【藤井聡】今こそ、全国新幹線ネットワーク「第二期・整備計画」を

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与

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【解説】

「人口減少で日本経済は本当に衰退するのか?」

データに基づいて三橋貴明が解説
↓↓
https://www.youtube.com/watch?v=IPXsFyPE7uM

富とはお金のことだと思っていませんか・・・?
https://www.youtube.com/watch?v=PnqVW9dgeMA

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(1)新幹線の大きな力
「東京大阪を二時間半で結ぶ新幹線」が、日本の高度成長以降、今日の日本経済をささえ続けてきたことは疑いの余地がありません。

太平洋ベルトが栄えたのも、新潟、仙台、福岡が大都市に成長した背景にも、「新幹線整備」が重大な役割を担ったことは否定しがたい事実です。

そして昨今では、熊本が最新の政令市になったのも、金沢が空前の観光のにぎわいを見せているのも、新幹線の開業が重大な役割を果たしています。

一方で、大分、宮崎の東九州や山陰、四国、そして、羽越地方、さらには札幌を除く北海道の大部分の地域――これらの地域では、いわゆる「過疎」が進行し、目を覆うばかりに疲弊してしまった地が広がっています。こうした地域の衰弱の背景には、新幹線の「未」整備が決定的な影響を及ぼしています。

そもそも、都市部に新幹線を集中投資し、地方部に何もしなければ、「地方から都市への人口や企業の流出」は避けられなくなります。このことはつまり、都市部への新幹線投資は、地方部に対して、「経済被害」を与えていることを意味しています。

(※ 例えば、山陽高速道路は、山陰地方に1.9兆円の被害をもたらしていると推計されています。[下記のスライド13]
詳細はこちら)

(こうした議論の詳細は、下記の『新幹線とナショナリズム』等をご参照ください)
新幹線とナショナリズム

(2)「次」を考える時代に入ってきた新幹線の整備計画
一方で、わが国の新幹線整備は長らく停滞し、民主党政権でその動きはほぼストップしていたのですが、民主党政権末期ごろから徐々に動きはじめ、今日では、北海道、北陸、九州のそれぞれで、整備が進められる状況となっています。

そもそも今日の新幹線の整備は、40年以上も前の1973年につくられた「整備計画」にそって進められてきました。

これまではなかなかその「終わり」が見えてこなかったのですが、ここにきてようやく、その「終わり」が見えてきました。

北陸新幹線の「敦賀」接続は6年後、
長崎新幹線も6年後、
北海道新幹線の「札幌」接続は15年後にそれぞれ、完了する見通しとなっています。

ですから我々も遂に、73年の「整備計画」の「次」の議論を始めるタイミングにさしかかり始める状況となったわけです。

(3)新幹線整備のプロセス
今日の状況を確認する意味でも、ここで少し、新幹線整備が行政的にどのように進められているのかを解説いたしましょう。

まず、新幹線は、1970年に作られた「基本法」(全国新幹線鉄道整備法)に基づいて、作られます。

この基本法によれば、まず全国的な視点から「基本計画」がつくられます。わが国ではこの基本計画は、1971年~1973年にかけて作られました。そのネットワークはこちらになっています。
詳細はこちら

この地図を是非、よくご覧になってみてください。

ご覧の様に、北海道には旭川にまでつなげられることが決定されており、東北でも青森、秋田に接続することが決定されています。西日本では、鳥取、島根と四国四県、そして東九州の街々にも、新幹線がつくられることが決定されています。

一方、こうして基本計画を策定した上で、その基本計画ネットワークの中で、早期実現が必要な区間をさらに選び出し、「整備計画」が策定されます。

今、この整備計画まで来ているのが、北陸、九州、北海道の3つの路線です(中央リニア新幹線も整備計画まで来ていますが、異なるプロセスで進められているので、その件についてはまた別途論ずることとしたいと思います)。

そして、その「整備計画」とされた路線の区間の中から、毎年毎年の予算の範囲で、具体的に整備が進められていくわけです(そういう段階に移行することを一般に「事業化」と言います)。

つまり、新幹線ができあがるまでには、

 「ステップ1:基本計画」
⇒「ステップ2:整備計画」
⇒「ステップ3:事業化」

という3つのステップを踏まなければならないわけです。

先に紹介した「敦賀までの北陸新幹線」「長崎新幹線」「札幌までの北海道新幹線」はいずれも、「事業化」されていますので、ステップ3に到達しているわけです。

一方で、ステップ2(整備計画になっているが、未だ、事業化されていない区間)としては、「北陸新幹線の敦賀から大阪までの区間」が残されています。

(4)今後20年間の新幹線の推進ビジョン
さて、以上のお話はつまり、

「新幹線整備は凄まじい地域発展効果があるにも関わらず、地方部においてはほとんど作られていない、それが東京一極集中をはじめとした都市の過密と地方の疲弊をもたらしている、だからこそ、迅速な整備が求められている」

という事を意味しています。そしてそのためには、

「現在の整備計画を一日も早く終わらせると同時に、まだ基本計画のステップに止まっている路線の中から『整備計画』に『格上げ』する路線を、現実的な範囲で少しでも多く選び出し、可能な限り迅速に『事業化』していくことが求められている」

という次第です。

こうした背景を受けて、筆者は一学者として、次のような提案を致したいと思います。

 『10年以内に「現整備計画」を完了させると共に
  「第二期・整備計画」の策定と20年以内の整備を目指すべきである』

そもそも、現在の整備計画は、先にも指摘したように、40年以上前に作られたものですから、その終わりがようやく見えてきた今、そろそろ、第二期・整備計画を策定する時期であると考えるのは、至って自然です。

ただし、第二期・整備計画をいち早く策定し、整備していくためにも、現計画を速やかに完了させることも重要です。

一方で、第二期・整備計画としてどういう区間を整備するかは、これから様々な議論を積み重ねていく必要がありますが、現時点での様々な地域の議論を概観しますと、例えば、次の様な議論が考慮の対象となりえるかもしれません。

・四国新幹線(四国区間)
 詳細はこちら
・四国新幹線(大阪区間)
 詳細はこちら
・東九州新幹線
 詳細はこちら
・奥羽新幹線(山形区間)
 詳細はこちら

この他にも全国に様々な新幹線整備の議論が重ねられてきていますから(山陰新幹線や新宿新線、等)、こうした全国の議論を全国土スケールで俯瞰しつつとりまとめ、第二期整備計画を策定する議論をさらに深めていくことは、極めて重要であると考えます。

もちろん、こうした新幹線整備の迅速化、推進のためには、予算が必要となりますが、筆者の概略的な試算によれば、現在の政府の公共事業関係費の数パーセント程度の「追加」予算がその事業期間に確保されるなら、以上に述べた議論は全てカバー可能なのであり、決して非現実的などではありません。

折しも、地方創生のための地方分散化策、国土強靭化のための一極集中対策、そして、内需拡大を通したアベノミクス成功、デフレ脱却、経済成長が求められている今日、こうした新幹線インフラの整備は、極めて有望な国家プロジェクトの一つであることは間違いありません。

中央リニア新幹線の議論も含めながら、こうした新幹線整備の議論がさらに、国会、政府、マスメディア等を含めた国民的議論の形で展開していきますことを、心から祈念したいと思います。

—発行者より

【解説】

「人口減少で日本経済は本当に衰退するのか?」

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【藤井聡】「合理的インフラ形成」を通した「GDP600兆円実現」のための新しい会計制度を

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与

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【解説】

「人口減少で日本経済は本当に衰退するのか?」

データに基づいて三橋貴明が解説
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インフラというものは、長期的な視点から長い年月をかけて、少しずつ作り上げていくものです。行き当たりばったりの単年度判断が許されるものではありません。

例えば全国の道路網や新幹線網は、数十年後にどのような「ネットワーク」が出来上がるのかを見据えた上で、毎年少しずつ進めていくことが必要です。そうでなければ、合理的なインフラ形成は不可能です。

ところが、

  予算の「単年度主義」

がある限り、長期的な視点に基づいたインフラ整備は困難なものとなってしまいます。

ましてや今、政府は「プライマリーバランス」(PB)を基準に、あらゆる支出を厳しく絞り込もうとしており、これが、「将来のインフラネットワーク」の形成を大きく妨げる要因となっています。

しかし、そもそもインフラ整備のための財政支出は、単なる「所得移転」「消費」とは全く異なるものです。

なぜなら、インフラ整備に支出すれば、「資産」がストックとして残るからです。そしてその資産が、産業を支え、、経済を支えるのです。

だからインフラについては、毎年毎年の状況に左右されるような通常の予算とは異なる形で財源を調達し、淡々と整備していくことが必要なのです。

それはちょうど、家を建てる一般家庭が「住宅ローン」と、「日々の食事や旅行のための借金」とを全く別物として取り扱っているのと同じです。あるいは企業が、工場をつくる投資のために銀行からお金を借りることはあっても、社員に毎月支払う給料のための借金を重ねるようなことはしない、というような話と同様です。

つまり「投資」のため借金は、食事や旅行と全く異なり、資産が残り、その資産が将来の利益や経済効果、そしてそれを通した「税収増」をもたらすため、その他の項目よりもより「許容」されるのが一般的なのです。というよりもむしろ、その国の発展、経済の成長のために、時に「積極的に推奨」されるものでもあります。

それはちょうど、経済発展のためには「企業の民間投資」が推奨されていることと同様です。

そもそも「企業の民間投資」のは多くは、銀行からの融資を受けて行われます。つまり「借金」をして投資をするわけです。ですから、しばしば成長戦略やアベノミクス等で「企業の民間投資を推奨する」と言われていますが、それは要するに「民間の借金を推奨する!」と言っているに等しいわけです(無論、今日では内部留保金の寒流を促すという側面もありますが)。

こうした考えから、

「投資」のための借金のための、「建設国債」と
それ以外の「赤字国債」「特例国債」

とが、歴史的に、明確に区別されてきたのです。

そして、建設国債は国会決議無しで政府は発行できる一方で、赤字国債については歯止めをかけるために、国会決議が必ず必要であるということに法的に定められているのです。

しかも、毎年毎年の事情に振り回されず、インフラを長期的な視点で形成していくために、かつてはそのための「財布」も明確に区別されていました。

政府の基本的な財布は「一般会計」と呼ばれるものですが、それとは別の財布として「特別会計」(略して特会)がインフラ関係には作られていたのです。

「一般会計」には「プライマリーバランス」の制約がかけられ、毎年の事情に合わせて規制がかけられることもしばしばです。ですが「特別会計」はまさに特別につくられた「別の財布」ですから、PB規制の範囲外となり、短期的な事情ではなく「長期的な視野」に基づいて運営していく事が可能となります。

例えば、今日でも、東日本大震災の復興に関しては長期的視野から対応していく事の必要性を鑑み、特別会計が作られています。インフラについても、空港整備については、一般財源からは切り離された運用がなされています。

ただし、かつては、道路や河川等、事業ごとに特別会計が作られていました。その後(平成20年)それらは全て「社会資本整備」のための一つの特別会計にまとめられたのですが、その社会資本整備の特別会計も、平成25年に「廃止」となり(一部を除く)全てが、「一般会計」に繰り入れられることとなりました。

その時から、インフラ整備は全て、PBの影響を直接受けることとなりました(ただし
かつても、特別会計の資金の多くを一般会計から繰り入れる格好となっていましたか
ら、間接的に影響を受けていたのは事実なのですが、それでも、そうしないことも
「可能」な制度でした)。

