【島倉原】グローバリズムの非合理性

From 島倉 原(しまくら はじめ)@評論家

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

『月刊三橋』最新号はこちら
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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おはようございます。
「奇しくも元旦の執筆を担当することになり、…」というのが私にとって本年の書き初めでしたが、図らずも今回、大晦日の執筆までも担当することとなりました。
また、本年は私にとって、通年で執筆に参加した最初の年でもあります。

というわけで今回のお題に入る前に、この1年間を少々振り返ってみたいと思います。
新年号では、前月の総選挙で繰り広げられた雇用環境の改善を巡る与野党の議論を取り上げて、「アベノミクスで雇用環境は改善している」という与党の議論は不当なのではないか、と述べました。
その際、「今後の状況を悲観させる不吉なシグナル」としてご紹介したのが、「異次元金融緩和が雇用環境の改善をもたらした」と主張する岩田日銀副総裁のこちらの論稿でした。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO81271810U4A221C1KE8000/

その後、「失業率が低下し、雇用環境は著しく改善している」「家計消費は改善の兆しが見られない」という一見相反する政府発表やマスコミ報道が続いたのが、この1年であったように思います。
こうした矛盾する状況を先月改めて読み解いたのがこちら、『消費の改善につながらない雇用の実態』です。
残念ながら「不吉なシグナル」は、少なくとも「当たらずと言えども遠からず」であったようです。
http://foomii.com/00092/2015112901194730050

岩田副総裁といえば、今年5月27日に行った講演で、「現在の株式市場に過度の強気化は見られず、バブルではない」という趣旨の発言をされたようです。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NOZMPH6K50XZ01.html
よもやとは思うのですが、過去のジンクス(?)に従えば、これもまた、そのあたりが中期的な株価の天井であったことを示す不吉なシグナルだった、というのが来年の今頃には判明している…かもしれません(笑)。
http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=998407.O

今年は、異次元金融緩和が掲げていた「2年程度で2%のインフレ率目標を達成する」というコミットメント(約束)が果たされなかった年でもありました。
そんな中、読者の皆様も含めた本メルマガ関係者の多大なご支援のもと、岩田副総裁に代表される「リフレ派」の欺瞞を徹底的に検証し、積極財政の重要性を訴える拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』を刊行することができました。
金融緩和に偏り、緊縮財政が継続される政策の歪みを正す論拠として、一人でも多くの方々に活用されることを願ってやみません。
http://amzn.to/1HF6UyO

また、本書をご覧になる機会のない皆様も、積極財政の重要性、すなわち、

「日本経済の停滞は、金融緩和の不足ではなく緊縮財政と共に始まっている」
https://twitter.com/sima9ra/status/669165227120824320
http://on.fb.me/1LxuFJ6
「経済成長率が高い国ほど、財政支出を積極的に拡大している」
https://twitter.com/sima9ra/status/669166143022612480
http://on.fb.me/1Nbx4P9

ことを示した上記グラフの共有、拡散に引き続きご協力いただければ幸いです。

さて、政策の歪みといえば、TPPの大筋合意に代表されるグローバリズム、新自由主義的傾向がより一層強まったのもこの1年。
というわけで、ようやく本日のお題にたどり着きました。

グローバリズムは経済政策として本来目指すべき「国内経済の活性化」と矛盾するし、国際紛争のリスクも高める、というのがこれまで述べてきた議論です。
加えて今回着目したのは、仮にグローバル化を前提としても、政策原理としてのグローバリズムが、日本国民のみならず、日本企業にとっても果たして合理的な選択肢と言えるのだろうか、という論点。
それについて経営学や比較文明論の見地も交えてまとめた論稿がこちら、『グローバリズムの非合理性』です。
http://keiseisaimin4096.blog.fc2.com/blog-entry-133.html

世界の貿易統計を踏まえれば、国際貿易の存在感が高まるグローバル化が進展しているのは紛れもない事実。
しかるにその実態は、「グローバル化」という言葉が想起させる「全世界の一体化」ではなく、「地域内経済活動の活発化」。
そんな状況だからこそ、一国で1つの文明圏、ひいては巨大な地域経済圏を構成する日本としては、国内経済活動の活性化に努めるのが、企業にとってすら合理的な選択といえるのではないか。
そんな議論を、裏づけとなりうるデータや学問的知見も紹介しつつ展開しています。

最後に、来年の展望という意味では、新興国経済のリスクを中心に昨年来述べてきたグローバル経済の動向も、引き続き要注目でしょう。
ロシア、ブラジル、そして中国と、新興国経済の危うさはどうやら現実のものとなったようですが、そんな中、先進国、そして世界の中心的存在であるアメリカの中央銀行FRBが、先々週利上げを実施しました。
そうした動きとアメリカの実体経済、そして通貨や株価とはどのように結び付くのか…景気循環論の観点から考察したのがこちら、『FRBの利上げと金融循環』『実体経済指標から見たアメリカ経済と株価の行方』です。
http://foomii.com/00092/2015122000100030425
http://foomii.com/00092/2015122700000030545

改めましてこの1年、ご愛読いただきありがとうございました。
読者の皆様も、どうぞ良いお年を。

↓↓発行者より↓↓

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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【三橋貴明】安倍総理は、ご先祖様を穢した

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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JA.comに「2015.12.22 農協改革は亡国の思想 崩壊する日本の食料安保  農協改革とTPP」が掲載されました。
http://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2015/151222-28833.php

さて、予想通りといえば、予想通りの動きになってきました。

『慰安婦問題の記憶遺産申請「不参加」 韓国が否定
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151229/k10010356481000.html
慰安婦問題の合意に関連して岸田外務大臣が、中国が検討している慰安婦問題のユネスコの「記憶遺産」への申請に韓国が加わることはないという認識を示したことに対し、韓国外務省は日本とそうした方向で合意した事実はないとして否定しました。

28日の日韓外相会談で両国が慰安婦問題の最終的な解決で合意に達したあと、岸田外務大臣は記者団に対し、中国が韓国などに呼びかけて慰安婦問題を巡る資料を共同でユネスコの「記憶遺産」に申請するのを検討していることについて、「韓国が加わることはないと認識している」と述べました。

これについて、韓国外務省の報道官は29日の記者会見で、日本とそうした方向で合意した事実はないとして否定し、「慰安婦問題の被害者が記録したものを『記憶遺産』に申請することは、韓国内の民間団体が主導して進めている」と説明しました。(後略)』

産経新聞の記事に、今回の合意に関する安倍総理のコメントが掲載されていました。

「韓国が慰安婦問題をもう蒸し返さないと約束できるのなら、子供たちを謝罪の宿命から解放できる」

まず、韓国が約束を守ることはありません。無論、韓国政府は約束を守る「ふり」をする可能性はゼロではないですが、ユネスコへの記憶遺産の申請にしても、あるいはソウル大使館前をはじめとする「あの気持ちが悪い少女像」にしても、表向きは「民間団体(挺対協など)」が推進していることになっています。

