アメリカ

コラム

2017年4月7日

【三橋貴明】続 主要農作物種子法廃止(モンサント法)に反対する

From 三橋貴明@ブログ

SAPIO2017年5月号に「日韓合意破棄ならば日本は平昌五輪をボイコットせよ」が掲載されました。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B06XDGJY2B

まずは本のご紹介。

【資産家たちはなぜ今、テキサスを買い始めたのか?】
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4827210519

本書の何が面白いかと言えば、アメリカの住宅事情、住宅投資、税制、不動産売買、証券化商品などなど、リアルな現地の住宅ビジネスのプロセスについて克明に書いてある点です。

意外と知られてませんが、アメリカは日本とは比較にならないほど小切手という「おカネ」が頻繁に使われる国です。理由は、銀行間振込の手数料が高いためですが、小切手というシステムに慣れたアメリカ人は、日本人よりも、「おカネは交換用商品というモノではなく、債務と債権の記録である」という真実を実体験として理解しているような気がします。

あるいは、我々の住宅ローンが小口の証券として売られていくという話は、実は「おカネの譲渡性」と関わっているのですが、この種の話が現実の事例と共に紹介されており、大変興味深く読ませて頂きました。

さて、モンサント法ならぬ「主要農作物種子法廃止」の続きです。

『【種子法廃止】種子の自給は農民の自立
http://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2017/170330-32373.php

農林水産省は主要農作物種子法を「廃止する」法案を今国会に提出し3月23日に衆議院農林水産委員会が可決した。今後、参議院で審議が行われるが、同法の廃止は国民の基礎的食料である米、麦、大豆の種子を国が守るという政策を放棄するもので、種子の供給不安、外資系企業の参入による種子の支配などの懸念が国民の間で広がっている。

法律が果たしてきた役割を議論せず、廃止ありきの政府の姿勢は問題だとして3月27日に有志が呼びかけて開いた「日本の種子(たね)を守る会」には全国から250人を超える人々が集まり、「種子の自給は農民の自立、国民の自立の問題」などの声があがったほか、議員立法で種子法に代わる法律を制定することも食と農の未来のために必要だとの意見も出た。集会の概要をもとに問題を整理する。(後略)』

種子法が何のために存在しているかと言えば、

「種子法によって稲・麦・大豆の種子を対象として、都道府県が自ら普及すべき優良品種(奨励品種)を指定し、原種と原原種の生産、種子生産ほ場の指定、種子の審査制度などが規定される」ためです。

要するに、日本古来の原種や原原種の優良品種を都道府県が管理し、農家に提供せよ、という話になります。日本の食糧安全保障、食糧自給、そして食の安全を考えたとき、これは「当然の規制」だと思います。

種子法の肝は、自治体などに対し、「その地域に合った作物の種」の開発・普及を義務づけている点です。すなわち、日本の食糧安全保障の肝である「種」について、単純に「ビジネス」と化すことはせず、農家に安価で優良な種を提供することを、種子法が各自治体に義務付けているのです。

同時に、種子法は「遺伝子組み換え作物」の栽培としての普及を妨げる防壁でもあります。何しろ、遺伝子組み換え作物の栽培が始まり、遺伝子組み換え作物の花粉が空中を飛び、在来種と交配してしまう危険は、誰にも防ぐことができません。

比較的、遺伝子組み換え作物の栽培に否定的なメキシコであっても、主食であるトウモロコシの「在来種」であるはずの主旨から、組換え遺伝子が発見されています。それはまあ、空中を散布する花粉を完全に防ぐことなど、誰にもできません。

日本が種子法を廃止し、将来的に遺伝子組み換え作物の「栽培」(※バラはすでに解禁されています)を認めた場合、最終的に日本の主食である米などが、遺伝子組み換えに全て汚染されてしまうという状況を、誰が否定することができるのでしょうか。

非常に腹立たしいのは、将来的に日本国民の食を「汚染」する可能性がある種子法改正に携わった規制改革推進会議の連中、あるいは国会議員たちは、将来的に悲惨な状況になったとしても、誰一人として責任を取らないことが分かっていることです。遺伝子組み換え作物が、日本国民の遺伝子に致命的な障害を与えることが判明したとしても、その時点で種子法廃止に困窮した連中は、要職を退いているか、もしくは死んでいることでしょう。

断言しますが、この連中は絶対に、誰一人として責任を取りません。

無論、種子法により、優良品種が安く農家に販売され、民間企業が不利益を被っているという「可能性」は否定できません。ならば、やるべきことは種子法の改正であり、「価格調整」や都道府県提供の種子供給に際した「数量調整」で対処すれば済む話です。

ところが、現実には「種子法の廃止」というわけです。

我が国は、狂っています。

種子法廃止が、将来的にモンサントの遺伝子組み換え作物の「栽培」に道を開く規制緩和でないと言われても、全く信じられません。

遺伝子組み換え作物の「汚染」の恐ろしさは、あとになって遺伝子組み換え作物が健康や「人間の遺伝子」に害を与えることが分かったとしても、汚染が一定以上進んでしまうと、もはや元に戻すことはできないという点です。

一度、汚染が進んでしまうと、手遅れなのです。

さらに、モンサントの遺伝子組み換え作物とパッケージで売られる「ラウンドアップ」が、土地に長期的にいかなる影響を与えるかも未知数です。

すでにして、ラウンドアップに耐性を持つ雑草が登場しています。すると、より強力な除草剤を使う。遺伝子組み換え作物の方も、より強力な「除草剤に対する耐性」を持つバクテリアを遺伝子に注入し、品種改良をするという、いたちごっこが続く可能性が濃厚です。

別に、現在の日本は穀物の「種」の供給不足や、価格高騰に苦しんでいるわけでも何でもありません。それにも関わらず、なぜ安倍政権は、いきなり「種子法廃止」などという、ラディカル(過激)な規制緩和に踏み切るのでしょう。

本法が「モンサント法」であるという疑いは、調べれば調べるほど、高まっていっています。

三橋貴明は、日本に取り返しのつかない「遺伝子組み換え作物による汚染」をもたらしかねない、モンサント法ならぬ「主要農作物種子法廃止法案」に、断固として反対します。

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