もしも、消費税増税ショックも無く、中国危機やユーロ危機などの世界恐慌リスクも無い状況なら、そしてそれと同時にPB規制を基軸とした緊縮の思想が基本路線でなかったのならば、それはそれで大きな問題は無かったとも言えるのかもしれません。

しかし、今や消費税増税のショックを引き摺った状態で世界恐慌の大波をかぶろうとする状況に至っています。しかもそんな中で、毎年の名目成長率3~4%を確保して2020年には600兆円をたたきだす事を政府目標に掲げています。

平成25年に特別会計を廃止した時点と、状況は大きく変わってしまったのです。

こんな状況では、経済に対して「フロー効果」(現下では、財出によってデフレギャップが埋まり、経済成長が実現していくという効果)と「ストック効果」(できあがったインフラが供給力と需要の双方を刺激し、経済成長が促されるという効果)の双方を通して強烈な経済効果を持つインフラ投資を、短期的な消費支出と一緒くたにした一般会計で管理し、PBの視点から抑制し続けていれば、600兆円の政府目標の達成も覚束なくなってしまいます。

こうした状況を打開するには、これまでの特別会計に関する経緯を踏まえながら、今日の危機的な状況を踏まえた新しい会計制度を、インフラ形成に関して考えていくことが何よりも大切です。

例えば現在も運用されている空港や復興のための特別会計も含め、「公的資本形成」の視点から特別な会計制度の必要性を改めて見直し、長期的に合理的なインフラ形成のための新たな制度を検討していくという方法が考えられます。

あるいは、ブレア政権が導入していた「ゴールデンルール」と呼ばれたアプローチでは、建設国債をPBの算定の際から除外するといった方法が採用されていましたし、そういう可能性を探る方法も考えられます。

もしこうした特別会計ができれば、少なくとも次の二つの重大な国益に叶うメリットを得ることができます。

第一に、特別会計は上述のようにPB規制の対象外となるため、長期的な視野に基づいたインフラ形成が可能となります。繰り返しますが、インフラが形成されれば、長期的には成長を促し、税収増をもたらし、財政再建を促すものです。

ただし、その効果が現出するには、5年、10年、20年という時間を要しますから、単年度主義のPBの発想では、そうした長期的な財政再建効果は勘案できないのです。だから、インフラ形成に対しては、PBとは異なる基準で(例えば、経済、財政を見据えたストック効果分析)、事業の評価を行わなければならないのです。

第二に、今、日銀による強力な金融緩和で、国債市場で国債が足りない、という現象になっています。この状況への対応の一つとして政府は国債の前倒し発行(前倒し債)を前年度より16兆円も増やし、16年度は48兆円に引き上げる見通しとなっています。これで国債をより豊富に市場供給できる格好となっているのですが、それは一般会計内部であるため、政府目標のPBを悪化させることとなっています。

しかし、(ワイズスペンディングの理念に基づいたきちんとした事業評価を前提としつつ)柔軟な発想で国債を発行すれば、PBを悪化させずに市場に国債供給が可能となるのです。

今、安倍内閣は、消費税増税による経済ショックと世界恐慌リスクの直撃に晒されながら、GDP600兆円を実現し、成長と財政再建の両者の達成を目指そうとしています。

この難事業を達成するには、今の会計制度では到底不可能なのではないか――筆者は、心の底からそう懸念しています。

特別会計を大きく変更した平成25年から、状況は完全に変わっています。今こそ、これまでの議論を丁寧に踏襲しつつも、激変する世界状況に対応し、GDP600兆円を実現するためにも、新しい制度の議論を始めなければならないのではないかと考えます。

本稿がその契機となることを、心から祈念したいと思います。

PS「合理的なインフラ形成」にご関心の方は是非、下記ご一読ください。
http://www.amazon.co.jp/dp/4569826342

—発行者より

【解説】

「人口減少で日本経済は本当に衰退するのか?」

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富とはお金のことだと思っていませんか・・・?
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【藤井聡】「財政均衡乗数」から考えれば、「税の増収分」の全額支出は当然である

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

『月刊三橋』最新号はこちら
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php
※この音声を聞くには1/10(日)までにお申し込みください※

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新年、おめでとうございます!

今年は去年よりもますますいろんな問題が顕在化、深刻化してくる年になるだろう……と想像していたところ、正月早々、さっそく予想通りの暗いニュースが相次いでいますね。

中国経済は案の定、一気にヤバい状況になっている様ですし、
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/735579143209698?pnref=story

三橋さんがおっしゃるように、中東でも南シナ海でも、事態が抜き差しならないような状況になりつつあるようです。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/735769886523957?pnref=story

そんな状況では、まずは経済を立て直し、わが国だけでもグローバル不況や諸外国の紛争激化経済被害を最小化すべきところ……

なのですが、経済学者の政府与党に対する重要なアドヴァイザーは、景気を低迷させ、二度と成長と財政再建ができない状態に日本を追い込みかねない「財政再建のためには消費税増税は待ったなし!」という説を主張しておいでです。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/735558953211717?pnref=story

曰く、
「10%超の消費増税もタブー視せず、議論すべきだ。」
とのこと。

おそらくは一部「素晴らしい勇気ある発言だ!」とほめそやす方もいるのでしょうが、これは蛮勇以外の何ものでもありません。

こんな論調にわが国が翻弄されている様では、様々なグローバル危機による被害を受ける前に、わが国経済は「自滅」せざるを得なくなるでしょう。

これは本当に困った状況です。

ちなみに、今の日本は、次のような袋小路状況、です。

(1)「主流派経済学者が間違っている」ので、経済政策が間違っており、デフレが続いている。

(2)だから、一部の学者、エコノミストはデフレを終わらせるために、「主流派経済学者が間違っているよ」と言うことを、あれこれと、実際のデータなど
を示しながら、政策担当の先生方を説得しようとする。

(3)だけど、「主流派経済学者が間違っているよ」と言われても、多くの政策担当の先生方は学者でもないのだから、何が間違ってて、何が間違ってないかを判断することができない――

(4)そんなところに、件の「主流派経済学者達」がやってきて、次のようにささやき始める。

「いやいや、僕たちが正しいんですよ。そもそも、僕達は有名大学の経済学部教授で経済学会でも権威があるし、経済学者のほとんどすべてが僕たちと同じ意見です。僕たちが間違っているといっている人たちは邪説を言ってる一部の人達だけ。それに僕たちが言ってることは『教科書』にも載ってるんです!どっちが正しいか分からないんだったら、僕たちを信用しなさい!」

そうなると、学者でもないから何が正しいか判断つきかねる多くの政策担当者は、最終的に「権威」や「学者の世界での多数決」を頼りに、結局は「間違った経済政策」を継続することになる―――

こうやって、日本のデフレは継続しているわけです。

……この現状を打破するのにどうすればいいか――あれこれを悩むところなのですが、ささやかな一つのアプローチがあります。

こうなったら致し方ありませんから(少々心外ではありますが)、多くの人々が信用する「教科書」をそのまま使って論戦を挑む!という方法です。

そのうちの一つが、「財政均衡乗数」という、教科書に載っている一般的な概念です。

この概念、次の様な議論に決着をつけるのに役立ちます。
http://jp.reuters.com/article/abe-amri-aso-idJPKBN0U50OP20151222?pageNumber=1

今政府では、「景気がよくなって、税収が増えた分(=上振れ分)を借金返済に使うか、政府支出に使うか」が重大な議論となっています。

安倍内閣は今、「成長を通して財政再建を果たす」と主張しているのですから、上振れ分を借金返済に回すなどあり得ない選択肢で、「ワイズスペンディング」(かしこい支出)の理念に基づいて、政府支出に回すべきであることは、議論以前の「当たり前」の問題といって差し支えありません。

ですが、この「当たり前」がなかなか通らないのがつらいところ―――なのですが、実は、この「当たり前」をサポートする教科書の記述があるのです。

それが、「均衡財政乗数」という概念なわけです。

これは、「税収をそのまま政府が支出すれば、結局、GDPはどれだけ増えるのか? という乗数」です。

つまり、例えば、この乗数が2であれば、「10兆円の税収をそのまま支出した場合、日本のGDPは(10兆円×2の)20兆円増える」ということになります。

で、この乗数は、教科書では「1」だという事が書かれています。
(※ 1となる理由は、例えば下記をご参照ください
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt130118.pdf

つまり、教科書通りで考えるなら、「10兆円の税収があれば、それをそのまま使えば、日本のGDPは10兆円増える」のです!なぜそうなるのかというと、次のように説明されています。

【財出ケース】
・10兆円徴税すると(消費性向というものを0.5と置いた場合)、日本のGDPはその徴税で10兆円縮小する。
・一方、その10兆円を使うと(消費性向というものを0.5と置いた場合)、日本のGDPはその財政政策で20兆円増える。
・したがって、GDPは差し引き10兆円が増える」

さらにこの話、徴税した10兆円を使わずに借金返済をした場合、日本のGDPは10兆円も減ってしまう! ということが予測されます(計算プロセスは下記の通り)。

【借金返済ケース】
・10兆円徴税すると(消費性向というものを0.5と置いた場合)、日本のGDPはその徴税で10兆円縮小する。
・一方、その10兆円を借金返済にまわしても、日本のGDPには何の影響もない。
・したがって、GDPは10兆円減ってしまう」

つまり、政府が10兆円の税収を使うかどうかで(消費性向0.5の場合には)、差し引きで、「20兆円」のGDPの格差が生じるのです!

ちなみに、20兆円のGDPの格差があるということは、税収で言えばその内の約1割の「2兆円」税収に格差が生ずる、ということです。

で、これも加味して、「累積債務/GDP」の比率がどうなるかを計算すると、次のようになります(単純に現時点での累積債務を1000兆円、GDPを500兆円とします)。

現状      ⇒「累積債務/GDP」=2.00 (=1000/500)
財出ケース   ⇒「累積債務/GDP」=1.96 (=999/510)
借金返済ケース ⇒「累積債務/GDP」=2.02 (=991/490)

皆さん! そもそも財政再建で最も大切な尺度は「累積債務/GDP」なのですが、それは、

財出ケースでは、GDPが伸びることで2.00よりも1.96へと「4%改善」しているのに、

借金返済ケースでは、GDPが小さくなることで2.00よりも2.02へと「2%悪化」しているのです!

つまり、安倍内閣の「成長を通して財政再建を図る」という方針を貫きたいのなら、この教科書の「財政均衡乗数」の議論を踏まえるなら、明らかに「財出ケース」の方が有利なのです!(※ ちなみに、消費性向を異なる水準でおいても、結論の方向は全く同様です。)

なお、当方としては、

(注1) 財出をすればデフレータがかわり、それを通して、「税収/GDP」比が改善するので、現状では、税収上振れ分は2兆円でなく、4~6兆円程度上振れする可能性もあり、そうなれば、上記結論はより顕著なものとなりますが……

(注2) しかも、当方としては、この理論は単純すぎで、本来なら、消費税と所得税、法人税では、GDPへのネガティブインパクトのサイズが全然違う、という点や、支出項目でも、より裾野の広い産業への投資の方がよりポジティブインパクトのサイズが大きい、等を加味したくなるのですが…..

