【三橋貴明】緊縮マシーンと化した財務官僚

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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【YouTube】

本当に経済学は経済を良くするのか?
https://youtu.be/T7qPdljmVfg

TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

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【今週のNewsピックアップ】
御用学者
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12099346650.html
ローリングターゲット?
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12099719897.html

藤井聡先生の講演で、ナチス・ドイツ親衛隊(SS)のアドルフ・アイヒマンが、自らの官僚としての「出世」のために「ユダヤ人問題の最終的解決」に尽力したと聞いたとき、正直、ピンときませんでした。理由は、三橋が官僚でもなければ、出世を目指しているわけでもないためだと思います。

とはいえ、その後、様々な事象を調査し、実例に触れていくうちに、現在の日本を蝕む「出世のための官僚の暴走」が、次第に理解できるようになってきました。

例えば、以前であれば農林水産省の官僚は、農協や農家のために「農協改革」「TPP」に立ち向かったはずです。ところが、現実には農林水産省の官僚までもが、農協改革やTPPを「推進する」事態に至っています。

なぜなのか。

2014年5月に約600人の省庁幹部人事を一元管理する「内閣人事局」が発足し、首相官邸の意向を幹部人事に反映される仕組みに変わりました。

中央官庁の場合、事務次官という事務方トップに就任することこそが、全ての官僚の目標になります。同期の中で事務次官という最高位にたどり着けるのは、基本的には一人だけです。

以前は、同期の中で「誰が事務次官になるか」について、ある程度のコンセンサスが採れていたとのことです。さすがに、何十年も同じ職場で働いていれば、同期の中で「彼(彼女)が最も優秀」として、あうんの呼吸で人事感が共有されていたのです。というわけで、同期の中で最も優秀と見做された「誰か」が、人事院の勧告などを通じて事務次官の職に「昇る」のが恒例だったのです。

ところが、2014年の第186回国会において、「国家公務員法等の一部を改正する法律」が可決、成立しました。さらに、同年5月30日に、事務次官を含む官僚人事の最終決定を行う内閣人事局が設置されます。
官僚の人事権は、同期の「コンセンサス」ではなく、内閣官房が握ることになったわけです。

そうなると、さあ大変です。これまでの「コンセンサス」方式では芽がないと思われていた官僚であっても、内閣官房の「覚えめでたい」状況になれば、事務次官の座を射止めるチャンスが生まれたのです。結果的に、一部の農林水産省の官僚たちが、官邸が推進する農協改革やTPPの実現に血眼をあげる始末になりました。

あるいは、財務省は「増税」や「政府の支出削減」を推進した人が、出世の階段を昇っていく構造になっています。何しろ、増税や政府支出削減を実現した「上司」が、人事の采配を握っているのです。

というわけで、財務省は(ある人物の言葉を借りると)「緊縮マシーン」と化し、緊縮以外の政策は「出世に響く」と忌避される組織文化になってしまっています。比べるのはどうかと思いますが、SSにおいて「効率的に最終的解決を実施した官僚」が出世の階段を昇っていき、官僚たちが思考停止的に「暴走的な悪」を成したのと、構造は全く同じだと思います。

当然、緊縮マシーンと化した財務官僚たちは、「世論」「民意」という壁を乗り越え、自らの出世を実現する緊縮財政を「達成」するため、御用学者を使い、世論形成を図ります。というわけで、日本国民は財務省発・御用学者経由の情報操作により、自ら望んで、

「増税もやむなし。政府も節約すべし」

という、デフレ期には間違った政策を支持するようになってしまっているわけです。

「出世」を活用し、官僚の思考を縛る緊縮マシーンに、一般の国民は立ち向かいようがあるのでしょか。とりあえず、「沈黙」することは、ナチスの勃興を許したかつてのドイツ国民と同じ態度になってしまうことは確実です。

上記の構造を国民が知ることで、あるいは情報として共有することで、物事が良い方向に変わるかも知れません。というわけで、皆様には現在の日本を縛る「官僚の出世」の問題について、是非とも拡散にご協力いただきたいのでございます。

