アーカイブス

2013年5月10日

【三橋&古谷】TPP失業

FROM 三橋貴明&古谷経衡@月刊三橋ナビゲーター

○古谷

そもそもTPPって、たしかチリとかあの辺の国が始めたものですね。

○三橋
チリ、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランドの4カ国。

○古谷
ぶっちゃけ、ちょっと小さな国ですよね。

○三橋
小国ですね。

○古谷
それがアメリカがあとから入って来たということですか。

○三橋
あとから入ってきた。
TPPはいろいろな分野がありますけどその中にもともとなかったのがあって、
あとからアメリカが加えたのが2つあった。

一つが金融サービス。保険を含んでるんです。もう一つが投資。

投資と金融サービスというのは、あとからアメリカが加えたんですよ。
だからアメリカが何をやりたいか、よくわかる。

○古谷
アメリカからしたら、ブルネイですとかチリですとか、
そういう国がちょっと細々と始めたような協定に目をつけて、
よし、やってやろうという感じにやってきたと。

○三橋
どうでしょうね。ここで考えなくちゃいけないのは
アメリカ国民は9割以上がTPPなんか知らないんですよ。
知ってる普通のアメリカ国民は反対している人が多いですね。

○古谷
反対が多いんですか。

○三橋
反対が多いですよ。だって、自分たちの職が奪われちゃうんだから。

というわけで、賛成しているのはグローバル企業とグローバル投資家たちだけです

彼らがアメリカ政府を利用して、ロビーイングとかしてね、圧力かけてでもいいですけど、それで環太平洋諸国に対してEUチックな自由自在に物、サービス、お金、そして人が行き交うような、そういう環境を作ろうとしているのがTPPなんですね。

○古谷
だから、ある時にTPPにアメリカは目をつけて、そこからやっていこうとなったわけですね。

○三橋 活用しようと。たぶん最初から日本を入れたがってたんじゃないかなと。アメリカのTPPを推進している人たちは、そう思ってるんじゃないかなと思うんです。でもこれ、ポイントがあって。要はTPPも、あるいはEUも同じなんだけど、ユーロもそうだけど、元をたどると全部レーガノミクスなんですよ。

○古谷 これは第1回目で出てきました。

○三橋
レーガノミクスというのは、基本的には国民経済の供給能力を高めましょうと。物を作る力を高めましょうというものです。

なんかよさそうに聞こえますけど、サービスを供給する力を高めましょう、そのためには各種の規制を緩和もしくは撤廃しましょう、新規参入をどんどん呼び込みましょう、国内だけじゃらちがあかないから、外国からも呼びましょうというわけで、物、金、人、あとサービスの国境における制限をやめましょう、ということで、外国企業ともどんどん競争させて、市場競争を激化させましょう。そうしたら供給能力が高まるでしょう、公営企業あるいは国営企業は民営化してしまいましょうという発想なんですけどね。

もう一つは、社会保障支出とか公共事業といった政府の無駄な支出は切り詰めましょうと。それで政府が需要を縮小して、民間企業のほうは競争で供給能力が拡大して、これで何が実現されるかというと、インフレの抑制なんですよね。

つまり、物価を押し下げる政策なんですよ、レーガノミクスというのは。当然、その流れを引き継いでいるというか、そのままですけどね。そのグローバル版であるTPPもEUもユーロも、インフレ対策。

○古谷 なるほど。インフレにしないように。

○三橋 インフレにしないというか、インフレ率を押し下げる政策なんです。だからデフレの国がやったらどうなるかというと、デフレの国がやるとお互いに失業率が増えていきます、という話になっちゃうんです。

ここで重要な話は、TPPにせよEUにせよ、「自由貿易だからやります」なんて言っているアホな人がいるんだけども、自由貿易ってそもそもなあにと。

○古谷 何でしょうね。

<略>

○古谷
今、すごくかしましいTPPについての基礎的なところを、今教えていただいたんですけれども、いざ、TPPの成り立ちですとか概念というのは、今教えていただいたとおりだと思うんですが、このTPPに入った時にいろいろな試算がございますよね。

例えば、農水省からいくら、経済産業省からいくら。これはいろいろな省とかいろいろな団体によって、よくもあり、悪くもありみたいな感じなんですけど、これは実際のところ、どうなんですかね。

○三橋
経済効果とか?

○古谷
そうですね。

○三橋
これはシミュレーションするしかないんですけど、GTAPというモデルがあって。一般応用均衡モデルというモデルがあるんですよ。そのモデルに基づいて、経産省かどこかが──内閣府かな──が出した経済効果が、10年後に3.2兆円、日本のGDPが増えますよと。0.6%成長しますよと。

○古谷
10年後にですね。

○三橋
10年後に。これは10年後の時点で突っこみたいんだけど、その前に異様なモデルなんです、これって。

それは、例えばTPPをやりましたと。アメリカとかオーストラリアから農産物の安いのがいっぱい入ってきて、日本の農家が次々に廃業していきますと。ところが彼らは失業者にならない。

○古谷
なぜですか。

○三橋
農業をやめた次の瞬間には、別の職に就職できるから。

○古谷 ちょっとあり得ない。

○三橋
ちょっとっていうか、絶対にあり得ないでしょう。というモデルなんですよ。だから要は、失業率が増えちゃった場合には、当然その分消費が減るから、結果が変わっちゃうんだけど、それを前提にできないんですよ。計算が複雑すぎて。あるいは、その物価が下がりましたと。物価が下がっても、例えばTPPでおかしい議論だなと思うのは、今まで1,000円でお米を買ってました。アメリカのカリフォルニア米を900円で買いました。そうすると残りの100円って使われるそうなんですよ、消費に必ず。

○古谷
という試算なんですね。

○三橋 そういう試算なんです。

関連記事

アーカイブス

【三橋貴明】自虐的歴史学者

アーカイブス

[三橋実況中継]谷垣幹事長の発言

アーカイブス

【施 光恒】「英語入試改革」で教育現場は大混乱

アーカイブス

【東田剛】改革派の無茶ぶり

アーカイブス

【三橋貴明】財務省主権国家

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】決して許してはならない凶行

  2. 日本経済

    【三橋貴明】聖徳太子の英雄物語

  3. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】成田悠輔氏の「老人集団自決論」が論外なのは、...

  4. 日本経済

    【室伏謙一】「金融緩和悪玉論」を信じると自分達の首を絞...

  5. 日本経済

    【三橋貴明】聖徳太子の英雄物語

  6. 日本経済

    【三橋貴明】政府債務対GDP比率と財政破綻は関係がない

  7. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】『2023年度 国土強靱化定量的脆弱性評価・...

  8. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】【3月14日に土木学会で記者会見】首都直下地...

  9. 日本経済

    【三橋貴明】無知で間違っている働き者は度し難い

  10. 日本経済

    【三橋貴明】PBと財政破綻は何の関係もない

MORE

タグクラウド