・・・という様な話をするたさらに複雑になりますし、基本的な結論の方向は変わりませんから、ここは一旦、脇に置いておくことにしたいと思います。

ちなみにこの理屈、あの、ノーベル経済学者のスティグリッツ先生も採用しておられ、「均衡財政乗数」の理屈に基づいた積極インフラ投資を主張しておられるのですから、心強い限りですw
http://www.project-syndicate.org/commentary/great-malaise-global-economic-stagnation-by-joseph-e–stiglitz-2016-01

さらに言うと、この理屈を踏まえるなら、5→8%へと消費増税した3%分の増収分は、そのまま「財出拡大」に活用しない限り、GDPも財政再建も悪化し続けている、という事になるのです! だから、今からでも追加補正予算などで、この3%分の財出拡大をさらに検討することは、本来ならば必要なのだ、という事が、この論理から導き出すこともできるのです。

ついては、是非皆さんも、教科書の理屈から言っても、少なくとも「税収上振れ分は支出に使うのが正当だ」「さらに言うなら、増税分はそのまま財政拡大に活用すべきだ」という事を是非、ご理解いただきたいと思います。

では、本年もこういう情報、メッセージを少しずつ配信して参りたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします!

—発行者より

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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【藤井聡】「街」をグローバル資本主義から守る ~「歩くまち京都」四条通の取り組み~

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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今年はわが国ではデフレが継続する中で、過激な自由貿易協定が大筋合意されると共に、(公共投資額不足を決定的な原因とする)集中豪雨による鬼怒川決壊などの天災に見舞われました。一方で海外では同じく世界的デフレが進行すると共に、それに伴う紛争やテロが様々に勃発しました。

要するに国内外共に、グローバリゼーションを背景として経済がますます停滞すると共に、景気さえよければ発生するはずもなかった様々な不条理があちこちで見られるようになってしまったのが、2015年の特徴でした。

その傾向は去年よりも今年の方が顕著となり、そしておそらくは来年も緩和するどころかさらに悪化することは間違いないでしょう。

こうした中で我々はどうすべきかと言えば―――身近な問題から国政やグローバル経済に関わる諸問題について、自身の「手の届く範囲」でできることを一つ一つ積み重ねていく他ありません。

さて、そんな「身近な問題」の一つとして、当方が関わってきたものとして、今住んでいる町、「京都」の問題が挙げられます。

京都では、「あるく街京都」というスローガンの下、昨今の「モータリゼーション」、すなわち、過剰なクルマ依存化に伴って、多くの人々がまちなかから「郊外」に活動の場を転換させてしまったことで生じた様々な問題を改善し、まちの賑わいを取り戻し、京都を活気づかせる様々な取り組みを行っています。

近年、様々な街が疲弊し、「シャッター街」と呼ばれるすさんだ状態に追い込まれているのは、この「モータリゼーション」(過度な自動車依存化)が、最大の原因です。

クルマを使えば、必然的に人々は町中よりも郊外に活動の場を求める傾向が強くなります。この傾向が進めば、町中は寂れ、グローバリズムで流れ込んできた外資も含めた大資本が投下した郊外の大型ショッピングセンターが賑わうようになります(さらに言うと、モータリゼーションはグローバル資本主義の重大な帰結ともいえます)。

そうなると、その街のキャッシュ(おカネ)は、どんどん外国を含めた余所の地域に流れていく事になります(例えば、筆者らの研究室の調査では、「商店街」で使う一万円は5~6千円程度は京都市内に留まるのですが、「大型ショッピングセンター」では、京都市内に留まるのは一万円の内たった2千円程度であることが分かっています)。

こうしたヒトとカネの郊外化は、当然ながら街の中心部への投資の縮退をもたらし、最終的には当然「サービス劣化」をもたらします。

京都市のみならず、あらゆる都市が、このモータリゼーションとグローバル資本主義による「都市の衰弱」の流れに対抗すべく、様々な施策を展開しているのですが、あらゆる街で、街の防衛戦線は「敗戦の色」が濃厚となっているのが実態です。

筆者もこの街の防衛に向けて、学識者の一人として様々な街でお手伝いしているのですが、その中でも二十年以上にわたって持続的にお手伝いをしてきたのが、京都の街です。

例えば、(秋口から春まで)毎週金曜日の朝7時からの4分間、KBS京都ラジオで「クルマ利用はほどほどに」「クルマで京都が見えますか?」といったコーナーで、クルマ利用がダイエットや健康、家計に悪い影響を及ぼしている一方で歩くことがいかに素晴らしいか――といった事を、ここ五年ほどお話していますし、そこでお話している内容については、こんな動画も配信しています。

https://youtu.be/DRjW7HzUPwc
https://youtu.be/C3erF38l6T8

運転免許センターの免許書き換え講習の資料として、こうした情報をまとめた冊子を京都都市圏の全ドライバーに配布したり、京都に引っ越してきた方々に、公共交通のマップや時刻表を配布したり……そうした施策のアドヴァイスを差し上げたりもしてまいりました。

そんな「歩くまち京都」の取り組みの一環として、この度、京都の都心の最大の目抜き通りである「四条通」の「クルマの車線が歩道に転換され、歩道が広げられる」という事業が、つい先日実施されました。

つまり、
「クルマの車道が片側一車線分、歩道に転換」
されたのです。

この事業は、10年もの歳月をかけて様々な関係者と調整が図られてきたもので、地元の方々やタクシーやバス業者の方々との度重なる協議を経て、ようやくこの度、実現されたものです。

これで四条通はますます歩きやすくなり、クルマ利用から公共交通利用や徒歩への転換(モーダルシフト、と言われます)が促され、街にさらに人が集まり、さらに活気づくことが期待されています(事実、既に売り上げが伸びた等、そういう報告も耳にすることが増えてきました)。

実を言うと、多くの都市が、こうした「車道から歩道への転換」を図る取り組みを目指しているのですが、その調整の難しさ故、ほとんど実現していないのが実情です。

そんな中、京都でこうした道路空間の歩道転換が実現したのは、実に

「画期的」

な取り組みとなっています。ついてはこの取り組みについてとりまとめた論説を下記にご紹介差し上げますので、まずは是非、ご一読ください。

『四条通り、「あたり前」のしつらえ転換』
              京都大学大学院教授・内閣官房参与 藤井聡
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=732175943550018&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3

 「四条通り」と言えば、京都の街を象徴する目抜き通り。京都を代表する百貨店が並び、高級ブランド店が軒を連ねる。祇園祭では長刀鉾が鎮座し、山鉾巡行はまさにここでハイライトを迎える――そんな四条通りは京都の街の象徴であり、顔である。だから四条通りに品位と威厳が確保されればそれは京都のまちの品位と威厳に直結する。

 では、四条通りは一体誰のためのものか?

 もちろんそれは京都人全員のものだが、何よりも、そこに訪れ、街を楽しむ人々のものである。彼らは四条通りに「歩いて」訪れ、買い物をしたり食事をしたりしながらその賑わいを楽しむ。

ただし同時に、四条通りはそれを「道路」とみなして「通過」するドライバーのものでもある。とはいえ彼らは沿道の店をじっくりと眺めることも、賑わいを楽しむこともない――。

 つまり「歩く」人々にとっては四条通はその賑わいを楽しみ満喫する「空間」である一方で、ドライバ-にとっては単なる「無機的な道路」に過ぎないのである。

 しかも、「四条通りに歩いて訪れる人々」は、(手元のデータから推察すれば)昼間おおよそ最低六万人。一方で「四条通を通過する自動車台数」は、昼間でその2割程度の約一万台強。だとすると四条通りは、一体誰の事を思いやりながら「しつらえ」ていくべきかと言えば――「数」から言っても「来訪の質」から言っても、「自動車」よりも「歩く人」をできるだけ「優先」していくのは「当たり前」の話なのである。

 この度ようやく、四条通りはそんな「当たり前」の方向でその「しつらえ」が変えられることになった。

歩道が広げられ狭い空間に押し込められていた歩行者はゆとりを持って歩くことができるようになった。一方で自動車は、工事が始められた当初でこそ混乱したものの、データを見れば既にその混乱はほぼ収まっている。ドライバー達は皆、の四条通りの「歩行者のため」の変化を理解し、その利用を遠慮しはじめたのだ。結果、今となってはほとんどかつてと変わらぬ時間で四条を通過できるようになっている。

 つまりこの度の四条の「しつらえ」の大転換は、自動車をほとんど混乱させないままに、四条利用者の大多数を占める「歩く人々」に、より豊かで良質な時間と空間を提供することに成功したのである。

 つい先日、うちの家内の母もそれと知らずに四条を訪れ、そのゆったりとした歩行空間に驚き、大変満足して帰ってきた。同じように新しい四条通りをまだ「歩いて」いない方は是非ゆっくりと訪れてみて欲しい。きっとそこで皆さんは母と同じく、想像もしていなかった「歩いて楽しい街の空間」を発見するのではないかと、思う。

・・・・

以上、この取り組みの趣旨をご理解いただけましたでしょうか?

ただし、この工事が始められた今年の春先には、産経などの新聞メディアでは

「世紀の愚策」

とまで言われ、大きな反発が生じていました。

例えば、http://www.sankei.com/west/news/150607/wst1506070010-n1.html

確かに、工事が始められた春先の一時期、道路が混雑したのは事実ですし、何らかの問題が生ずればそれに対する批判に耳を傾け、対策を図っていく姿勢を保ち続けることは必要不可欠ですが……今やそうした激しい渋滞は観測されていません(ネット上にそうしたデータは転がっていないようですが、そういう調査データがあることは確かです)。

繰り返しますが、
  四条通を使うクルマの交通量

  四条通りを使う歩行者の交通量
を比べると圧倒的に歩行者の方が多いのが実情です。

そして四条通が「歩きやすく」なったのは紛うことなき事実であり、しかも現時点では激しい混乱はみられていないのが実情ですから、こうした、
歩く人にやさしい道路空間の再配分
は、「世紀の愚策」というような評価は著しく不当であって、至って「当たり前の話」としか言いようがない……と考えます。

産経などのメディアは、構造改革や都構想、TPP等の公益を棄損する危険性が極めて高い「改革」はしばしば猛烈にプッシュする一方で、こうした都市空間の再配置、インフラに関わる「改善」については、どういうわけか、バッシングをする傾向が強いようです。

おそらく、世論に迎合するとそういう事になるのかもしれませんが、新聞メディアが勝手に世論を忖度(そんたく)してそんな報道を続ければ、まともなインフラ「改善」を阻害する世論が実際に作られてしまう事は事実です。

まったく困ったものです。

いずれにしても、こうした「モータリゼーションやグローバル資本主義から街を守る取り組み」は、グローバル企業のみならず、メディアや世論からの反発もあり、「街」側が大変厳しい状況に追い込まれているのですが、当方としても手の届く範囲で、今年のみならず来年もまた、イメージではない「適正な事実情報」をお伝えする発言を可能な限り続けていきたいと思います。

では、今年もいろいろとありましたが…..よいお年を!