PS
そして地方議員は党執行部に逆らえなくなっています、、、
詳しくはこちらをクリック
https://youtu.be/8GGn_ZgqiCA

[三橋実況中継]高度成長期の再来はあるのか

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三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
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1950年代からオイルショックまで、西側先進国は「人類として前例がない」急成長時代を経験しました。日本の高度成長期は、ドイツの「経済の奇跡」、フランスの「栄光の30年間」の時期に該当します。
当時の西側先進国の急成長は、総称として「黄金の四半世紀」と呼ばれたりしています。

とはいえ、高度成長期の各国の成長率には、やはり「差」がありました。50年代から70年代にかけ、日本の成長率は10%近い(しかも「実質」で)状況だったのですが、ドイツやフランスは6%前後、アメリカは4%程度でした。
すでに、世界最大の経済大国に成長していたアメリカはともかく、独仏両国の経済成長率が日本に及ばなかったのはなぜなのでしょうか。日本人と、独仏両国人の「能力」や「努力」の差なのでしょうか。そうは思いません。

データを見れば、日本と独仏両国の経済成長率の差が、「生産性向上の速度の違い」により発生したことが分かります。総人口や生産年齢人口、あるいは輸出の増加ではなく、「生産者一人当たりの生産の拡大」のスピードが違ったことが、三カ国の経済成長の速度に差をもたらしたのです。

それでは、なぜ日本の生産性向上速度が、独仏両国を上回ったのか。独仏両国は「外国移民」を受け入れ、インフレギャップを「労働投入量」を増やすことで埋めた。それに対し、日本はインフレギャップを「労働者」で埋めることができませんでした。高度成長期の日本は、完全雇用が成立していた上、近隣諸国から外国人労働者を受け入れることも不可能でした。

というわけで、日本は「生産者一人当たりの生産の拡大」すなわち生産性向上でインフレギャップを埋めるしか道がありませんでした。それが、幸いしたのです。
生産性が向上すると、「定義的に」国民が豊かになります。豊かになった国民は消費や投資という需要を増やすため、またもやインフレギャップ。

生産性向上によりギャップを埋めても埋めても、すぐにインフレギャップが生まれ、いつまで経っても生産性向上の努力を続けなければなりませんでした。そして、それが「正解」だったのです。
継続的な経済成長は、インフレギャップ下の生産性向上以外の理由では、まず起きません。そして、日本の高度成長期は、まさにインフレギャップ下の生産性向上により、独仏両国の二倍近い平均経済成長率を達成することができたのです。

この「史実」を前にしながら、あるいは現在の「移民国家・欧州」の混乱を目にしながら、未だに、
「人手不足を外国移民受入で解消を」
などと主張する愚かな日本人が後を絶たないわけです。この手の連中との「言論戦」に勝たない限り、我が国が再び継続的な経済成長路線を歩む日は訪れないように思えるわけです。

◆「月刊WiLL (ウィル) 2016年1月号」に連載「反撃の経済学 新・アベノミクス、三つの「的」」が掲載されました。
http://www.amazon.co.jp/dp/B017T4UUAY/

◆イエロージャーナルに「経済評論家・三橋貴明氏も呆れる「自民党有志」が「大企業の内部留保」に対して課税案」が掲載されました。
http://www.yellow-journal.jp/politics/yj-00000022/

◆小学館「中国崩壊後の世界」Amazon予約開始しました!
http://www.amazon.co.jp/dp/4098252465/

◆徳間書店「2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本」刊行となりました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4198640475/

◆ヒカルランド 「ドイツ第4帝国の支配と崩壊 亡国の新帝国主義(グローバリズム) 日本人に緊急警告!」発売中!
http://www.amazon.co.jp/dp/4864713170/

◆週刊アサヒ芸能 連載「三橋貴明の列島丸わかり報告書」第四十六回「「自由貿易」というレトリックで見える「帝国主義」の本質」
http://www.asagei.com/

◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第152回「緩やかな回復基調」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/

◆Klug連載 三橋貴明の「経済ニュースにはもうだまされない」 第333回 2016年
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2015/11/24/024845.php