安倍総理は、韓国の「民間団体」が慰安婦問題を蒸し返さないと断言できるのでしょうか。できるはずがありません。

一応、韓国政府は、
「日本政府が、大使館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行うなどして、適切に解決されるよう努力する」
という合意に基づき、手紙の一枚くらいは「民間団体」に送るのでしょう。とはいえ、2011年にソウルの日本大使館前に「あの気持ちが悪い少女像」を設置した挺対協は、今回の合意について「合意は無視する」と反発しています。

というわけで、韓国政府が本気で「あの気持ちが悪い少女像」を撤去するためには、冗談抜きで「ウィーン条約違反の銅像設置等は、民間団体であっても認めない」といった法律を作る必要があると思います。そんな、政治生命を一瞬で失いかねない「親日法」を、韓国の国会議員たちが制定するはずがないのです。

というわけで、億が一にも韓国「政府」が「いわゆる慰安婦問題」の蒸し返しをやめたとしても、韓国の民間団体はこれまで通り、いやこれまで以上にヒートアップしてアンチ日本の活動を続けていくでしょう。それを止める手段はありません。

それどころか、日本側が「韓国は嘘の慰安婦問題を持ち出し、日本を貶める活動をやめろ」と主張しても、韓国側は自分たちの「民間」の活動は棚に上げ、
「日本は最終的かつ不可逆的な解決での合意に背くのか!」
と、やってくるに決まっています。ちなみに、時事通信は聯合ニュースの引用として韓国政府当局者の言葉、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」した日韓両政府の合意について、
「不可逆的というのは相互のことだ」
との発言を報じ、韓国側が問題を蒸し返す場合だけでなく、日本側が「軍の関与」「心からのおわびと反省」といった合意内容を否定する発言や見解をした場合も、合意違反になるとの認識を報じています。

韓国側は「民間」が一方的にアンチ日本活動を継続し、日本側は今回の合意に基づき口を封じられる。という悪夢の未来が、すでにして見えるわけです。

そもそも、安倍総理の言う「謝罪の宿命」とは、一体、何なのでしょうか。祖先の行動について、子孫が謝罪を続けなければならないという義務でもあるのでしょうか。

そもそも「謝罪の宿命」など存在しないにも関わらず、安倍総理はこの言葉を使いました。安倍総理は、わたくしに言わせれば単なる自虐主義者です。

それ以前に、大東亜戦争期に朝鮮半島出身で「自らの意志(あるいは家族や女衒に騙されて)」日本軍の慰安婦になった人々に対し、現在の日本国民や日本政府が何らかの責任を負っているとでも主張したいのでしょうか。そんなはずがないでしょう。 

とはいえ、今回の「合意」を受け、各国では「日本がSex Slave(性奴隷)に対する軍の関与を認め、10億円の賠償を支払った」という受け止め方をされてしまっています。

安倍政権は、取り返しのつかないことをしてしまいました。

今回の合意は、日韓首脳会談で文書化され、最終的に「制度」となると思います。せめて読者の皆様には、日本国民として「安倍政権は間違っている」というを、各地の政治家や政府に届けて頂きたいと思うわけです。

—メルマガ発行者より

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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【藤井聡】「街」をグローバル資本主義から守る ~「歩くまち京都」四条通の取り組み~

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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今年はわが国ではデフレが継続する中で、過激な自由貿易協定が大筋合意されると共に、(公共投資額不足を決定的な原因とする)集中豪雨による鬼怒川決壊などの天災に見舞われました。一方で海外では同じく世界的デフレが進行すると共に、それに伴う紛争やテロが様々に勃発しました。

要するに国内外共に、グローバリゼーションを背景として経済がますます停滞すると共に、景気さえよければ発生するはずもなかった様々な不条理があちこちで見られるようになってしまったのが、2015年の特徴でした。

その傾向は去年よりも今年の方が顕著となり、そしておそらくは来年も緩和するどころかさらに悪化することは間違いないでしょう。

こうした中で我々はどうすべきかと言えば―――身近な問題から国政やグローバル経済に関わる諸問題について、自身の「手の届く範囲」でできることを一つ一つ積み重ねていく他ありません。

さて、そんな「身近な問題」の一つとして、当方が関わってきたものとして、今住んでいる町、「京都」の問題が挙げられます。

京都では、「あるく街京都」というスローガンの下、昨今の「モータリゼーション」、すなわち、過剰なクルマ依存化に伴って、多くの人々がまちなかから「郊外」に活動の場を転換させてしまったことで生じた様々な問題を改善し、まちの賑わいを取り戻し、京都を活気づかせる様々な取り組みを行っています。

近年、様々な街が疲弊し、「シャッター街」と呼ばれるすさんだ状態に追い込まれているのは、この「モータリゼーション」(過度な自動車依存化)が、最大の原因です。

クルマを使えば、必然的に人々は町中よりも郊外に活動の場を求める傾向が強くなります。この傾向が進めば、町中は寂れ、グローバリズムで流れ込んできた外資も含めた大資本が投下した郊外の大型ショッピングセンターが賑わうようになります(さらに言うと、モータリゼーションはグローバル資本主義の重大な帰結ともいえます)。

そうなると、その街のキャッシュ(おカネ)は、どんどん外国を含めた余所の地域に流れていく事になります(例えば、筆者らの研究室の調査では、「商店街」で使う一万円は5~6千円程度は京都市内に留まるのですが、「大型ショッピングセンター」では、京都市内に留まるのは一万円の内たった2千円程度であることが分かっています)。

こうしたヒトとカネの郊外化は、当然ながら街の中心部への投資の縮退をもたらし、最終的には当然「サービス劣化」をもたらします。

京都市のみならず、あらゆる都市が、このモータリゼーションとグローバル資本主義による「都市の衰弱」の流れに対抗すべく、様々な施策を展開しているのですが、あらゆる街で、街の防衛戦線は「敗戦の色」が濃厚となっているのが実態です。

筆者もこの街の防衛に向けて、学識者の一人として様々な街でお手伝いしているのですが、その中でも二十年以上にわたって持続的にお手伝いをしてきたのが、京都の街です。

例えば、(秋口から春まで)毎週金曜日の朝7時からの4分間、KBS京都ラジオで「クルマ利用はほどほどに」「クルマで京都が見えますか?」といったコーナーで、クルマ利用がダイエットや健康、家計に悪い影響を及ぼしている一方で歩くことがいかに素晴らしいか――といった事を、ここ五年ほどお話していますし、そこでお話している内容については、こんな動画も配信しています。

https://youtu.be/DRjW7HzUPwc
https://youtu.be/C3erF38l6T8

運転免許センターの免許書き換え講習の資料として、こうした情報をまとめた冊子を京都都市圏の全ドライバーに配布したり、京都に引っ越してきた方々に、公共交通のマップや時刻表を配布したり……そうした施策のアドヴァイスを差し上げたりもしてまいりました。

そんな「歩くまち京都」の取り組みの一環として、この度、京都の都心の最大の目抜き通りである「四条通」の「クルマの車線が歩道に転換され、歩道が広げられる」という事業が、つい先日実施されました。

つまり、
「クルマの車道が片側一車線分、歩道に転換」
されたのです。

この事業は、10年もの歳月をかけて様々な関係者と調整が図られてきたもので、地元の方々やタクシーやバス業者の方々との度重なる協議を経て、ようやくこの度、実現されたものです。