—発行者より

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

『月刊三橋』最新号はこちら
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

【藤井聡】「詭弁」(ウソ話)こそが、敵の真の正体です。

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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【YouTube】

前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
https://youtu.be/0YFk1KbdpQA

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橋下氏が先週18日に、大阪市長を退任されました。

この退任は、本年の5月17日の都構想の住民投票に「政治生命」をかけ、「都構想に敗れれば政治家を辞する」という投票運動をしかけたにも関わらず、住民投票に「敗れた」ことが原因です。つまり、かの住民投票は、「大阪市を存続させる」のみならず「橋下氏の市長退任(政治家退任)を導いた」ものでもあったわけです。

さて、筆者はこれまで、都構想等をめぐる橋下氏の言説の多くが、

「詭弁」

に塗れたものである、そして、詭弁に基づく政治は断じて許してはならない、という趣旨の批判を、例えば、

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/10/fujii-131/

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/17/fujii-132/
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151103/

等で論じて参りました。

そもそも「詭弁」とは、広辞苑によれば、

「一見もっともらしい推論(ないしはその結論)で、何らかの虚偽を含むと疑われるもの。相手をあざむいたり、困らせる議論の中で使われる。」
というものです。筆者は橋下元市長の言説に対する批判を通して、通常では決して得る事のできない「詭弁」について深く考える機会をたっぷりと頂くことができました。

そして橋下氏が市長を退任し、都構想や大阪の行政改革に対する批判よりもむしろ、より包括的な新自由主義者や緊縮論者達の言説に批判を加えようとして、「驚くべき事実を」改めて深く認識する様になりました。

それは、彼らの言説は、我々と見解が異なる方々の意見などではなく、ただ単に「何らかの虚偽を含む言説」すなわち、

「詭弁」

に過ぎなかった、という事実でした。

(たとえば、こちら
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/728709473896665?pnref=story

その典型例として、まずは下記文章を確認ください。

「日本は貿易立国であり,今やグローバリゼーション・自由貿易が世界の潮流となっている.しかも,少子高齢化で内需の拡大は望めないため,日本が経済成長するには外に打って出るしかないのである.つまり,国際 競争で勝ち抜くためにTPPなど自由貿易協定の締結を 急ぎ,輸出に不利な円高に対して政府・日銀は手を尽くさねばならないし,法人減税や規制緩和など企業の競争 力を高めることも必要である.また景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く,不用意に無駄な投資 を続けた結果,借金だけが膨れ上がってしまった.増え続ける社会保障関連の出費もかさみ,日本の財政状況は 先進国最悪であり,破綻はすぐそこに迫っている.社会保障費や復興費用を賄い,財政再建を果たすには消費税をはじめとした増税は避けられない.さらに,長年悩まされているデフレ脱却のためにも,新たな成長戦略による景気の好転を期待したい.」

これは、「新自由主義」の平均的な言説をとりまとめたものです。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/institute_paper/2012_06_haru/tanaka.pdf

この言説の一つ一つを、それが詭弁か否かと言う視点でチェックしていきますと、驚くべきことに、そのほとんどすべてが詭弁である、という事実が浮かび上がってまいります。

以下、一つずつ確認していきましょう(ただし下記文章は少々難解かもしれませんので、読みづらいとお感じの方は、「――囲み」の下の文章まで読み飛ばしください)。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「日本は貿易立国であり」
⇒この文章では、「貿易立国」の定義が曖昧で、何を意味するのかが不明である。その一方で、この言葉は、貿易によって日本経済が成長したという印象を与え得るものである。したがって、この文章は実際上は「何も語っていない」にも関わらず、「特定の印象を与える」ことが可能となっている。これは、曖昧な言葉を使いながら特定の印象操作を図る詭弁である「語彙曖昧の詭弁」と呼ばれるものである。

「少子高齢化で内需の拡大は望めない」
⇒「少子高齢化で内需の拡大は望めない」と断定されているが、少子高齢化でも内需が拡大できることは自明である。それ故、これは、「因果関係誤認の虚偽」と呼ばれる詭弁である(誤った因果関係を根拠に結論付ける詭弁)。しかも、「少子高齢化であれば内需拡大は100%できない」という趣旨となっているが、これは、「全称の誤用」と呼ばれる詭弁でもある(「全て」がそうであるとは言え「ない」ことを、「全て」がそうだと主張する詭弁)。
 なお上述のように「内需の拡大は望めない」という主張の「根拠」が「詭弁」であるため、「日本が経済成長するには外に打って出るしかない」という主張もまた正当ではない。

 しかも、こうした理由で「日本が経済成長するには外に打って出るしかない」という主張が正当でないが故に、その帰結として語られる「TPPを急ぐべし」「法人減税や規制緩和など企業の競争力を高めることも必要」という主張それ自身も、必ずしも正当ではない。
 つまり、論理を語るにおいて、その根拠となる「一事」だけについて「さらり」と詭弁を弄し、それがさも正当であるということにしておけば、その「一事」から「正当に演繹できる言説」をすべてが、(仮に不当なものであっても)「正当」であると印象付けることに成功するのである。ここで重要なのは、その「一事から、それら言説を演繹する論理は全て正当である」という点である。この特徴故に、そうした言説は極めて尤もらしく見えてしまう。しかし、その前提それ自身が「ウソ」であるので、そこからの論理がどれだけ正当であっても、そこで論じられる全ての主張は、全体として完全なる「ウソ」話に過ぎない。なお、今日の多くの「経済学論文」は、この意味に於いて「完全なるウソ話」に過ぎないのであるが、それが、経済学会の権威、経済学者の権威によって隠ぺいされ続けているのが、実態である。

「景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く,不用意に無駄な投資 を続けた結果,借金だけが膨れ上がってしまった.」
⇒公共事業の景気対策としての有効性は、実に様々な研究で実証的に示され続けている。にも関わらず、「景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く」と断定されている。あるいは、「不用意に無駄な投資 を続けた」という点も特に根拠なく断定されており、かつ、そのせいで「借金だけが膨れ上がった」という事も断定されている。
こうした特定の施作や主張に対する「ネガティブな主張」は、仮にその根拠が不在でも、多くの人々は「火の無い所に煙は立たず」と認識することから、そのまま受け入れてしまう。これは、煙の無い所に無理やりに煙が立っているかのように喧伝することで、多くの人々がそこに「火」があると勘違いさせるタイプの詭弁である「幻法水煙」の詭弁と呼ばれるものである。これはいわば、「濡れ衣を着せて、評判を貶める」というタイプの詭弁である。

 同様の「幻法水煙」の詭弁は、「日本の財政状況は先進国で最悪であり,破綻はすぐそこに迫っている.」という言説にも当てはまる。そもそも、日銀がこれだけ強力に金融緩和を推し進めている状況で政府が「すぐに破綻する」とは到底考えられず、これもまた「濡れ衣」の類である。しかも、「日本の財政状況は先進国で最悪である」からといって「破綻はすぐそこ」とは結論づける事は不可能である。前者と後者の主張は因果関係的つながりは存在しないのであり、それ故これは、「因果関係誤認の虚偽」でもある。しかも、「破綻」という言葉の定義が不明瞭である一方で、この言葉を使えば日本の財政に対してネガティブな印象操作を可能とするものであるから、その点に於いてこれは「語彙曖昧の虚偽」でもある。

「財政再建を果たすには消費税 をはじめとした増税は避けられない.」
 ⇒経済成長ができるなら、増税をせずとも財政再建が可能であることは、改めて論ずるまでも無く明白な事実である。それ故、増税のみが財政再建を果たすと主張することは、明白な「虚偽」である。つまり「ウソ」としか言い様のないものである。こうした単なる「ウソ」は「詭弁」とすら言いがたいものであるが、あえてこれを何らかの詭弁に分類するとするなら、「大衆にウソに基づいて訴えかける」という「大衆に訴える論証」と解釈することも可能である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

以上、少々難しい内容だったかもしれませんが―――とにかく上記の考察が意味しているのは、平均的な新自由主義の言説は、詭弁の観点から確認すれば、ほとんどすべてが「詭弁」に過ぎぬものなのだ、という点です(上記で詭弁と指摘した文章は、元々の文章の9割以上を占めています)。

そうである以上、大阪を席巻した都構想をめぐる言説も、日本、そして世界中を席巻している新自由主義的言説も、双方とも「詭弁」の類にしかすぎぬという点で、なんら相違するものではないのです。

そもそも繰り返しますが、詭弁とは要するに、(事実、あるいは、論理についての)

 「ウソ」

を意味します。だから、結局は、都構想をめぐる言論戦も、マクロ経済政策に関する言論戦も、後者の方が(国内外の大学教授や官僚、政治家達によって)「品よく」論じられているかのように思われるかもしれませんが、よくよく吟味すれば、双方が詭弁である限りにおいて結局は五十歩百歩のウソ話にしか過ぎなかったのだ、という次第です。

したがってそれは、それらの言論戦はもう既に「論争」ですらなく、単に「ウソを暴くことができるか否か」あるいは「ウソであるという正当な認識を広めることができるか否か」という戦いとなっていることを意味します。

無論、そのウソをウソと理解できない方々は、こういう主張が不当なものであると感じ、感情的な反発を差し向けることでしょう。

そこがこの言論戦の特徴です。

それはさながら、得体の知れない新興宗教を信じている人々が陥っている「明らかな過ち」を、根拠を示しつつどれだけ粘り強く説得を続けても、得られるものは納得などではなく、単なる反発、さらには「憎悪」にしか過ぎないという構造となんら変わるものではありません。

もちろん、そうした説得が失敗しても、不幸になるのは彼等だけなら、放置するしかないということになるのですが―――統治制度や経済政策などの「政治」においてそのような「新興宗教まがい」の思い込みを放置し続ければ、我々は巻き添えを食らい、社会全体が大きな被害を被ってしまうのです。

したがって「政治」におけるウソと詭弁は、断じてならない――これが、2500年前のソクラテスの時代から引き継がれてきた常識中の常識なのですが、その常識が今、わが国において急速に失われつつあるのです。

――以上、本日は橋下氏の市長退任にあわせて感じたことをお話いたしました。要するに、我々が展開してきた言論戦の「真の敵」は、個人でも政党でも、さらには思想ですらなく、結局は、

「詭弁というウソ」

だったという次第です。
(※ ホント、「至誠」ってのは大切ですねw)

ではまた来週!

