近代生きる我々以上に、欧米人の思想や文化(含:ブラフやハッタリ(笑))に戸惑ったのではないでせうか?かく言う小生も、酒場で英米人に日本の至らなさ(あくまで英米から見た視点)を指摘され、集中砲火で苛められた事がありまんのん。漱石ほど高度な悩みではなかったのかと思うのどすが、それらの意味がなんとなく直観で判りますわよ。どうしようも無い絶望感の中、日本を見渡すと、その絶望にすら到っていない方々(特にエリート)が高邁な事を言って徐々に日本を壊しよる。その事に対する更なる絶望をや…合掌!

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