◆有料メルマガ 週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~ 週刊三橋貴明 Vol340 三つのマネー
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
三つのマネーの増減を見れば、現在の日本に必要な正しいデフレ脱却策が何か、誰でも分かります。

◆メディア出演

※今週は三橋が台湾出張のため、「おはよう寺ちゃん」はお休みします。ご了承ください。

12月4日(金) 7時からTOKYO MX「モーニングCROSS」に出演します。
http://s.mxtv.jp/morning_cross/

◆三橋経済塾

11月21日(土) 第十一回対面講義をアップしました。
http://members4.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=1246
ゲスト講師は柴山桂太先生(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)でした。

◆チャンネルAJER 
今週の更新はありません。

【三橋貴明】甘利経財相「ここが正念場」

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本当に経済学は経済を良くするのか?
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TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
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総務省が11月17日に発表した10月の家計調査によると、2人以上世帯の実質消費は対前年比▲2.4%に終わりました。実質的に、モノやサービスを購入できなくなっている。日本国民の貧困化が続きます。

また、10月の勤労者世帯の実収入は、1世帯当たり48万5330円となり、実質前年比で▲0.9%。まずいことに、実質のみならず、名目でも対前年比▲0.6%となってしまっています。
日本国民は、14年4月の消費税増税で、実質賃金を一気に引き下げられました。当然、実質消費も大幅にマイナス。
その14年と比べてすら、15年の日本国民は実質の所得や消費を減らしている(減っている)という話です。

【日本の実質消費(二人以上の世帯)の推移(対前年比%)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_51.html#JCON10

2014年10月の実質消費は、対前年比▲4.0%と、悲惨な数値に終わりました。その14年10月と比べてすら、15年10月の実質消費は▲2.4%となってしまったのです。

まさに、奈落という表現がぴったりです。

『甘利経財相、実質消費支出の低迷「正念場になっている」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL27HBX_X21C15A1000000/
甘利明経済財政・再生相は27日午前の閣議後の記者会見で、同日に総務省が発表した10月の家計調査で実質消費支出がマイナスとなったことについて「ここが正念場になっているのだと思う」と話した。失業率などの指標が改善している中での減少に「良い状況が整いながら、いまひとつ将来に対する消費者の自信が持てないところ」との見方を示した。
今後はアベノミクスの恩恵を受けていない人にも安心感を与えて消費を底上げするなど「しっかりと経済を回していく要素に活力を投入して、成長へと結びつけていきたい」と話した。』

今度は「正念場」「安心感」ですか・・・。

この手の抽象用語で政治家や官僚が「乗り切ろう」としている以上、我が国が「国民が豊かになる日本」を取り戻せる日は訪れないでしょう。

経営者は100%同意してくれるでしょうが、我々が安心して投資を増やせる環境とは、
「仕事が溢れている環境」
になります。

目の前に手に余るほどの仕事があり、しかも継続的に増えていくことが期待されて初めて、経営者はおカネを借りてでも設備投資を増やしていきます。

消費者も同じです。
消費者が安心して消費を増やせる環境とは、
「雇用が安定し、所得が継続的に増えていく環境」
になります。

現在、十分な所得を稼いでおり、しかも継続的に仕事を続けられることが確実になって初めて、消費者は「安心して」消費を増やしていくことになります。消費者は「生産者」でもあるのです。

ところが、安倍政権は口先では「消費者に安心感を」などといいつつ、労働者派遣法改正、外国人労働者受け入れ拡大等、雇用を不安定化させ、生産者の実質賃金を引き下げる政策ばかりを推進しています。

挙句の果てに「一億総活躍」ときたものです・・・。すなわち、一億人が生産者として活躍できるよう、労働市場に日本人を投入していくという話なのでしょうが、当たり前ですが需要が不十分な状況で労働者の投入ばかりを増やせば、実質賃金は下がり、雇用は不安定化します。