PS 「維新」や「改革」のウソにご関心の方は、是非一度、下記をご一読ください。
維新・改革の正体―日本をダメにした真犯人を捜せ

—メルマガ発行者より

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前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
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【藤井聡】今、日本を守るために必要なのは「国土学」です。

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
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「国土学」という学問をご存知でしょうか。

京都大学の特任教授で、国土交通省の道路局長や技監をお勤めになった大石久和先生が提唱されている学問です。それは、国土を知り、国土の使い方を考え、それによって恩恵を受ける人間の実践の在り方を考える学問です。

(※ 例えば、
国土学事始め

国土学再考 「公」と新・日本人論 )

そもそも国土とは、ある国民国家の「領域」を意味するものです。

こういえば国土とは、国境線で区切られた単なる「物理的な領域」であるかの様な印象を受ける方々も多かろうと思いますが、そうではありません。

その「物理的領域」は、その国民国家が暮らし続けていくことができるように、さまざまに手が入れられています。
したがってそれは、単なる物理的な自然領域というよりは、自然的要素と人工的要素の双方を含む自然と人工の調和物としての「住処」(すみか)なのです。

そもそも動物たちの「住処」は、自然環境にその動物が手を加え、形作られた場ですが、同様に「国土」もまた、日本なら日本という一つの国民国家が暮らし続けるために、日本列島に様々な手を加えながらかたちづくられた「住処」です。

ではなぜ、私たちは国土という住処を作り上げるのかと言えば、端的に言って「生き続ける」――ただその一事のためです。

それは動物たちが住処をつくるのは、彼らが生き残り、子々孫々まで繁栄しつづけるためであるということと同様です。

そもそも如何なる生物も、「住処のつくりかた」を間違えれば生き残ることはできません。

湿度や温度が不適切な住処なら、その生物集団は環境に適応できず、早晩彼らは息絶えますし、その住処で餌を十分得ることができなければ飢え死にします。

その住処が外敵に容易く侵入されてしまうようなものなら、食べ殺されます。

さらには共同生活をしている生物集団なら、彼らの間の秩序を保つことができないような住処だと、同じく彼らは皆自滅することとなるでしょう。

つまり生き残るか否かは、彼らがどのようにその環境状況の中で「住処をつくるのか」に直接的に依存しているのです。なぜなら彼等は、上に示したような、

第一の「自然の脅威」、
第二の「外敵の脅威」、
第三の「自滅の脅威」、

という三つの脅威に晒されており、これらの脅威はいずれも、その住処のあり方によって顕在化するか否かが決せられるからです。

言い換えるなら、それぞれの生物集団は、これら三つの脅威から自分たちを

「守る」

ための住処を作り上げなければ、繁栄することも、生き残ることができないのです。

これは、私たち日本の様な国民国家においても全く同じです。

そもそもあらゆる国民国家は、先に指摘した「三つの脅威」に、常にさらされています。

第一の「自然の脅威」。

彼らは、食糧やエネルギーを調達できる国土がなければ、(諸外国からの調達しない限りは)その国民国家は滅び去りますし、何より、さまざまな天災を耐え忍ぶことが出来るような国土が不在であれば、同じく滅び去る他ありません。

第二の「外敵の脅威」。

それはまず、軍事的な脅威を意味します。その国土に諸外国の侵入を容易に許すようであれば、その国家は滅亡を免れ得ません。仮に軍事的なリスクがなかったとしても、グローバル経済が進行する今日では、日本の国富を狙う諸外国や多国籍企業が日本経済への侵入を繰り返し、我々の国民国家の繁栄は失われ、経済的な主権が奪われ、最終的には容易く軍事的にも侵攻され、亡国の憂き目にあうこととなります。

そうした事態を回避するためには、軍事力の増強や経済制度を整えていく取り組みが必要ですが、それら諸活動が展開可能な「住処」としての「国土」を整えていくことが必要不可欠です。

なぜなら、諸外国がまねできないほどの生産力をもつ産業があれば、あらゆる外敵を寄せ付けない経済的、軍事的、そして社会的な国力を身に着けることが可能であり、そんな産業を整えるには、それを支える適切な国土が文字通りに「必要不可欠」だからです。あらゆる産業は国土の上に築き上げられるのです。

そして第三の「自滅の脅威」。

夥しい数の人々で構成される社会が繁栄するためには、彼ら全員の間の「秩序」が必要不可欠であり、それがなければその社会は早晩必ず「自滅」します。

そんな秩序とは、「治安」という事を意味するのみならず、「地域経済の持続性」「国民経済の持続性」や、持続不可能な程に大きな「格差」の拡大を防ぐ、という事もまた意味しています。

そしてそれらのためには、都市においては「都市計画」、地域においては「地域計画」、そして、日本の国土全体にとっては「国土計画」が必要不可欠です。そうした適正な空間形成がなされてはじめて、格差は是正され、地域経済は発展し、国民経済の持続性も保持されていくのです。

だからこそ、我々日本人は、「自然」「外敵」そして「自滅」という三つの脅威から私たちの日本を「守る」ための住処としての「国土」を、日々作り続けていかなければならないのです。

しかし誠に残念なことに、平成日本は、この三つの脅威から日本を守る国土を作りあげる努力をおざなりにし続けています。

「自然の驚異」に対して、わが国は万全ではありません。首都直下地震や南海トラフ地震の脅威を乗り越えられる程の強靭な国土を十分に作りあげたとは言いがたい状況にあります。

「外敵の脅威」に対しても、わが国は万全ではありません。周辺の離島に対する不測の侵略行為からわが国を守り抜くための国土利用が進められているかと言えば決してそうではありません。離島においても人々が住み続ける場合とそうでない場合とで、諸外国の侵略リスクは大きく変わるからです。

しかも、諸外国の経済的進行を阻止するに十分な生産力を保証しうる国土を作りあげているのかといえば、決してそうではありません。国土のポテンシャルを余すところなく発揮するようなインフラ整備は不在のままであり、過剰な都市部への偏重投資、とりわけ東京への一極集中が加速しているのが現状です。そしてその結果、需要と供給のバランスは失調したままであり、デフレが進行し、わが国の安泰にとって必要とされる経済基盤の形成が阻害され続けています。

そしてそうした都市偏重のインフラ投資と不十分な公共投資は、デフレを導き、格差の拡大をもたらし、国内のあらゆる秩序を毀損し続け、今まさにわが国は深刻な「自滅の危機」に晒されています。

とりわけ今日では、デフレと格差で巨大化しつつある国民の不満は、「全体主義」の形成をにわかに促進し、緊縮財政やTPP、道州制、首相公選制等の継続と実現を通してあらゆる破壊が一挙に進められつつある状況を創出してしまいました。

私たちは、このようなあらゆる危機の根源に、一つの生物集団である私たち日本の国民国家が住まう、

「国土」

を蔑ろにし続けてきたという一点が存在するという事実を認識しなければなりません。

だからこそ、私たちは、自分達の日本という国民国家が安寧と安泰の内に生き続けることができる国土のあり方を考える、

「国土学」

をまさに今、真剣に考え始めなければならないのです。

……

実を言いますと、この「国土学」を、その提唱者であられる大石久和先生と、当方と佐伯先生とで企画させていただきました叢書「新文明学」の一冊として、今年の秋ごろには刊行する予定にしていたのですが――例の、5月と11月の大阪の騒動に幸か不幸か(そして、意図的にか無意図的になのかはさておき!)巻き込まれてしまいましたので、今日までその執筆が滞っておりました。

――が、まさに今、それを改めて書きはじめ、来年の早い時期までには何とか出版いたしたいと、大石先生とご相談させていただいているところであります。

日本国家の安泰と日本国民の安寧を考えるために必要不可欠でありながら、これまでの学術界においても十分に考えてこられなかった「国土」についての深くかつ包括的な様々な論考をとりまとめる一冊となるべく、大石先生と共に今年の年末年始には書き上げたいと考えております。

ご関心の方は是非、本書「国土学」をご期待ください!

PS 「国土学」にご関心の方は、大石先生との対談も収録しました下記を、まずはご一読になってください。
築土構木の思想──土木で日本を建てなおす (犀の教室)

—メルマガ発行者より

【YouTube】

前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
https://youtu.be/0YFk1KbdpQA

【藤井聡】それは詐欺師のような政治家ではない.詐欺師が政治を行っているのである

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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【YouTube】

本当に経済学は経済を良くするのか?
https://youtu.be/T7qPdljmVfg

TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

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日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになるためには,「過激な改革は避けるべき」だし,「過剰なグローバル化を避けること」も必要だし,「デフレを終わらせるべき」だし,デフレを終わらせるには「過剰な緊縮路線」や「過剰な金融政策依拠」は愚かの極みである――と筆者は考えています.

「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになる」ことを誠実に目的とする人々が,誠実な議論を重ねれば,(微細な戦略論はさておき)上記の筆者の基本的な方針と大きく意見が異なることなど,ほとんどないのではないか...と感じています.

しかし,それでも多様な意見がこの国には存在しているのが実態です.

当初筆者は,そうした意見の相違は,熟慮や熟議が不足しているためであり,熟慮や熟議を重ねていれば,そうした意見の相違は,完全消滅とまではいかないまでも,徐々に小さくなっていうに違いない―――という(いまから思えば)すこぶるナイーブなイメージを持っていました.

しかし,2010年ごろから意図的に「意見を公言」する「言論」を展開し始めてから,そうしたイメージは徐々に薄らいでいきました.

そして,本年の都構想の住民投票や大阪ダブル選挙の言論戦を経験し,そうしたイメージは,より決定的に崩壊するに至りました.

無論,今日においてすら,熟慮や熟議を通して徐々に意見を精緻化させていったり,それとはまったく真逆に(君子豹変すの如くの)意見転換をしたりする方々が,この世に多数おられることは間違いありません(無論,筆者は常にそういう振る舞いが出来ているかを常に自問せねばならない――と考えています).しかし,そういう人々はむしろ,少数なのだ,というイメージを持つに至っているわけです.

では,そうした少数の人々以外の大多数の人々は,一体どういう趣旨で意見を口にしたり,言論を展開しているのかと言えば―――彼らは要するに「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになる」ことを目的としてはい「ない」のです(!).

無論,日本の国政について意見する以上,「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになる」ことを目的としているのだ,ということにしなければならないことは誰もが理解しています.したがって,それを問えば誰もが「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになることを目的にして,自分の意見を吐いているのだ」とも公言します.

しかし,それがウソ,なのです.

しかし,この手の「ウソ」を吐くのは,何も現代日本における特殊な現象ではなく,人類において広く普遍的にみられる現象です.

なぜなら現代社会では,実に多くの人々が社会学者マートンが指摘した

  『目標の転移』(goal-displacement)

を起こしてしまっているからです.

「目標の転移」というのは,単に「手段」にしか過ぎないことを「目的」であるかのように勘違いしてしまう現象です.

例えば,国益を最大化するための手段にしか過ぎない「緊縮財政」を「目的」であると勘違いし,国益を棄損してまで緊縮財政を達成しようとする人が,日本のエリート層にも一般国民の中にも大量に混入しています.

同様に,経済を活性化するための手段に過ぎない「改革」を,「目的」であると勘違いし,国益を棄損してまで改革しようとする夥しい数の人々が日本のエリート階級を含むあらゆる階層に生息しています.

この様に,実に多くの人々が愚かなことに,国益を最大化するための「手段」に過ぎないグローバル化やリフレ政策や統治機構改革等を「目的」だと勘違いし,血道をあげて国家的破壊を繰り広げているのが,我が国の実情です.

実に嘆かわしいことでありますが,人類は,「大脳が大きくなりすぎ,野生動物の様に『本能通り』に生きて行くことが出来なくなった錯乱したサル」(ホモ・ディメンス)である以上,(素晴らしい芸術作品を創出し,協力しあってどんな種でも達成できないような繁栄を築き上げることができるのみならず)こういう愚かな集団自殺行為をも図り得る存在でもあるのです―――.

・・・

ただし,今回の大阪都構想や大阪ダブル選を通して,より明確に学んだのは,こういう『目標の転移』とは異なる形で「ウソ」をつく人々の存在です.

彼らは,「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになる」ことを目標として,その目標が転移して,より矮小なつまらない目標のために働く「善意の人々」なのでは決してありません.彼らは,端から日本国家の繁栄も,日本国民の豊かさも眼中にない,確信犯の「悪意の輩」です.

彼らが政治に関わればもちろん,「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになる」ことを目標としていると口にはします.

しかし,それこそが完全に,悪意を持ったウソ,なのです.

彼らが政治に関わるのは,政治に関われば,政治以外では手にすることができない「名誉」や「権力」を手に入れることができるからです.