これで四条通はますます歩きやすくなり、クルマ利用から公共交通利用や徒歩への転換(モーダルシフト、と言われます)が促され、街にさらに人が集まり、さらに活気づくことが期待されています(事実、既に売り上げが伸びた等、そういう報告も耳にすることが増えてきました)。

実を言うと、多くの都市が、こうした「車道から歩道への転換」を図る取り組みを目指しているのですが、その調整の難しさ故、ほとんど実現していないのが実情です。

そんな中、京都でこうした道路空間の歩道転換が実現したのは、実に

「画期的」

な取り組みとなっています。ついてはこの取り組みについてとりまとめた論説を下記にご紹介差し上げますので、まずは是非、ご一読ください。

『四条通り、「あたり前」のしつらえ転換』
              京都大学大学院教授・内閣官房参与 藤井聡
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=732175943550018&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3

 「四条通り」と言えば、京都の街を象徴する目抜き通り。京都を代表する百貨店が並び、高級ブランド店が軒を連ねる。祇園祭では長刀鉾が鎮座し、山鉾巡行はまさにここでハイライトを迎える――そんな四条通りは京都の街の象徴であり、顔である。だから四条通りに品位と威厳が確保されればそれは京都のまちの品位と威厳に直結する。

 では、四条通りは一体誰のためのものか?

 もちろんそれは京都人全員のものだが、何よりも、そこに訪れ、街を楽しむ人々のものである。彼らは四条通りに「歩いて」訪れ、買い物をしたり食事をしたりしながらその賑わいを楽しむ。

ただし同時に、四条通りはそれを「道路」とみなして「通過」するドライバーのものでもある。とはいえ彼らは沿道の店をじっくりと眺めることも、賑わいを楽しむこともない――。

 つまり「歩く」人々にとっては四条通はその賑わいを楽しみ満喫する「空間」である一方で、ドライバ-にとっては単なる「無機的な道路」に過ぎないのである。

 しかも、「四条通りに歩いて訪れる人々」は、(手元のデータから推察すれば)昼間おおよそ最低六万人。一方で「四条通を通過する自動車台数」は、昼間でその2割程度の約一万台強。だとすると四条通りは、一体誰の事を思いやりながら「しつらえ」ていくべきかと言えば――「数」から言っても「来訪の質」から言っても、「自動車」よりも「歩く人」をできるだけ「優先」していくのは「当たり前」の話なのである。

 この度ようやく、四条通りはそんな「当たり前」の方向でその「しつらえ」が変えられることになった。

歩道が広げられ狭い空間に押し込められていた歩行者はゆとりを持って歩くことができるようになった。一方で自動車は、工事が始められた当初でこそ混乱したものの、データを見れば既にその混乱はほぼ収まっている。ドライバー達は皆、の四条通りの「歩行者のため」の変化を理解し、その利用を遠慮しはじめたのだ。結果、今となってはほとんどかつてと変わらぬ時間で四条を通過できるようになっている。

 つまりこの度の四条の「しつらえ」の大転換は、自動車をほとんど混乱させないままに、四条利用者の大多数を占める「歩く人々」に、より豊かで良質な時間と空間を提供することに成功したのである。

 つい先日、うちの家内の母もそれと知らずに四条を訪れ、そのゆったりとした歩行空間に驚き、大変満足して帰ってきた。同じように新しい四条通りをまだ「歩いて」いない方は是非ゆっくりと訪れてみて欲しい。きっとそこで皆さんは母と同じく、想像もしていなかった「歩いて楽しい街の空間」を発見するのではないかと、思う。

・・・・

以上、この取り組みの趣旨をご理解いただけましたでしょうか?

ただし、この工事が始められた今年の春先には、産経などの新聞メディアでは

「世紀の愚策」

とまで言われ、大きな反発が生じていました。

例えば、http://www.sankei.com/west/news/150607/wst1506070010-n1.html

確かに、工事が始められた春先の一時期、道路が混雑したのは事実ですし、何らかの問題が生ずればそれに対する批判に耳を傾け、対策を図っていく姿勢を保ち続けることは必要不可欠ですが……今やそうした激しい渋滞は観測されていません(ネット上にそうしたデータは転がっていないようですが、そういう調査データがあることは確かです)。

繰り返しますが、
  四条通を使うクルマの交通量

  四条通りを使う歩行者の交通量
を比べると圧倒的に歩行者の方が多いのが実情です。

そして四条通が「歩きやすく」なったのは紛うことなき事実であり、しかも現時点では激しい混乱はみられていないのが実情ですから、こうした、
歩く人にやさしい道路空間の再配分
は、「世紀の愚策」というような評価は著しく不当であって、至って「当たり前の話」としか言いようがない……と考えます。

産経などのメディアは、構造改革や都構想、TPP等の公益を棄損する危険性が極めて高い「改革」はしばしば猛烈にプッシュする一方で、こうした都市空間の再配置、インフラに関わる「改善」については、どういうわけか、バッシングをする傾向が強いようです。

おそらく、世論に迎合するとそういう事になるのかもしれませんが、新聞メディアが勝手に世論を忖度(そんたく)してそんな報道を続ければ、まともなインフラ「改善」を阻害する世論が実際に作られてしまう事は事実です。

まったく困ったものです。

いずれにしても、こうした「モータリゼーションやグローバル資本主義から街を守る取り組み」は、グローバル企業のみならず、メディアや世論からの反発もあり、「街」側が大変厳しい状況に追い込まれているのですが、当方としても手の届く範囲で、今年のみならず来年もまた、イメージではない「適正な事実情報」をお伝えする発言を可能な限り続けていきたいと思います。

では、今年もいろいろとありましたが…..よいお年を!

—発行者より

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

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http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

[三橋実況中継]ショービジネス化する討論番組

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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【解説】
人口減少は大チャンス!?
https://youtu.be/To6OMrIABwI

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三橋も長年のファンである塩野七海さんが、「ギリシャ人の物語」の執筆を開始されました。第一巻「民主制のはじまり」が12月18日に刊行になりました。

「民主制のはじまり」の冒頭で、塩野さんが興味深いことを書いていらっしゃいます。

「それは、昨今とみに耳にすることが多くなった、民主主義とは何か、民主制下のリーダーはどうあるべきか、についての論争が発端になる。この問題を声高に論ずるのは、政治家とマスメディアと、メディアに登場すること頻繁ないわゆる有識者たち。
しばらく交き合っていた私もついに拒絶反応を起し、これについて論ずる新聞も雑誌も読まなくなり、テレビもチャンネルを変えるようになった。騒々しく論争しても有効な対案には少しも結びついていない、と思ったからである」

三橋は別に「有識者」というわけではありませんが、塩野さんの指摘はまことにその通りで、テレビというメディアは、例えば「民主制(民主主義ではなく)」という、政治の中心たるべきテーマに関する「議論」までをも、ショー・ビジネスと化してしまいます。

ショー・ビジネスと化した討論番組では、事実やデータに基づいた「議論」「見識」は無用の長物と化します。メディアあるいはその向こう側の「大衆」が求めているのは、自己の常識に収まる格闘なのです。