安倍政権は自ら「生産者=消費者」の自信を奪い、不安感を高めておきながら、「消費者に安心感を」などと適当なことを言っているわけです。

結局、甘利大臣や安倍総理を含め、現在の安倍内閣の閣僚たちは「経済」を理解していません。あるいは「理解していないふりをしている」のです。 

実質消費を高めるには、実質賃金を拡大する必要があるという基本的なことすら理解しておらず、「安心感」「自信」といった抽象的な用語で説明しようとするわけです。

ちなみに、甘利大臣は「良い状況が整いながら」などと、例により抽象的でよくわからない表現をしていますが、消費者にとって「良い状況」とは、生産者として「実質賃金が上昇し、雇用が安定化する環境」を意味するのです。

「消費者」の消費を増やすためには、「生産者」の実質賃金上昇と雇用安定化が不可欠である。この基本を、政治家の頭の中に叩き込む必要があります。

「消費者にとっての良い状況とは、生産者として実質賃金が上昇する環境である」に、ご賛同下さる方は、
↓このリンクをクリックを!
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv.php

ドイツはいま、5つの難問に直面しているという。フォルクスワーゲンの排ガス不正問題、世界的なデフレ、ギリシャ問題、難民問題、ウクライナ問題。

ウクライナ問題はやや特殊な事柄ながら、他の4つの難問はほぼ根っこを同じくするという。それは「経済学」の間違いに由来するグローバリズムだ。ユーロがその最たるものだが、現在の経済学の主流派である新古典派経済学は、国境を越えて、人・モノ・お金の移動の自由化を強く要請している。

また、多くの経済学者たちは、各国の規制を撤廃することで経済は最適化され、発展していくと言う。しかし、ユーロ圏、EU諸国を見る限り、経済発展どころか、勝ち組であるはずのドイツが経済的な難問を抱える結果となっている。

いったい、なぜこんなことになっているのか。

「グローバリズムは現代の帝国主義だ」と主張する三橋貴明が、ドイツが難問を抱えることになった背景、経済学の間違い、そしてグローバリズムという名の「新帝国主義」について詳しく解説する。
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv.php

【三橋貴明】EUの国境閉鎖とユーロの関係

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さて、EU・ユーロという「ドイツ第四帝国」が大きく揺らいでいます。

理由は、ドイツ第四帝国の基盤たる思想である「グローバリズム」の内、特に「ヒトの国境を越えた移動の自由」が難民問題やISIL問題で維持不可能になりつつあるためです。

『シェンゲン協定崩壊にEUが警鐘、「ユーロは意味を失う」
http://jp.reuters.com/article/2015/11/26/juncker-euro-at-risk-idJPKBN0TE27C20151126
欧州委員会のユンケル委員長は25日、欧州26カ国が締結する国境検査なしで自由に往来できる「シェンゲン協定」について、一部締結国が押し寄せる難民対策の一環として国境審査を再導入すれば、単一通貨ユーロを含む欧州連合(EU)の構造に政治的な影響が及ぶとの認識を示した。

同委員長は欧州議会で「シェンゲン協定は欧州の構造の土台の1つである」とし、「同協定が崩壊すれば単一通貨ユーロは意味を持たなくなる」と警告。

そのうえで「シェンゲン協定は『こん睡状態』にある」とし、「欧州の価値、原則、自由を信頼するなら、同協定の精神の蘇生に向け努力しなければならない」と述べた。

シェンゲン協定はEU加盟国のうち22カ国が締結。残りの4カ国はEU非加盟国となっており、19カ国で形成されるユーロ圏とは法的枠組みが異なる。(後略)』

ユンケル委員長が、ヒトの移動の自由を意味するシェンゲン協定を破棄し、各国が国境審査を再導入すると、ユーロに政治的な影響が及ぶとの認識を示しました。今一つ、意味が分かりません。

何しろ、アイルランドはユーロ加盟国でありながら、シェンゲン協定は批准していないのです。シェンゲン協定は、ユーロ加盟の必要条件にはなっていません。

ドイツのメルケル首相は、自らの、
「政治難民受け入れの上限はない!」
という大見えが、現在の問題の主因の一つになっており、今年だけでドイツに150万人もの移民・難民の流入が予想されているにも関わらず(いや、だからこそ)、ドイツの難民受入数の制限を求める保守勢力からの高まる圧力を一蹴。EU諸国が国境を制御できない以上、、難民流入を抑制しようとするドイツの試みは無意味だと主張しました。