そんな「名誉」や「権力」を手に入れることを究極目的として,政治に関わるのですから,彼らは平気でウソをつくのです.だから,何の心理的抵抗感もなく,「日本国家が繁栄し,日本国民が豊かになる」ことを目標としているといウソを,いとも容易くつけるわけです.

適菜収氏は,彼らの事を,詐欺師のような政治家ではなく,詐欺師が政治をやっているのです,と端的に表現しています.

多くの日本国民は,こういう「確信犯のうそつき」「政治をやっている詐欺師」がまさか存在するはずはないだろう―――と感じているに違いありません.

事実,日本の政治制度は,詐欺師が政治家をやるリスクというものを織り込んで作られてはいません.これは,これまでの日本人は,そんな悪人が政治に参加することはないだろうという認識を共有してきたからです.

しかし,21世紀の今,事態は完全に,かつての日本人が想定していなかった状況に至っています.「名誉」や「権力」を手に入れることだけを目的として,あらゆるウソと詭弁を弄する輩が民主主義のプロセスを経て公的権力を手に入れる事態に至っているのです.

――これが,大阪ダブル選挙と大阪都構想住民投票の言論戦を経て,筆者がたどり着いた確信です.

(※ そもそも,それを主導したのは,「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。その後に、国民のため、お国のためがついてくる。自分の権力欲、名誉欲を達成する手段として、嫌々国民のため、お国のために奉仕しなければならない訳よ!」と公言してはばからない人物です)

端的に申し上げまして,筆者は主にこれまで,「目標の転移」を起こしている大量の現代人が織りなす不条理な政治をなんとか軌道修正できないだろうか,と考えてまいりました.無論,それすら大変に困難な作業だったのですが,今や,明確な悪意を持った「詐欺師」が巧みにコーディネートしながら,そうした「目標の転移を起こした人々」を上手に道具の様に「活用」して出来上がる全体主義現象と対峙せざるを得なくなったわけです.

これは,相当にやっかいな問題です―――.

しかし,この非常事態を理解している人々は,今のところ極めて限られているように思われます.
しかし,どれだけの人々がそれに気づいていようがいなかろうが,事態はすでにここに至っている,というのが実態です.

「目標の転移」が生じているだけでも国家的棄損が進む中,明確な「悪意」がそれを主導したとすれば,その破壊はこれまでとは異なる超絶なスピードで進行することは避けられません.

これから何ができるのか――心あるすべての日本人一人一人に,それが問われています.

そうした問いかけに一人でも多くの心ある日本国民が考え,行動を起こされんことを――筆者のこの懸念が杞憂に過ぎぬことを心から祈念しつつ――本稿を終えたいと思います.

PS
この問題を正面から考えてみたい方は,是非下記をご一読ください.
・ブラック・デモクラシー:民主主義の罠
http://www.amazon.co.jp/dp/4794968213

・デモクラシーの毒 
http://www.amazon.co.jp/dp/410339661X

・凡庸と言う悪魔:21世紀の全体主義 
http://amzn.to/1Jsre9O

—メルマガ発行者より

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本当に経済学は経済を良くするのか?
https://youtu.be/T7qPdljmVfg

TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
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三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

【藤井聡】日本は「米利上げショック」に備えよ

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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いま,グローバル経済は,上海株式市場ショックに端を発する「中国危機」や,ギリシャ危機とフォルクスワーゲン問題でその危機が顕在化しつつある「ユーロ危機」の直撃を受けかねない,大変に危ない状況にあります.

ですが,それらのショックが顕在化する以前に,

 「米国の利上げ」

の問題が,世界経済に深刻なショックを与えることが危惧されています.

http://jp.reuters.com/article/2015/11/13/analysis-2016-emg-credit-crunch-idJPKCN0T20GP20151113

アメリカは,リーマンショック後の景気回復のために,低金利政策を採用し続けてきました.

ところが,FRBは今,昨今の米国経済の景気回復を受けて,そろそろ低金利政策を終え,「利上げ」をすることを検討しています.

つまり,これまで米国FRBは,景気回復のために「金融緩和策」を続けてきたのですが,失業率が5%にまで低下するなど,一定の成果が得られたということで,「金融引き締め」の方向に舵を切ることとなったという次第です.
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/129957/111200039/

いわば,FRBは,これまで続けてきた金融緩和策の「出口戦略」を実行しはじめた,といことです(言うまでもなく,今,異次元緩和を行っている日本も,そのうち同様の事を検討する時期が早晩訪れることになります).

もちろんFRBはアメリカ経済のためにそうした方針転換を図るわけですが,これが,アメリカ以外の「グローバル経済」にも深刻な経済危機をもたらすことが真剣に危惧されています(なお,その懸念のために,利上げを引き延ばす可能性は今日でも皆無ではないと……思われますが……今回だけは,かなりの確度で利上げすることが予期されています).

まず,上記ロイター記事に記載されているように,

「ドルが再び上昇を始める一方、中国からマレーシア、ロシア、さらにはトルコ、メキシコ、ブラジルに至る新興市場諸国で企業・家計の債務が警戒水準まで積み上がっている」

状況にあります.つまり,こうした新興国市場では,多くの投資家が「債務残高が多くても(つまりどれだけ借金をしても),デフォルトは少ない(破綻するリスクは少ない)」とい状況の恩恵を受け,多くの借金を積み重ねてきたわけです.

その背景には,リーマンショック後,世界各国が「金融緩和」を測り,大量のマネーが各国の市場に供給され続けてきたからです.つまり,過剰なグローバルマネーが供給され続けてきたので,誰がどれだけ借金をしても「破綻」(デフォルト・債務不履行)となるリスクが最小化されていた,という次第です.

そんな中で,アメリカFRBが「利上げ」を敢行すれば,新興国に投入されてきた大量のグローバルマネーがアメリカへ流出することとなります.

なぜなら,FRBが利上げをすると,アメリカ市場に資金を投入した方がより多くの利息を稼げる,ということになるのですから,新興国市場に大量の資金を投下していた多くの投資家たちにしてみれば,その資金を回収してアメリカ市場に再投下する方がより合理的になるからです.

その結果,経済ショックが起こるのではないか……ということが懸念されているのです.

ロイターの記事曰く,この米国利上げが,2007─08年のサブプライム住宅ローンの崩壊に始まる一連の銀行倒産を第一波、2011─12年の欧州債務危機を第二波とした,

「信用崩壊の第3の波」

となることが懸念されているのです.

なぜなら,新興国市場に投下されていた資金が(より高い金利を目指して)米国市場に流れていけば,新興国市場で資金不足が生じ, 多くの民間主体の資金繰りが厳しくなっていくからです.つまり,新興国市場でさらにお金を借りようとしても,貸し手が少なくなり,資金の調達が難しくなる,という次第です.

それだけで,多くの民間主体の資金調達が不能となり,債務不履行,倒産の危機を迎えることとなります.

ですがそれと同時に,債務不履行にならなかった民間主体においても,資金調達を企図して金利が高くなっていくことになります.つまり,米国の利上げが,新興国にも一部伝播していくことになるわけです.そうなれば,大量の借金を抱えた債務者が,その利払いのためにデフォルトの危機を迎えていきます.

こうして,新興国市場内で多くの企業が倒産していくことになるのですが,こうした倒産はもちろん,さらに連鎖的に広まっていくことになります.さらには,こうした被害は,民間主体のみでなく,新興国の国債市場にも広がっていくことになります.

結果,2007─08年のサブプライム住宅ローン危機,2011─12年の欧州債務危機に続く「第三の危機」が,米国利上げによって引き起こされることが懸念されているのです.

さて,こうなればもちろん,日本にも影響が及びます.

第一に,新興国市場と同様に,日本市場から米国に向けて資金が流出していくことが懸念されます.ただし,これ以上に深刻な問題は,新興国が経済危機を迎えることで,彼らが日本からの輸出を引き受けることができなくなる,という問題です.

リーマンショックの時には,27兆円もの輸出の激減がもたらされました.それによって,我が国は大きな被害を受け,多くの会社が倒産し,失業者が大量に生ずることとなりました.

今回は,世界最大のマーケットである米国経済が収縮するわけではありませんから,リーマンショックほどの被害は受けないのではないか,とも考えられますが,この米国利上げで被害を受ける「新興国」とは,中国やアジア諸国といった日本と関係が深い諸外国が多いのが実情です.

したがって,日本への被害は,より直接的なものとなることが懸念されるわけです――.

いずれにせよ,米国利上げは,年内に行なわれる見通しであることが様々に報道されていますから,以上に論じた危機は,ほぼ間違いなく,起こるのではないか――と懸念されるわけです.

なお、先のロイターの記事は,次のような言葉で締めくくられています.

「先送りされてきたFRBによる利上げは火花を1回起こすだけかもしれない。しかし、可燃物がたっぷり積まれているのは確かなのだ。」

恐ろしい話,であります―――日本経済の政策担当者も,この警告は重く受けておくべきであることは論を待ちません

そもそも我が国の経済は,消費増税の影響を未だに引きずっており,二期連続のマイナス成長問となり,定義上「リセッション」(景気後退)の局面に至っているのは周知の事実です.

そして冒頭で指摘したように,中国危機,ユーロ危機も深刻に懸念されている状況ですから,2016年は,それなりの覚悟でもって,我が国は経済運営を図る必要があるでしょう.

この認識に立てば,補正予算も来年当初の通常国会にて10兆円程度用意する覚悟の下で議論を重ねると同時に, 2017年の消費増税も見直すこともまたタブー視せず,正々堂々と議論していくことも,当然必要だということになることでしょう.

いずれにせよ,我が国の経済政策担当者が,適切な危機意識と現状認識能力を保持していることを心から祈念したいと思います.

PS この危機を乗り越える方途にご関心の方はぜひ,下記を改めてご一読ください.

「超インフラ論」
http://www.amazon.co.jp/dp/4569826342

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【藤井聡】大切な事(政治)でのウソを許さない空気を「保守」する戦いを

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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11月22日投開票の大阪ダブル選で,橋下維新側の二候補が,市長選,知事選の双方で勝利を収めました.

誠に遺憾ではありますが,この結果は「大阪の危機」に直結する結果であると同時に,日本の「自由主義政治の危機」にもまたつながり得るもの,です.なぜなら,橋下維新政治はウソと欺瞞に満ちた「ブラック・デモクラシー」という名の「全体主義」政治だからです.(詳細はこちらをご参照ください ⇒ http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/11/10/fujii-169/

「ブラック・デモクラシー」=「全体主義」政治とは,その最も典型的な事例は,第二次世界大戦のころのドイツで展開された政治です.

それは,大衆の潜在意識化の願望に応えるためだけにでっち上げられた「政治スローガン」がさも真実であるかのようなプロパガンダを繰り返して多数派を形成,議論や公正,正義の全てを度外視した「多数派のごり押し」であらゆる政治を進める――というブラックで邪悪な政治です.

この「全体主義」政治について,歴史学者(近代ドイツ史)である林健太郎氏が『ワイマル共和国』(中公新書)の最後で,次のように述べておられます.

「ドイツ国民は…決してすべてが無法者を好んでいたわけではない…。しかし彼らは目前の苦境に追われて、社会と人間の存立のために最も重要なものがなんであるかを認識することを忘れた.そしてそれを破壊するものが民主主義の制度を悪用してその力を伸ばそうとする時に、あらゆる手段をもってそれと闘わねばならぬということを知らなかった。それがヒトラーを成功させた最大の原因である」

政治哲学を学び,それに基づいていく冊もの書物を出版した当方としては,林氏が論じたこのドイツでの政治社会現象(全体主義現象)が,まさに今,大阪で起こっているものの正体であると考えています.