というわけで、三橋が、
「日本が財政破綻する可能性はない」
「日本は公共投資を減らし続け、すでに減らしすぎの状態」
「日本の輸出依存度は諸外国に比べると低い」
「生産年齢人口比率の低下は、生産性を向上させることで、むしろ経済成長を促す」
といった正論は、本来はメディアのショー・ビジネスにおいては「異端」なのでしょう。

無論、三橋はそんなことは百も承知で、「民主制」の日本の奇妙な言論空間の中で、状況を少しでも改善するべく奮闘しているわけでございます。とはいえ、三橋の試みが巧くいくかどうか、誰にも分かりません。

「それでも、やる」

という、もはや理屈とは無関係な「根性」こそが、もしかしたら社会をまともな方向に変えるのかもしれないと、淡い期待を頂いているわけでございます。

◆「月刊WiLL (ウィル) 2016年2月号」に、連載「反撃の経済学 橋の危機という需要」が掲載されました。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00KV37JR8/

◆ビジネス社「これからヤバイ世界経済-2016年を読み解く5つのポイント-」が刊行になりました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4828418571/

◆小学館「中国崩壊後の世界」が、早速、増刷になりました! ありがとうございます。
http://www.amazon.co.jp/dp/4098252465/

◆徳間書店「2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本」が増刷になりました! これで第3刷です。
http://www.amazon.co.jp/dp/4198640475/

◆週刊アサヒ芸能 連載「三橋貴明の列島丸わかり報告書」第五十回「TPPでデフレーションが悪化することを経済学者は認めない」
http://www.asagei.com/

◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第156回「スロー・トレード」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/

◆Klug連載 三橋貴明の「経済ニュースにはもうだまされない」 第337回 補正予算と新幹線
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2015/12/22/024993.php

◆有料メルマガ 週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~ 週刊三橋貴明 Vol344 人口と経済のスタビライザー
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
実は、日本の消費は人口減が続いているにも関わらず「減っていない」という事実をご存知でした?

◆メディア出演

さかき漣氏、平松禎史氏がチャンネル桜「夜桜亭日記」にご出演されましたので、ご紹介。
【夜桜亭日記】第13回、作家のさかき漣さんとアニメーターの平松禎史さんをお招きしました[桜H27/12/12]
https://youtu.be/x86XuTAwH8c

12月30日(水) 6時から文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/

1月1日(金) 9時からTOKYO MX「モーニングCROSS TOKYO MX正月スペシャル 」に出演します。
http://s.mxtv.jp/morning_cross/

1月2日(土) 9時から佐賀テレビ「原発 私たちの選択 ~エネルギー政策の行方~」に出演します。
http://www.sagatv.co.jp/

1月2日(土) チャンネル桜 日本よ、今…「闘論!倒論!討論!」 に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1587

12月23日 チャンネル桜「桜プロジェクト」に出演いたしました。
【反緊縮】デフレ脱却にはほど遠い安倍政権の経済政策[桜H27/12/23]
https://youtu.be/oG_Z3vAU_is
【明るい経済教室】安全保障と経済発展の融合、メガリージョン構想で真のナショナリズム醸成を[桜H27/12/23]
https://youtu.be/jJPYoLv_Ba0
【公的社会資本形成】新幹線整備事業をもっと国民的議論の俎上に[桜H27/12/23]
https://youtu.be/7I5kSWJZsbk
【新国立競技場】大成建設・隈研吾連合のA案に最終決定[桜H27/12/23]
https://youtu.be/02zK9N6Co0M

◆三橋経済塾

12月19日(土) 第十二回対面講義がアップされました。
http://members4.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=1279

三橋経済塾 2016年 第五期申し込み受付開始致しました。皆様からのお申込み、お待ちしております。
http://members5.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?page_id=38

◆チャンネルAJER 今週の更新はありません。

【おすすめ動画】
人口減少は大チャンス!?
https://youtu.be/To6OMrIABwI

【三橋貴明】TPPの新たな均衡状態に移行した時点?

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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【解説】

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

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さて、政府がTPPの「経済効果」を、いきなり四倍に引き上げました。

『TPP経済効果14兆円 政府試算、当初の4倍に
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF22H02_S5A221C1MM0000/
政府が取りまとめた環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に伴う経済効果の試算結果が22日分かった。輸出増加や企業の国境をまたいだ投資拡大で成長が加速し、国内総生産(GDP)を実質で14兆円弱(3%弱)押し上げる効果を見込む。24日に開くTPP対策本部で公表する。

政府がTPP交渉参加前の2013年3月に示した試算ではGDPの押し上げ効果を3.2兆円と見込んでいた。』

おはよう寺ちゃんでも語りましたが、試算効果以上に重要なのは「前提」です。上記の14兆円という試算は、一体、いかなる前提に基づいているのか。

つまりは、「いつ」日本のGDPが14兆円増えるのでしょうか。
というわけで、24日に上記記事の試算結果がリリースされたため、ご紹介。

【TPP協定の経済効果分析について(概要)】
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki01.pdf
【TPP協定の経済効果分析】
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki02.pdf

上記の分析報告ですが、驚くなかれ、「時期」「期間」を全く示していません。

一応、TPP批准後に、「一定の期間」を経て、「これまでの成長経路」から「新たな成長経路」に移行することは明記していますので、「時間軸」を意識していることになります。とはいえ、TPPによって、「いつ」GDPが増えるのか。

厳密に書くと、
「いつ、新たな均衡状態(成長経路)に移行するのか?」
は、明記していないのです。

新たな均衡状態とは、要するにTPPにより「潜在GDPの拡大」が終了した時点、という話になります。

つまりは、今回の分析報告は、
「TPPを批准すると、生産性向上によって潜在GDPが拡大し、いつか成長経路が新たな均衡状態に移行し、GDPが14兆円弱増えるでしょう」
という報告書になっているのです。

とりあえず突っ込んでおくと、日本のGDP拡大に最も好影響を与える日本製の自動車部品に課すアメリカの関税全廃が、協定発効から15年後となります。というわけで、上記の分析報告が正しいと仮定しても、我が国が「新たな均衡状態」に移行するのは、15年後以降という話になります。

さらに、上記の分析でも、TPPによるGDP拡大効果は「一度だけ」です。無論、「新たな均衡状態に移行」するためには、長期の時間を必要とするのですが、それでも増加するGDPは「14兆円弱」のみとなります。何を言いたいかといえば、TPPは、
「一年目14兆円、二年目14兆円+14兆円、三年目14兆円+14兆円+14兆円」
という形で、経済効果が積み上げられていくわけではないのです。

そもそも、現在の日本はデフレという需要不足に苦しめられています。その状況で、相も変らぬ潜在GDP拡大政策というわけで、政府の政策が「セイの法則」を前提にしていることが分かります。

その上、発表された試算は、
「批准から15年後以降のいつか、成長経路が新たな均衡状態に移行したとき、一度だけ、GDPを14兆円押し上げるよ」
というものなのでございます。

しかも、セイの法則を前提にしているため、そもそも現在の日本に適していないシミュレーションモデルとなっています。何しろ、
「潜在GDPを拡大すれば、絶対にGDPが増えるはずだ!」
と、過去何度も裏切られてきたモデルが前提なのです。