いや、そもそもドイツが「無制限」に難民を受け入れる印象を(メルケル発言含め)世界に与えてしまったからこそ、EU諸国の国境が大混乱に陥っているわけでございます。もっとも、ドイルが難民受入の制限を始めると、東欧諸国が続々と国境閉鎖の措置を採っていくことになり、シェンゲン協定は終わります。

とはいえ、だからといって「ユーロ」が意味を失うとは思えません。(もちろん、わたくしはユーロに「経世済民」としての意味があるなどとは微塵も思っていませんが)

シェンゲン協定が終焉を迎え、ユーロが存続するヨーロッパは、どのような状況になるのでしょうか。

大恐慌期、アメリカの作家ジョン・スタインベックは困窮するアメリカ農民を描いた「怒りの葡萄」を書きました。スタインベックの小説をもとに、1940年に映画「怒りの葡萄」が制作されます。

映画「怒りの葡萄」において、オクラホマを終われ、流民と化した主人公一家は、トラックに家財道具を乗せ、カルフォルニアを目指します。恐慌下で騒然としていた当時のアメリカでは、州境を超える際に厳格な「州境検査」が行われていました。
同じアメリカ国民であっても、「胡乱な輩」を自州に入れることを、各州民が拒んでいた時代だったのです。

とはいえ、州境検査が厳しかったとはいえ、当たり前ですが当時のアメリカの通貨は「ドル」でした。すなわち、各州は「共通通貨ドル」を普通に使い続けていたわけです。

そう考えたとき、シェンゲン協定とユーロを結びつけるユンケル委員長は、奇妙に見えます。国境管理と共通通貨は、共存が可能なはずなのです。

結局のところ、ユンケル委員長の、
「シェンゲン協定は欧州の構造の土台の1つである」
の言葉通り、モノ、ヒト、カネという経営の三要素の国境を越えた移動を自由化する「グローバリズム」というEU・ユーロの教義が、現実には維持不可能であるという現実を認めたくないだけのような気がいたします。シェンゲン協定が破棄され、ヒトの移動の自由の制限が開催されると、「グローバリズムとして美しくない」という話なのだと思うのです。

もっとも、ハンガリーなどからしてみれば、
「美しいグローバリズムが、国民の安全や豊かさを守ってくれるのか?」 
という話になるわけです。

いずれにせよ、特定の「教義」「思想」「考え方」に固執した社会実験が、いかに国民を不幸にするか。あるいは、継続のために多大なコストを必要とする現実を、現在の欧州は我々に見せつけてくれているわけです。

「グローバリズムが国家を豊かにする」のか疑問を持った方は
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https://www.youtube.com/watch?v=eQUSqYvie2s

【三橋貴明】御用学者

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本当に経済学は経済を良くするのか?
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1999年、ある学者が「転換期の日本経済(岩波書店)」を刊行し、社会保障と財政について、以下の通り主張しました。

「社会保障制度の基本に立ち返りどのようなシステムを設計するかではなく、ともかく財政赤字を抑制するためには数字の上でどのようなことがなされなければならないか、という議論が先行してきた。そのために『国民負担率』をめぐる議論と同じように、社会保障を抑制しないと日本経済が『破局』をむかえるというプロパガンダが使われてきた」
 
すなわち、財務省が主導する緊縮財政路線を手厳しく批判し、「財政や社会保障の本質的な意義を思い出すべき」という主張でございます。

実に真っ当で、納得がいく主張でございます。大変残念なことに、16年後の今も、財務省を中心に「社会保障を抑制しないと日本経済が破局を迎える」といったプロパガンダが横行し、デフレ下の緊縮財政が継続しています。