この林氏の言葉を,大阪に当てはめれば,そっくりそのまま,次のようになります.

「大阪の人々は…決してすべてが無法者を好んでいたわけではない…。しかし彼らは目前の苦境に追われて、社会と人間の存立のために最も重要なものがなんであるかを認識することを忘れた。そしてそれを破壊するものが民主主義の制度を悪用してその力を伸ばそうとする時に、あらゆる手段をもってそれと闘わねばならぬということを知らなかった。それが橋下維新を成功させた最大の原因である」

つまり橋下維新は,大阪の人々が関西の地盤沈下とデフレ不況のダブルパンチという「目前の苦境」状況であることにつけこみ,彼らのブラック・デモクラシーの「力を伸ばそう」として「民主主義の制度を悪用」しているという次第です.

もちろん「決してすべてが無法者(=橋下維新)を好んでいたわけではない」のは事実ですし,そういう方々が精いっぱい「闘った」こともまた間違いないでしょう.

しかし,実に数多くの大阪の人々が「社会と人間の存立のために最も重要なもの」を忘れ,「あらゆる手段をもってそれと闘」うことを忘れてしまったことも事実なのです.そしてその事実こそが,今回の維新の勝因の最大の原因である―――これが,上記の林氏のフレーズの趣旨です.

では,今回,数多くの大阪の人々が忘れてしまった,

「社会と人間の存立のために最も重要なもの」

とは一体何なのかと言えば――それを一言で言うならそれは,

  「大切な事柄での『ウソ』は許さない」

という態度です(もちろんこれは,人間が人間であるために求められる真摯な態度と言い換えることもできます).

そもそも,大切な事柄で人々がウソをつくことが当たり前になってしまったとしたら――私たちの社会は根底から瓦解してしまうのは必定です.社会というものは様々な「約束」で成り立っているのに,そんな約束を反故にするようなウソがまかり通れば,あらゆる秩序が崩壊することは避けられないのです.

そして今回の選挙結果は,多くの大阪の人々が「政治という最も大切な事柄についてのウソ」を

『許している』

ことを意味していると考えざるを得ません.

例えば,今回圧勝した橋下維新は,大阪都構想の先日の住民投票は「ラストチャンス!」と言っていたのに,今回再度公約に掲げていました.つまりと彼らのその「ラストチャンス!」という主張は「ウソだった」ということを,彼ら自身が認めているのです.にも関わらず,多くの有権者たちはこのウソを「許した」わけです.

あるいはそもそも大阪都構想で大阪に豊かになるという理性的根拠は存在していません.したがってそれで大阪を豊かにすると叫び続けることは「ウソ」ですし,「二重行政が問題だ!」という主張もまた実証的根拠を欠いた主張であり,それもまた「ウソ」にすぎません.こうした「ウソ」はいずれも様々な専門家によって明らかにされていたのですが(http://amzn.to/1GF42Us),それらのウソもまた全て不問に付されました.

あるいは,吉村次期市長は選挙運動の中で「大阪が伸び率ナンバーワンの経済成長をしている」と述べ,過去の維新政治をアピールしていましたが,これは明確に「ウソ」であることが知られていますし,
http://satoshi-fujii.com/151112-2/

同じく吉村氏は,都構想で「○○の住民サービスが下がると流布されているのは全てデマ。」だと断じているのですが,この主張それ自身もまた「デマ」であることもまた明らかにされています.
http://satoshi-fujii.com/151013/

さらには,松井知事は都構想の住民投票の投票運動の際,負ければ政治家を引退すると明言していたのに,このたび「しれっ」と立候補しました.これはつまり,かつての引退宣言がウソであったことを示しています.
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151103/

・・・

この様に,橋下維新政治は,政策についても政治プロセスについても,さらには政治家の「進退」についてまで明らかな「ウソ」をつき続けてきたのですが,こうしたウソは全て多くの有権者たちによって不問に付され,「許された」のです.
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151123-00010000-shincho-pol

つまり,大阪の多くの方々は,「大切な事柄での『ウソ』は許さない」という当たり前のことを「忘れて」しまったわけです.

――これは,大変に由々しき事態です.

政治でウソをつくことを有権者が許してしまえば,それこそ,政治家は,どんなブラックなことでもやり放題になってしまうからです.

もちろん「ウソをついているのは,橋下維新だけじゃない.政治家はしょっちゅうウソをついているじゃないか」としばしば耳にすることは事実です.

しかし,
「政治家がウソをつく」ということと,
「政治家がウソをつくことを許す」といこととは,根本的に異なるのです!

前者の場合はそういう政治家を糾弾すれば事足りるのですが,後者の場合は,それすらできなくなるのです!

それは犯罪がこの世に存在することと,犯罪者を無罪放免にしてしまう事とがまったく異なる,というのと同じです.

今回の選挙結果は,ウソをついていることが明白な有権者を,そうと知りながら多くの有権者たちが支持したのです.そうである以上,有権者たちは今,橋下維新が口にしている「公約」が守られる保証はないと覚悟しなければなりません.

例えば,橋下維新達の公約に反して,大阪都構想で大阪が豊かする,成長戦略で大阪を成長させると「明言」していますが,今回「だけ」それらがウソでないと信じられる根拠など,あるのでしょうか?

もちろん,その根拠について理性的に答えられる有権者は皆無でしょう.問い詰めても問い詰めても,最後の最後に出てくるのは「どうせ政治家なんて皆ウソをつくんだから」という程度の発言しかないでしょう.

ですから,少なくとも以上の分析に基づくなら,今回の選挙結果が大阪の未来を明るくするとは,残念ながら思えない――というのが筆者の見解(といより確信)なのです.

したがって,豊かな大阪を作りたいと考えるものは,この選挙結果を重く受け止めつつ,如何にすればウソと欺瞞に満ちた政治勢力による被害を最小化できるのかに,今日,この瞬間から全力で考えはじめ,動き続けなければなりません.

さらに言いますと,今回の選挙結果は,国政政党「おおさか維新の会」を通して橋下維新政治の「中央政治への拡大」をもたらすことも必定です.

第一に,東京の(国会,政府,官邸などを含む)政治諸勢力が,今後,橋下維新をこれまでよりも重視する傾向が高まることは決定的です.

そして第二に,これからの様々な選挙で橋下維新勢力が勢力を伸ばしていくこともまた,間違いないでしょう.

もしここで,一つでも橋下維新側が落としていたら「橋下維新も,もうこれまでかも」という空気が出来上がっていたとも考えられる一方,この二勝で「これからは維新が台頭するかも」という空気が醸成されることが予期されるからです.

(とりわけ,大阪と空気感が近い「兵庫」では,維新の台頭は目覚ましいものとなると危惧されます.ちなみにそうなれば,「常勝関西」を標榜する公明党の基盤が脅されることもあり得るでしょう)

これらを背景として,現在の「自公政権」が,「橋下維新」勢力と協調していく可能性も十分にでてくることになります(弱小勢力は無視すればそれで事足りますが,あなどり難い相手の場合には相手の言い分を飲んでいく傾向が高まるものです).

いずれにせよ,これらの展開は橋下維新による「ブラック・デモクラシー」がこれからいよいよ,大阪というローカルだけでなく,日本のど真ん中の東京で展開し始めることを意味しています.

それはつまり,ウソにまみれた政治が,日本の中央で始まることを意味しているのです.

より正確に言うのなら,小泉政権から始められた「ウソと欺瞞が許される政治」が,橋下維新により「完成」に向かうこととなるわけです.

そうなったとき,我が国の国益は首都直下地震や南海トラフ地震を遥かに上る水準で激しく棄損していくこととなることが,真剣に危惧されることとなります.

そうである以上,もはや今や,橋下維新と闘わなければならないのは,大阪の人々のみではなくなったのです.

つまり今回の選挙結果を受け,林氏が述べた「社会と人間の存立のために最も重要なもの」を守る戦いの戦場が,大阪から,日本の中央である東京へと拡大することとなったと考えざるを得ません.

勘の鋭い方々は,今回の選挙結果を受けてこうした戦線の拡大が生ずる懸念をすでに理解していることでしょう.しかしそうでない大半の日本国民はいまだ,事態がここに至ったことをほとんど理解していないでしょう.そしてむしろ,当方の指摘について「何を大げさな」と感ずることでしょう.

そうである以上,少なくとも本メルマガ読者だけは,その事態の展開を,大局的な視座から認識し,「社会と人間の存立のために最も重要なもの」(人としての真摯さ)を守るために,すなわち政治にてウソを「許さない」という空気を「保守」するために,一体何が求められているのかを,ぜひとも考え始めていただきたいと思います.

今回の選挙結果を受けてもなお,「未来は僕らの手の中」にあるのです.

筆者の懸念が杞憂にすぎぬことを祈念しつつ――今なすべきことを,筆者もまた一つ一つ考え始めたいと思います.

PS今こそ,日本の自由主義を守るために,下記書籍ご一読ください.
・ブラック・デモクラシー:民主主義の罠http://www.amazon.co.jp/dp/4794968213
・デモクラシーの毒 http://www.amazon.co.jp/dp/410339661X
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—メルマガ発行者より

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【藤井聡】 【警告】東京にとって、「大阪維新」現象は対岸の火事ではない。

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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この週末、東京である会合があったのですが、その席で、大阪での最新の世論調査の報道情報が流れて参りました。

どうやら、市長選では維新の吉村候補は、(元)自民党の柳本候補に10ポイント以上の差をつけてリードしており、知事戦では、維新の松井候補は、(元)自民党の栗原候補にさらにより抜本的な差をつけて優勢にたっている、という報道でした。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H2P_V21C15A0PE8000/
(※ 新聞では数字は出さないのですが、専門家が見れば、「リード」「優勢」という表現から、おおよそどの程度の差がついているかが分かるようになっているのです)

もちろん、まだまだ1週間ありますし、この手の調査には大きなバイアスがありますから、まだまだ分からない…ところではありますが、「新聞記者たち」の感覚では、これだけ差がつく結果が出れば、知事選についても市長選についても、(元)自民側候補は、相当踏んばらないとかなり厳しいのでは……という種類の報道でした。

この報道が会食の席上で話題に上ったとき、多くの方が、

「えっ!?、橋下さんの維新って、大阪ではまだそんなに強いんですか!?」

という驚きの反応でした。

つまり、「橋下維新」はもう東京では完全に「賞味期限」が切れなのでは……という雰囲気が、大阪以外では、濃密に流れているのです。

特に、昨今では維新の「分裂騒動」が何度も報道されていましたから、多くの方々が維新に対して「うんざり」する感覚をお持ちになっているようです。
※ 例えば下記の『橋下氏代表就任に「うんざり」な雰囲気が漂ってるようです』を参照ください。 ⇒ http://satoshi-fujii.com/151031-4/

しかも、最近の世論調査では、橋下氏が立ち上げた「おおさか維新の会」に期待「しない」声は、全国では期待するという声を圧倒しているという事実からも、大阪以外で、如何に橋下維新が賞味期限切れの状況にあるかを指し示しています(「期待する」は28%で「期待しない」が56%)。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H2P_V21C15A0PE8000/