いずれにせよ、以前とは異なり、「新たな均衡状態」に移行する時期を明記していない分析報告書を受け、政府がTPP批准に向け露骨なプロパガンダを始めたと判断したわけでございます。

「日本の国の形を壊し、ナショナリズムを破壊するTPPに反対する!」に、ご賛同下さる方は、
↓このリンクをクリックを!
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

【三橋貴明】財政拡大に転じる中国

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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【解説】

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

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経済力とは「カネ」の話ではなく、国民の需要を満たすためにモノやサービスを生産する力、つまりは供給能力であると何度も書いてきました。

上記は、「需要」を「防衛」と設定すると、理解がしやすくなります。防衛という安全保障を強化するためには、例えば兵器の生産について「資源」から「兵器生産」「配備」「運用」までの防衛サービスのバリューチェーンを、可能な限り「自国で生産」する必要があるわけです。

中央銀行が返済不要な「負債」を計上することで、いくらでも発行できる「おカネ」が膨大にあったところで、弾薬すら生産できない国は防衛面の安全保障を成立させることはできません。

自国で生産しない以上、防衛という需要を満たすためには、外国の供給能力に依存せざるを得ません。ということは、兵器を供給してくれている国の機嫌を損ねるだけで、安全保障が成り立たなくなってしまいます。

防衛面の安全保障が崩れると、最終的には「国家」という共同体が維持不可能になります。兵器の生産を全面的に外国に頼っている国が、他国から軍事侵略された際に、「カネ」を積んだところでどうにもなりません。

最近の世界情勢を見ていると、上記の「経済力」の本質を最も理解している「度合いが強い」政府は、中国共産党のように思えてきます。

以前、習近平がアメリカで「構造改革」をやります、と宣言した際に、
「ぜひ、やってくれ!」
と、やったのは、日本の例からも分かる通り、バブル崩壊後に「構造改革」をやると、経済がデフレ化して国力が衰えていくためです。

というわけで、安倍総理や日本のマスコミにも、是非とも「中国の構造改革推進を煽ってほしい」と書いたのですが、現実は甘くないようです。

『中国が財政出動拡大で景気支援、金融政策より柔軟に
http://jp.reuters.com/article/chiha-economic-conference-idJPKBN0U415J20151221?sp=true
– 中国は、景気支援に向け、金融政策に柔軟性を持たせる一方、財政出動を拡大する。2016年の経済政策の優先課題を話し合う中央経済工作会議の決定事項を国営メディアが報じた。

発表された声明は「積極的な財政政策を強化し、穏健な金融政策を一段と柔軟にすることが必要」と表明。
財政赤字の比率を緩やかに引き上げるとともに、企業の負担軽減に向けた減税を行なうとした。
来年の成長率を「妥当な範囲」に維持するとしたが、詳細には言及しなかった。
政府はまた、インフラ向け支出を拡大するほか、低迷する不動産市場を下支えるため、住宅購入に伴う規制を緩和する。(後略)』

驚くべきことは、緊縮財政の「闇」が世界を覆っている状況で、「財政赤字の比率を引き上げる」と明言できることです。無論、中国の経済力強化という点では、正しい政策になります。

後略部では、
「「サプライサイドの改革」を推進し、過剰生産能力の削減や不動産の在庫の調整に取り組む」
とあり、これは構造改革です。が、同時に、
「政府はサプライサイドの改革を推進する一方、需要の押し上げに向けた措置を講じる」
と、単に構造改革で供給能力を削減するのではなく、需要も拡大すると報じられています。

「関係筋」によると、中国政府は、
「構造改革の断行には、一定の成長率の維持が必要」
と、恐らく日本の「失敗」を念頭に入れたレトリックを使っていますので、「経済力」の本質について理解している可能性が高いと考えるわけです。

これは、恐るべき事態です。

このまま日本が緊縮財政や構造改革に邁進し、経済力を弱体化していく反対側で、中国が財政赤字拡大や需要創出に乗り出す。両国の経済規模は、ますます開いていき、将来的に我が国が中国の属国と化す可能性が高まっていきます。

経済力とは「カネ」ではなく、モノやサービスを生産する力であるという「本質」と国民や政治家が理解しない限り、我が国の将来は暗澹たるものにならざるを得ません。

「日本政府は緊縮財政・構造改革路線を中止せよ!」に、ご賛同下さる方は、
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三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

【柴山桂太】クリスマスの不思議

From 柴山桂太@京都大学准教授

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2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

『月刊三橋』最新号はこちら
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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 クリスマスの風習は、日本社会にすっかり定着した感があります。クリスマスにはキリストの降誕祭という宗教行事としての側面と、サンタクロースが子供達にプレゼントを配り歩くという商業行事としての側面がありますが、日本で広まったのは言うまでもなく後者です。子供達は今晩、サンタクロースからのプレゼントを楽しみにしながら眠りにつくことでしょう。

 ものの本によると、クリスマス行事が日本に入って来たのは戦前から、サンタクロースの「神話」が全国的に広まったのは戦後からということのようです。もともとキリスト教国ではない日本で、クリスマスの宗教的意義が強調されることはありません。日本のクリスマスは、歳末を派手に騒いで過ごす商業イベントとして独自の展開を遂げてきました。

 もっとも、クリスマスの商業化は日本だけの現象ではありません。この風習の発祥地となった欧米でも、クリスマスはキリスト教のイベントというより、サンタクロースに象徴される消費社会のイベントとなりつつあるようです。

 特にアメリカでは、この時期の消費拡大が一年の景気を左右するほど、経済にとって重要な意味を持ちます。サンタクロースが頑張らないと景気が悪くなるというわけですから、この緋色の衣装に身を包んだ恰幅のよい老人は、キリスト教の司祭というより資本主義の司祭と考えるべきなのかもしれません。

 実際、敬虔なキリスト教徒からは、サンタクロースは異教的な存在と見なされることもあるようです。人類学者のレヴィ=ストロースは、一九五〇年代のフランスでカソリック教会がサンタクロースを火あぶりにした事例を伝えています(『サンタクロースの秘密』)。

 もちろん火あぶりにされたのは人形で、子供達をかどわかす異教の神を、象徴的に処罰したということのようです。これは当時も議論を呼んだそうですが、よく考えてみればキリスト教とサンタクロース崇拝の間には、埋めがたい溝があります。

 今日私たちがよく知っているクリスマスの風習は、キリスト教の教えに基づくものというより、ヨーロッパで古くから行われていた土着の祭り(冬至祭)を引き継ぐものです。一年でもっとも日照時間の短い時期、死の影が大地を覆うこの時期を、お祭り騒ぎでやり過ごす。元は数いる聖人の一人に過ぎなかった「聖ニコラウス」が、土着のお祭りと結びついて気前よくプレゼントを配る「サンタクロース」に姿を変えていった背景には、なかなか興味深いいきさつがあるようです。

 サンタクロースは、この冬至祭においてあの世とこの世をつなぐ象徴的な存在でした。同時に、現代社会においては、人々の消費を活気づける資本主義の司祭でもある。赤色の衣装に白ひげのサンタクロース像を決定づけたのはコカコーラ社のポスターだと言われますが、コカコーラ社がこの有名な宣伝を打ったのは一九三〇年代。つまり大恐慌まっただ中の時期です。サンタクロースは単なる冬ではなく、資本主義の冬が生み出した異形の神なのかもしれません。