結果的に、我が国は成長路線を取り戻すことができず、財政が悪化し、またもや社会保障の抑制、という悪循環が続いているわけです。

『2015年11月25日 読売新聞「診療報酬下げ攻防へ 16年度予算編成 10年ぶり切り込み焦点」
2016年度予算編成に向け、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は24日、15年度からの社会保障費の伸びを5000億円弱に抑えることを柱とする意見書を麻生財務相に提出した。財務省は医療機関に支払う診療報酬を引き下げ、財政再建を着実に進めたい考えだ。しかし、厚生労働省と強い政治力を持つ日本医師会は反発しており、激しい攻防戦が予想される。(中略)

政府は6月、20年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化させる財政健全化計画を閣議決定し、「集中改革期間」とした今後3年間で社会保障費の増加を1.5兆円程度に抑える目安を掲げた。16年度の伸びを5000億円弱に抑えるのは譲れない一線といえる。財政審の吉川洋会長(東大教授)は記者会見で、「最初が肝心だ」と強調した。(後略)』

代表的な御用学者と言っても過言ではない東京大学の吉川洋教授が会長を務める財政審が、ついに本命たる診療報酬の引き下げに動き出しました。つまりは、財務省が診療報酬削減に進み始めたということです。

冒頭の「ある学者」の言葉を、再掲します。

「社会保障制度の基本に立ち返りどのようなシステムを設計するかではなく、ともかく財政赤字を抑制するためには数字の上でどのようなことがなされなければならないか、という議論が先行してきた。そのために『国民負担率』をめぐる議論と同じように、社会保障を抑制しないと日本経済が『破局』をむかえるというプロパガンダが使われてきた」

まさに、社会保障制度の基本を無視し、日本財政破綻論という嘘のプロパガンダに則り、社会保障の抑制を進めようとしているのが、吉川洋教授率いる財政審の御用学者軍団というわけでございます。
 
さて、上記の実に真っ当な社会保障と財政に関する主張が掲載された「転換期の日本経済」を書いた人物が誰なのか、お分かりですね。

もちろん、東京大学の吉川洋教授です。すなわち、現在は財政審の会長を務め、社会保障の基本を無視した緊縮路線推進のために尽力を尽くしている、吉川洋教授その人なのです。
 
これが、日本の現実です。

学者たちが、財務省の緊縮路線を推進するため、平気で「真っ当な主張」を翻す。理由が権力なのか、名誉なのかは知りませんが、学者としての良心の欠片も持たない御用学者たちの存在こそが、我が国の病の象徴なのでございます。

このまま財務省の診療報酬削減路線が推進されると、我が国の医療サービスの質は下がらざるを得ません。すでにして、現場の医師たちは人手不足の中、過労に喘いでいます。

ちなみに、OECD諸国の人口1000人当たり医師数の平均は3人ですが、日本は2人です。しかも、日本の医師数は、高齢者や産休でお休みしている女医さんなどを全て含め、水増しした状況でOECD平均の三分の二なのです。実際には、OECD平均の半分強といったところではないでしょうか。

なぜ、こんなことになってしまったのか。まさしく、1999年の吉川教授が懸念していた通り、社会保障制度の基本を無視した緊縮財政路線が推進されてきたためです。

そして、16年後の2015年、その吉川教授が自らが手厳しく批判していた、社会保障制度の基本を無視した緊縮財政路線の先頭を走っています。これが「日本の現実」です。

腐っている・・・・。以外に、表現のしようがありません。

この手の御用学者が政界を跋扈している限り、我が国が「経世済民」を取り戻す日は訪れないでしょう。

「日本の現実」に、改めて愕然としてしまわれた方は、
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【佐藤健志】お涙頂戴はなぜ悪いか

From 佐藤健志

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前回、および前々回の記事で取り上げた「聖羅ちゃんツイート」に関し、ある方から面白いご意見をいただきました。

あらためて記しておけば「聖羅ちゃんツイート」とは、今年の夏、安保法制をめぐる反対デモが各地で開かれたことに関連したもの。
内容は以下の通りです。

【拡散希望】安保反対国会前デモに連れていかれた、
我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました。
あの嫁はゆるせません。
わたしたちは何度も聖羅を置いてくように話したのですが…。
聖羅は何度も何度も帰りたい、と母に泣いてたそうです。

これについては、じつは作り話だったことが判明しているのですが、前回記事ではツイートの論理構造に注目しました。
「炎天下、安保法制反対デモに無理やり連れてゆかれた孫が死んだ」ことは、かりに事実であれば同情を誘うものがある。
ついでにそれは「安保法制に反対する人々はひどい」ことを暗示しますので、間接的に同法制を肯定するニュアンスも持つ。

しかしお立ち会い。
このすべては、安保法制の良し悪しや必要性(の有無)について、何も証明してはいないのです!