ただし……

大阪・関西では、二人に一人が「おおさか維新の会」を期待しており、期待しない声(42%)を大きく上回っているのです。

そして、そうした「期待」を反映するかの様に、今、維新候補が、先に紹介したように大阪知事選、市長選の双方で、非維新候補をリードしている、という次第です。

こうした状況に、東京、全国の方々が「驚き」を見せるのですが、その「驚き」の根底には、よくよく聞くと次のような印象があるようでした。

「なぜ大阪の人って『振り込み詐欺』みたいなものに、何度も引っかかっちゃうの?」

実際、こういうセリフで当方に質問してこられた方は、一人や二人ではありません(!)。

つまり、多くの関西外の方は、都構想の住民投票で「これがラスト!」って言ってたのにいきなり「再挑戦」って言っているし、「負ければ引退!」って言ってたのにやっぱり政界復帰する様子だし――そんなことを考えれば、橋下氏が「うそつき」であることなぞ誰の目から見ても明らかなのに、なんでまだそんな「うそつきの橋下さん」を大阪の人達の多くが、未だに支持しているのか、「ワケ分かんなーい」というご様子なのです。

しかし、これには簡単な理由があります。

以下は、当方が、先日のトークイベントでお話したところなのですが、「ブラック・デモクラシー」論、すなわち、「全体主義」論を踏まえれば、多くの大阪の人達が橋下さんたちを支持し、東京の方々が支持しないのには、大変にシンプルな理由が見えてまいります。
https://youtu.be/iM8I9Q-0UQA

そもそも、全体主義=ブラック・デモクラシーでは、ポピュリスト(人気を得るためなら何でもする者)のデマゴギスト(ウソツキ)が、彼自身の党利党略を実現するために、人々の「潜在意識」に働きかける「政策」を(政策的合理性を度外視しつつ)「開発」し、世論的支持を得ることを目指します(同時に、その政策を批判する人々に、徹底的な封殺圧力、弾圧をしかけます)。

もしも、橋下氏がそうしたブラック・デモクラシーを展開するポピュリストのデマゴギスト(=人気を得るためなら何でもするウソツキ)であるとするなら、彼が今目指しているのは、「大阪での支持」であって「大阪外の支持」ではない、という事になります。

なぜなら、現時点で必要なのは、大阪ダブル選挙での勝利であり、それ以上でも以下でもないからです(なお、将来的には東京や全国での人気が必要になりますが、そのためにも戦略的に「今」、求められているのは「大阪ダブル選での勝利」なのです)。

したがって、橋下氏がポピュリストであるのなら、今、東京での人気など度外視して、大阪での人気だけを得るようなプロパガンダを仕掛けることが、最善の策だということになります。

それはちょうど、詐欺師は狙い定めた相手だけに「信用」してもらえればそれで事足りるのであって、それ以外の全ての人から「胡散臭い」と思われようが、知ったことでは無い、ということと同じなのです。

かくして、ポピュリストのデマゴギストは、

・「大阪都構想」を訴え、
・「おおさか維新の会」を結党した

という事が理論的に暗示されることになります。以下、橋下氏が「ブラック・デモクラシーにおけるポピュリストのデマゴギスト(=人気を得るためなら何でもするウソツキ)である」という仮説が真であるという前提で、彼の政策提案を解説したいと思います。
※ なお、その前提は、下記原稿で論じた様に、実証的に明確に支持されています
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151110/
※ また、下記の考察は、下記にて講話しております。
https://www.youtube.com/watch?v=iM8I9Q-0UQA&feature=youtu.be

―――――以下、仮説的論考――――――――――――――
そもそも、「大阪都構想」も「おおさか維新の会」も、大阪の人々の潜在的願望に訴えかける、強烈なイメージを持つものです。

「大阪都構想」という言葉の響きは何やら、大阪を豊かにするというイメージを持ちます。何よりそれは「東京に匹敵するようなもの」というイメージを持ち、大阪の人々が潜在意識の内に抱えている「東京コンプレックス」を強烈に刺激します。

しかも、「おおさか維新の会」という政党の言葉も、そんな大阪を豊かにする政策を中央の政治の力で実現する、というイメージを強烈に換気します。そしてそれは、「どうしても大阪は中央に進出できない」というコンプレックスに対して再び、強烈に働きかけるものです。

(なお、個人的な印象を申し述べるなら、これらのコンプレックスは、関西人の当方には、痛いほど分かるものなのです)

したがって、「大阪都構想」や「おおさか維新の会」というものは、専門的知識に基づいて考案されたものではなく、大阪の人々の潜在意識を読み、その潜在意識が求めるものとは何かを考えながら作り出されたファンタジーなのです。

それはちょうど、人気TV番組を作るときの手法と同一です。それは、視聴者が求めるものを、優秀なスタッフ達が企画会議で一生懸命考え、視聴者が求める番組を作りあげる、というプロセスです。

そしてこの現象は、ナチスドイツが「ドイツ人はアーリア人の末裔で、もっとも優れた民族である」という「デマ」が全体主義の中で繰り返し宣伝され、人気を博していった、という現象と同じです。そんな「理屈」は、公正な論理に基づいて提案されているのではなく、「どうすれば人気がでるか?」という意志の下で作りあげられたファンタジーに過ぎないわけです。

一方で、「大阪都構想」や「おおさか維新の会」というファンタジーは、あくまでも大阪人の潜在意識、とりわけその東京コンプレックス、中央コンプレックスに働きかけることを前提として作りあげられたものでありますから、それが人気を博すのは、

「大阪だけ」

ということになります。

とりわけ、東京コンプレックス、中央コンプレックスを持たない当の東京のひとびと、中央の人々には、「大阪都構想」や「おおさか維新の会」の魅力なんて、皆目見当がつかない、という事になるわけです。

これこそが、今、橋下維新勢力が、大阪で「だけ」人気があり、全国的な人気には至っていない、根源的理由なのです。
――――――――――――――――――――――――――――

・・・以上、いかがでしょうか?

以上はあくまでも、「橋下氏がブラック・デモクラシー=全体主義におけるポピュリストのデマゴギストである」という仮説に基づいて申し述べた仮説的論説に過ぎませんが、こう考えれば、現在の世論状況、特に東京と大阪の世論状況の大きな格差が論理整合的に説明できることは、十分にご理解いただけるものと思います。

では、もしもこの仮説が正しいとしたら……これは、東京者を含めた全国の人々にとっても、今回の大阪維新現象は、極めて重大な意味を持つことになる、という結論が導きだされます。

今、(仮説的)「ポピュリストのデマゴギストである橋下氏」は大阪の世論をターゲットにして「大阪都構想」「おおさか維新の会」というファンタジーを「開発」し、提示しているわけですが、一旦、ダブル選挙が終われば、(仮説的)「ポピュリストのデマゴギストである橋下氏」は今度は、全国の人々、とりわけ最も大量に存在する東京の人々をターゲットにした「ファンタジー」を開発し、それに基づいたプロパガンダを徹底的に展開することになるはずです。

そうなったとき、東京者を含めた全国の人々はコロリと「騙される」ことになる見込みは濃厚にあるのです。

そもそも、2012年の12月の世論調査では、「維新」勢力は当時の政権与党であった民主党を抜き去って、自民党に次ぐ第二の支持率を獲得していたではないですか!

しかも、今年の5月の住民投票で都構想が否決された日の夜の記者会見では、(仮説的)「ポピュリストのデマゴギストである橋下氏」は、「さわやかさ」を超絶に演出して見せ、その演出にそって多くの論者が彼を「さわやか」といい「潔い」と称し、極めて高い評価を得ていたのではないですか!!

……つまりもしも橋下氏が、TVで人気タレントを演じていた時の才能を遺憾なく発揮しつつ、(政策の合理性を度外視しつつ)「ポピュリストのデマゴギスト」として、東京世論狙い、全国世論狙いの政策イメージを様々に開発し、世論に提示し続ければ、瞬く間に、全国的人気を奪っていく可能性は、十二分に考えられるのです。

繰り返しますが、「ポピュリストのデマゴギスト」(=人気を得るためなら何でもするウソツキ)は、政策の合理性を全て度外視し、ウソででも詭弁でもデマでもなんでもいいので、とにかく「お茶の間で人気」がでるファンタジーを開発し、世論に提示し、人気を獲得していこうとするのです。

そうであるのなら、今、大阪で起こっている維新現象は、近い将来、必ず、東京で生ずることとなるであろう――という事は火を見るよりも明らかなのです。

とは言えもちろん、今回のダブル選挙で、維新勢力が一つでも首長を落とすことがあれば、そういう未来が生ずる可能性は大きく低減されていくでしょう。ただし、維新勢力が市長選でも知事選でも勝利すれば、東京でそういう未来が生ずる可能性は、飛躍的に拡大することは間違いありません。

そして、その政策イメージはあくまでもファンタジーであり、何の政策的合理性も存在していないものである以上、それが実現されれば、巨大な国益棄損が生ずることは火を見るよりも明らかです―――。

つまり……

現在大阪で起こっている現象は、東京の人々、そして、全国の人々にとって

「対岸の火事ではない」

のです!

・・・以上、いかがでしょうか?

当方の解説を信用するもしないも、皆様のご判断です。

しかし、当方は、大阪ダブル選を前にした最後の記事として、橋下氏が「ポピュリストのデマゴギスト」(=人気を得るためなら何でもするウソツキ)であるという危惧、並びに、それ故に維新勢力が市長も知事も勝利すれば大阪が巨大な被害を被るであろうという危惧、さらには、近い将来にその「火事」は、東京という日本のど真ん中に燃え移ることは間違いないだろうという見解を、表明差し上げたいと思います。

いずれにしても……大阪におきます賢明なる有権者判断を、心から、祈念申し上げたいと思います。ともすればこの選挙は、皇国の荒廃を分かつ一戦であると、後の歴史家が評価するものであるかもしれないのですから……

PS 是非一人でも多くの方々に、下記ご試聴いただきたいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=kG3MrxXzFxo&feature=youtu.be

PPS マジメに、大阪を、そして、民主主義を考えてみたい……という方は是非、下記をご参照ください。
http://satoshi-fujii.com/book/

—メルマガ発行者より

ドイツはいま、5つの難問に直面しているという。フォルクスワーゲンの排ガス不正問題、世界的なデフレ、ギリシャ問題、難民問題、ウクライナ問題。

ウクライナ問題はやや特殊な事柄ながら、他の4つの難問はほぼ根っこを同じくするという。それは「経済学」の間違いに由来するグローバリズムだ。ユーロがその最たるものだが、現在の経済学の主流派である新古典派経済学は、国境を越えて、人・モノ・お金の移動の自由化を強く要請している。

また、多くの経済学者たちは、各国の規制を撤廃することで経済は最適化され、発展していくと言う。しかし、ユーロ圏、EU諸国を見る限り、経済発展どころか、勝ち組であるはずのドイツが経済的な難問を抱える結果となっている。

いったい、なぜこんなことになっているのか。

「グローバリズムは現代の帝国主義だ」と主張する三橋貴明が、ドイツが難問を抱えることになった背景、経済学の間違い、そしてグローバリズムという名の「新帝国主義」について詳しく解説する。

『月刊三橋』最新号「ドイツのバカの壁〜経済学の嘘が「国家」を滅ぼす」
http://keieikagakupub.com/lp/mitsuhashi/38NEWS_C5_100_mag_3m.php
※11/18まで1万9,000円相当の月刊三橋5本セット(計7時間01分)が100円でもらえます。