 いずれにせよクリスマスは、単なるキリスト教の祭日というには収まらないものに変貌を遂げています。ヨーロッパの土着宗教とキリスト教が結びつき、後に資本主義によって変形されて世界中に広まった、実に不思議な現代のお祭りなのです。

—発行者より

2015年、世界はまさに激動の年となった。中東問題はフランス・パリでの同時多発テロやトルコ軍機によるロシア軍機撃墜にまで至った。また、南沙諸島では中国による人口島の埋め立てに対し、アメリカが自由航行権を主張すべく、米軍機を飛行させた。ウクライナ問題は解決の糸口さえ見えない。さらには、シリア情勢を受け、EU諸国へ大量の難民が流入している。

こうした世界情勢の中、各国経済はこぞって低調。なかでも、これまで世界経済牽引の一翼を担っていたように見えた中国経済が、著しく失速している。2016年の世界はどうなるのか。そして、日本にはどのような影響があるのか。

三橋貴明が2016年の世界と日本を語る、、、

『月刊三橋』最新号はこちら
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

【佐藤健志】未来は誰の手の中に

From 佐藤健志

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【YouTube】

前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
https://youtu.be/0YFk1KbdpQA

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

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まずはご報告から。
おかげさまで先週、無事に退院しました。

そろそろ夏も終わりだな・・・と思っていたら、いきなり年末になってしまった感じですね。

今回の事故は、振りかえればかなり大変なものでした。
発生直後には「最悪の場合は左足切断もありうる」という話まで出ましたし、皮膚移植手術の必要性にいたっては、ずいぶん後まで取り沙汰されていたのです。
それが皮膚移植もせず、自分の足で歩いて退院するところまでこぎつけられたのですから、幸運だったとすべきでしょう。

リハビリは続きますし、傷も完全に治ったわけではありませんが、とりあえず2015年はハッピーエンドで締めくくることができました。
それはさておき。

三ヶ月あまりの入院期間中、世の中もずいぶん変わった印象を受けます。
安保法制の成立(9月)をはじめ、TPPの大筋合意(10月)、大阪のダブル選挙(11月)などなど。
「一億総活躍(社会)」みたいに、突如として鳴り物入りで出てきたあげく、すでに忘れられかけている(としか思えません)ものもありますね。

さらに原節子さん、水木しげるさん、野坂昭如さんといった、昭和後半期を彩った方々が相次いで逝去。
今年は敗戦70年の節目でもありましたが、いろいろな意味で、時代がターニング・ポイントに来ているようです。

ただし新たな時代が良いものになるかどうかは、正直言って疑問。
いや、いささか悲観的にならざるをえないとすべきかも知れません。

本紙読者のみなさんならご存じのとおり、成長や繁栄を達成するポテンシャルなら、わが国はまだ十分持っている。
けれども、ポテンシャルを積極的に活かす政策が取られているか?
あるいは、そのような政策が今後取られる見込みはあるか?
ここに問題があるわけです。

藤井聡さんも『〈凡庸〉という悪魔 21世紀の全体主義』の終わり近くで、次のような警告を発しました。

このままでは我が国は、かつての栄光など微塵(みじん)も感じさせないほどの、何の国力もない、どんな生産品もサービスも文化も芸術も、そして自らの歴史すらも何も産み出すことのできない、衰弱しきった、陳腐で凡庸でつまらない国家に成り下がることになるのは必定です。
(262ページ。表記を一部変更)

だとしても、あきらめるしかないと言いたいのではありません。
藤井さん自身、公式サイト「サトシフジイドットコム」では、「未だに,未来は僕らの手の中、にあるということを決して忘れてはならない、と考えます」と述べています。
http://satoshi-fujii.com/151122-3/

「未来は僕らの手の中」とは、具体的にどういうことか。
字面を見ると、未来のあり方を自分たちで自由に決められるような感じがしますが、私はそうは思いません。
それでは話がうますぎる。

むしろこれは、
「未来は誰の手の中にもない」
という意味ではないでしょうか?

現在の時点で判断するかぎり、未来は特定の方向へと確実に進むように見えるかも知れない。
あるいは特定の勢力が、未来を握ったように見えるかも知れない。
しかし、それはたいがい錯覚なのです。

未来の本質は、〈良くも悪くも、どうなるか分からない〉こと。
20〜30年前、日本で貧困がここまで社会問題化すると想像できた人は、ほとんどいなかったでしょう。
いや、そもそも日本が(少なくとも一度は)世界的な経済大国になることだって、独立回復直後には想像もつかなかったに違いない。
わが国が独立を取り戻したのは1952年ですから、経済大国と目されるまで、やはり20年〜30年ぐらいしか経過していないのですがね。

未来は誰の手の中にもない。
せっかくのポテンシャルが活用されずに失われることだってあれば、思いがけないポテンシャルが目覚めることだってある。

パラドックス的な言い方になりますが、だからこそ「未来は僕らの手の中」なのです!

誰の手の中にもなく、どうなるか分からないがゆえに、未来を変えるチャンスは、変えようとする意思があるかぎり、誰もが平等に持っている。
チャンスが活かされる保証はありませんよ。
しかし、チャンスはそこにあるのです。

関連して、今回の事故をめぐる経験をご紹介しましょう。
救急車で病院に搬送され、創外固定(折れた骨がずれないよう、足に金属の枠をはめること)をしてもらっているときだと思うのですが、私は自分の意識が身体を離れて、何もない空間に入り込んだように感じました。

下の方では、何やら金属音が聞こえます。
創外固定が行われていたのでしょう。

私は自分が、〈この世〉と〈あの世〉の中継点にいるのだと思いました。
こちら側にとどまるのか、向こう側に行くのか、ちょうど今、自分を超えたところで判定されているのだろう、と。
判定が出るまで、どれくらい待たされるのかな。永遠に待つことにはならないだろうな。
そんなことが気になったあたりで意識が途切れます。

・・・目が覚めたのは固定が済んだあとで、医師から「命に別条はないし、折れた骨もずれないようにしておいた」と告げられました。
いわゆる「臨死体験」にあたるかどうかはともかく、あのとき、未来は私の手の中になかったのかも知れません。

とはいえ私の未来が、どこまで医師たちの手の中にあったかも分からない。
万全の処置をしても、うまく行くかどうかは患者の気力や体力次第というところがありますからね。
とまれこの夜、未来は私のもとに戻ってきてくれました。
それが三ヶ月後のハッピーエンドにつながった次第。

未来は誰の手の中にもなく、ゆえに僕らの手の中。
今後はこれを信条に活動してゆくつもりです。

なお12/30と1/6は、年末年始のためお休みします。
1/13にまたお会いしましょう。
みなさん、良いお年を!

<佐藤健志からのお知らせ>
1)12月16日発売の「表現者」(64号)に、評論「内と外の境界を守れ」が掲載されました。

2)未来同様、「愛国」や「保守」もパラドックスに包まれています。これを受け入れるところから始めねばなりません。

「愛国のパラドックス 『右か左か』の時代は終わった」(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)

3)戦後日本が、どのような未来をつかもうとしていたかはこちらを。

「僕たちは戦後史を知らない 日本の『敗戦』は4回繰り返された」(祥伝社)
http://amzn.to/1lXtYQM

4)「経済も学問・文化もすべてパアにしてしまえば、国家はいったいどうなる? (中略)そんな国には何もないし、未来への展望も望みえない」(113ページ)
藤井さんの警告と妙に似ていませんか。

「〈新訳〉フランス革命の省察 『保守主義の父』かく語りき」(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)

5)1776年の建国当時、アメリカがどんな未来をつかもうとしたかのマニフェストです。

「コモン・センス完全版 アメリカを生んだ『過激な聖書』」(PHP研究所)
http://amzn.to/1lXtL07(紙版)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)

6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

—メルマガ発行者よりおすすめ—
【YouTube】
三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

【藤井聡】「詭弁」(ウソ話)こそが、敵の真の正体です。

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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【YouTube】

前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
https://youtu.be/0YFk1KbdpQA

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橋下氏が先週18日に、大阪市長を退任されました。

この退任は、本年の5月17日の都構想の住民投票に「政治生命」をかけ、「都構想に敗れれば政治家を辞する」という投票運動をしかけたにも関わらず、住民投票に「敗れた」ことが原因です。つまり、かの住民投票は、「大阪市を存続させる」のみならず「橋下氏の市長退任(政治家退任)を導いた」ものでもあったわけです。

さて、筆者はこれまで、都構想等をめぐる橋下氏の言説の多くが、

「詭弁」

に塗れたものである、そして、詭弁に基づく政治は断じて許してはならない、という趣旨の批判を、例えば、

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/10/fujii-131/

http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/02/17/fujii-132/
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151103/

等で論じて参りました。

そもそも「詭弁」とは、広辞苑によれば、

「一見もっともらしい推論(ないしはその結論)で、何らかの虚偽を含むと疑われるもの。相手をあざむいたり、困らせる議論の中で使われる。」
というものです。筆者は橋下元市長の言説に対する批判を通して、通常では決して得る事のできない「詭弁」について深く考える機会をたっぷりと頂くことができました。

そして橋下氏が市長を退任し、都構想や大阪の行政改革に対する批判よりもむしろ、より包括的な新自由主義者や緊縮論者達の言説に批判を加えようとして、「驚くべき事実を」改めて深く認識する様になりました。

それは、彼らの言説は、我々と見解が異なる方々の意見などではなく、ただ単に「何らかの虚偽を含む言説」すなわち、

「詭弁」

に過ぎなかった、という事実でした。

(たとえば、こちら
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/728709473896665?pnref=story

その典型例として、まずは下記文章を確認ください。

「日本は貿易立国であり,今やグローバリゼーション・自由貿易が世界の潮流となっている.しかも,少子高齢化で内需の拡大は望めないため,日本が経済成長するには外に打って出るしかないのである.つまり,国際 競争で勝ち抜くためにTPPなど自由貿易協定の締結を 急ぎ,輸出に不利な円高に対して政府・日銀は手を尽くさねばならないし,法人減税や規制緩和など企業の競争 力を高めることも必要である.また景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く,不用意に無駄な投資 を続けた結果,借金だけが膨れ上がってしまった.増え続ける社会保障関連の出費もかさみ,日本の財政状況は 先進国最悪であり,破綻はすぐそこに迫っている.社会保障費や復興費用を賄い,財政再建を果たすには消費税をはじめとした増税は避けられない.さらに,長年悩まされているデフレ脱却のためにも,新たな成長戦略による景気の好転を期待したい.」

これは、「新自由主義」の平均的な言説をとりまとめたものです。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/institute_paper/2012_06_haru/tanaka.pdf

この言説の一つ一つを、それが詭弁か否かと言う視点でチェックしていきますと、驚くべきことに、そのほとんどすべてが詭弁である、という事実が浮かび上がってまいります。

以下、一つずつ確認していきましょう(ただし下記文章は少々難解かもしれませんので、読みづらいとお感じの方は、「――囲み」の下の文章まで読み飛ばしください)。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「日本は貿易立国であり」
⇒この文章では、「貿易立国」の定義が曖昧で、何を意味するのかが不明である。その一方で、この言葉は、貿易によって日本経済が成長したという印象を与え得るものである。したがって、この文章は実際上は「何も語っていない」にも関わらず、「特定の印象を与える」ことが可能となっている。これは、曖昧な言葉を使いながら特定の印象操作を図る詭弁である「語彙曖昧の詭弁」と呼ばれるものである。

「少子高齢化で内需の拡大は望めない」
⇒「少子高齢化で内需の拡大は望めない」と断定されているが、少子高齢化でも内需が拡大できることは自明である。それ故、これは、「因果関係誤認の虚偽」と呼ばれる詭弁である(誤った因果関係を根拠に結論付ける詭弁)。しかも、「少子高齢化であれば内需拡大は100%できない」という趣旨となっているが、これは、「全称の誤用」と呼ばれる詭弁でもある(「全て」がそうであるとは言え「ない」ことを、「全て」がそうだと主張する詭弁)。
 なお上述のように「内需の拡大は望めない」という主張の「根拠」が「詭弁」であるため、「日本が経済成長するには外に打って出るしかない」という主張もまた正当ではない。

 しかも、こうした理由で「日本が経済成長するには外に打って出るしかない」という主張が正当でないが故に、その帰結として語られる「TPPを急ぐべし」「法人減税や規制緩和など企業の競争力を高めることも必要」という主張それ自身も、必ずしも正当ではない。
 つまり、論理を語るにおいて、その根拠となる「一事」だけについて「さらり」と詭弁を弄し、それがさも正当であるということにしておけば、その「一事」から「正当に演繹できる言説」をすべてが、(仮に不当なものであっても)「正当」であると印象付けることに成功するのである。ここで重要なのは、その「一事から、それら言説を演繹する論理は全て正当である」という点である。この特徴故に、そうした言説は極めて尤もらしく見えてしまう。しかし、その前提それ自身が「ウソ」であるので、そこからの論理がどれだけ正当であっても、そこで論じられる全ての主張は、全体として完全なる「ウソ」話に過ぎない。なお、今日の多くの「経済学論文」は、この意味に於いて「完全なるウソ話」に過ぎないのであるが、それが、経済学会の権威、経済学者の権威によって隠ぺいされ続けているのが、実態である。

「景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く,不用意に無駄な投資 を続けた結果,借金だけが膨れ上がってしまった.」
⇒公共事業の景気対策としての有効性は、実に様々な研究で実証的に示され続けている。にも関わらず、「景気対策として推し進めてきた公共事業は効果が薄く」と断定されている。あるいは、「不用意に無駄な投資 を続けた」という点も特に根拠なく断定されており、かつ、そのせいで「借金だけが膨れ上がった」という事も断定されている。
こうした特定の施作や主張に対する「ネガティブな主張」は、仮にその根拠が不在でも、多くの人々は「火の無い所に煙は立たず」と認識することから、そのまま受け入れてしまう。これは、煙の無い所に無理やりに煙が立っているかのように喧伝することで、多くの人々がそこに「火」があると勘違いさせるタイプの詭弁である「幻法水煙」の詭弁と呼ばれるものである。これはいわば、「濡れ衣を着せて、評判を貶める」というタイプの詭弁である。

 同様の「幻法水煙」の詭弁は、「日本の財政状況は先進国で最悪であり,破綻はすぐそこに迫っている.」という言説にも当てはまる。そもそも、日銀がこれだけ強力に金融緩和を推し進めている状況で政府が「すぐに破綻する」とは到底考えられず、これもまた「濡れ衣」の類である。しかも、「日本の財政状況は先進国で最悪である」からといって「破綻はすぐそこ」とは結論づける事は不可能である。前者と後者の主張は因果関係的つながりは存在しないのであり、それ故これは、「因果関係誤認の虚偽」でもある。しかも、「破綻」という言葉の定義が不明瞭である一方で、この言葉を使えば日本の財政に対してネガティブな印象操作を可能とするものであるから、その点に於いてこれは「語彙曖昧の虚偽」でもある。

「財政再建を果たすには消費税 をはじめとした増税は避けられない.」
 ⇒経済成長ができるなら、増税をせずとも財政再建が可能であることは、改めて論ずるまでも無く明白な事実である。それ故、増税のみが財政再建を果たすと主張することは、明白な「虚偽」である。つまり「ウソ」としか言い様のないものである。こうした単なる「ウソ」は「詭弁」とすら言いがたいものであるが、あえてこれを何らかの詭弁に分類するとするなら、「大衆にウソに基づいて訴えかける」という「大衆に訴える論証」と解釈することも可能である。
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以上、少々難しい内容だったかもしれませんが―――とにかく上記の考察が意味しているのは、平均的な新自由主義の言説は、詭弁の観点から確認すれば、ほとんどすべてが「詭弁」に過ぎぬものなのだ、という点です(上記で詭弁と指摘した文章は、元々の文章の9割以上を占めています)。

そうである以上、大阪を席巻した都構想をめぐる言説も、日本、そして世界中を席巻している新自由主義的言説も、双方とも「詭弁」の類にしかすぎぬという点で、なんら相違するものではないのです。

そもそも繰り返しますが、詭弁とは要するに、(事実、あるいは、論理についての)

 「ウソ」

を意味します。だから、結局は、都構想をめぐる言論戦も、マクロ経済政策に関する言論戦も、後者の方が(国内外の大学教授や官僚、政治家達によって)「品よく」論じられているかのように思われるかもしれませんが、よくよく吟味すれば、双方が詭弁である限りにおいて結局は五十歩百歩のウソ話にしか過ぎなかったのだ、という次第です。

したがってそれは、それらの言論戦はもう既に「論争」ですらなく、単に「ウソを暴くことができるか否か」あるいは「ウソであるという正当な認識を広めることができるか否か」という戦いとなっていることを意味します。

無論、そのウソをウソと理解できない方々は、こういう主張が不当なものであると感じ、感情的な反発を差し向けることでしょう。

そこがこの言論戦の特徴です。

それはさながら、得体の知れない新興宗教を信じている人々が陥っている「明らかな過ち」を、根拠を示しつつどれだけ粘り強く説得を続けても、得られるものは納得などではなく、単なる反発、さらには「憎悪」にしか過ぎないという構造となんら変わるものではありません。

もちろん、そうした説得が失敗しても、不幸になるのは彼等だけなら、放置するしかないということになるのですが―――統治制度や経済政策などの「政治」においてそのような「新興宗教まがい」の思い込みを放置し続ければ、我々は巻き添えを食らい、社会全体が大きな被害を被ってしまうのです。

したがって「政治」におけるウソと詭弁は、断じてならない――これが、2500年前のソクラテスの時代から引き継がれてきた常識中の常識なのですが、その常識が今、わが国において急速に失われつつあるのです。

――以上、本日は橋下氏の市長退任にあわせて感じたことをお話いたしました。要するに、我々が展開してきた言論戦の「真の敵」は、個人でも政党でも、さらには思想ですらなく、結局は、

「詭弁というウソ」

だったという次第です。
(※ ホント、「至誠」ってのは大切ですねw)

ではまた来週!

PS 「維新」や「改革」のウソにご関心の方は、是非一度、下記をご一読ください。
維新・改革の正体―日本をダメにした真犯人を捜せ

—メルマガ発行者より

【YouTube】

前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
https://youtu.be/0YFk1KbdpQA

【三橋貴明】安全保障強化と経済成長を同時に達成する方法

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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https://youtu.be/0YFk1KbdpQA

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【今週のNewsピックアップ】
新幹線の早期開通のために
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12106825966.html
インドの新幹線採用を受け
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12107540389.html

日本国民は今、日本列島に住む上で「基本的なこと」を理解する必要があります。

世界屈指の自然災害大国である日本では、国民ができるだけ「分散」して暮らし、大震災などの非常事態発生時には、互いに助け合わなければなりません。
我が国では、誰もが「被災者」になり得るのです。

そして、「助け合う」を実現するためには、各地方の国民が「経済力」を身に着けていなければなりません。ここで言う「経済力」とは、モノやサービスを生産する力(供給能力)の蓄積のことであり、おカネの話ではありません。

典型的な例を出しておくと、2013年2月の豪雪災害の際に、山梨県は衛星から見ると「真っ白」という状態になったにも関わらず、除雪車がほとんどありませんでした。すなわち、除雪の「供給能力」が存在しなかったのです
というわけで、新潟県から除雪のプロたちが除雪車を持って駆け付け、人々を救助しました。もし、山梨県の近隣に、除雪の供給能力が全く存在しなかった場合、どうなったでしょうか。

どうにもならなかった。というのが答えです。

というわけで、日本の各地域は互いに助け合うことを可能とするため、経済成長を実現し、供給能力を蓄積していかなければならないのです。
とはいえ、経済成長の早道は、市場規模を大規模化することです。東京圏は文句なしで世界一の大都市圏です。これほどまでに人口が集中し、市場規模が大きい以上、経済効率もまた世界有数(恐らくトップ)です。

すなわち、東京一極集中は「経済成長」のためには、むしろ望ましいのです。とはいえ、安全保障上は全く望ましくはありません。

日本国は、国民の分散による「安全保障強化」と、経済圏の集中と大規模化による「経済成長」を同時に実現する必要があることになります。
そんなことができるのでしょうか。何しろ「分散」と「集中」を同時に達成せよと言っているわけで、矛盾しているようにも思えます。

ところが、現実にはできるのです。

すなわち、新幹線に代表される高速鉄道により、「各地に分散した国民」を「短時間」で結びつけることができれば、分散による安全保障強化と、集中による経済効率の向上を同時に達成できます。
新幹線で短時間で長距離をモノやヒトが移動できるわけですから、離れて住んでいても、集まって住んでいるのと同然になるわけです。

上記を理解したとき、日本全国の新幹線「網」を整備していくことが、我が国にとってどれほど優先順位が高い課題であるかが理解できるはずです。

—メルマガ発行者よりおすすめ

【解説】
前代未聞!? 黒田日銀の転がる目標とは?
https://youtu.be/0YFk1KbdpQA