チープなお涙頂戴に訴えることにより、理屈抜きで安保法制を正当化しようとしている、そう言われても仕方ないでしょう。
事実、「聖羅ちゃん」が安保法制賛成デモに連れてゆかれたことにするだけで、問題のツイートは法制反対を訴えるものになってしまいます。

・・・と、こう書いたわけですが。
寄せられたご意見は、こんな問題提起をしていました。
「聖羅ちゃんツイート」について、そのままでも安保法制反対のニュアンスを見出すことはできないか?

安保法制を国会で審議しなければ、反対デモが盛り上がることもなかったのだから、「聖羅ちゃん」の死をめぐる責任も、突き詰めれば現政権が負っていることになるのでは、というわけです。

残念ながらこの解釈、ツイートの文面に照らすと少々苦しい。
「あの嫁はゆるせません」と、ハッキリ書かれているからです。
嫁が安保法制反対派であることは、文脈から言って疑問の余地がない。

そして反対デモをやるにしても、炎天下、わざわざ子供を連れてゆかねばならない必然性はありません。
政府としても、そこまでの責任は負えないでしょう。

しかし、くだんの問題提起は別のレベルでは的確なもの。
かりに「聖羅ちゃんツイート」が、こんな内容だったらどうでしょう?

【拡散希望】安保反対国会前デモに参加した、
我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました。
あんな法案を審議するなんて許せません。
わたしたちは安倍総理が日本を良くすると期待していたのですが…。
聖羅は「へいわがすき」と、何度も何度も言っていました。

「聖羅ちゃん」が行ったのは、あいかわらず法制反対のデモですが、ツイートの趣旨はみごとに逆転していますね。
これこそ、お涙頂戴に訴えることの危険性。
引き合いに出した事柄と、主張したい結論との間に、論理的なつながりが存在しないので、話の持ってゆき方次第で、どんなことでも言えてしまうのです!

「聖羅ちゃんツイート」に限った話ではありませんよ。
10月28日の記事「正義感と自己欺瞞」で紹介した、SEALDsの某メンバーの発言を思い出してください。
いわく。

安倍首相は日本を〈美しい国〉、〈すべての女性が輝く社会〉、〈一億総活躍社会〉にしたいそうです。しかし現状はどうでしょうか。この国には、進学を諦めキャバクラで働き家族を養わなければならない十代の子がいます。

この国には、子どもの学費のために裏で自分の内臓を売り、生活をくいつなぐ母親がいます。この国には、何度も生活保護を申請したが拒否され、食べるものもなくやせ細り、命を失った女性がいます。この国には、ひとりぼっちで、誰にも看取られることなく、冬の寒空の下、路上で命を落としていく人々がいます。

やはりお涙頂戴ですが、話をこう続けたらどうなるか?

だから強い経済が必要なんです! そのためにすべきことは、構造改革とグローバル化の徹底です!
既得権益の否定、岩盤規制の打破、そしてTPPの早期批准! これらが達成されれば、放っておいても女性は輝きますし、一億総活躍もおのずと実現されるんです! 今、お話ししたような悲劇だって、すべて防げますよ!!

政権打倒も何もあったものじゃありませんね。
あるいは、こんな「戦争の語り部」トークはどうでしょう。

女学校時代、一番の仲良しだったA子さんが、
戦争末期、勤労動員で軍需工場に連れてゆかれ、
空襲で還らぬ人になってしまいました。
戦争は許せません。
私たちはいつも「平和がいいね」と話していたのですが…。
息を引き取る直前、A子さんは何度も何度も
「もっと生きたい」と涙を流して訴えていたそうです。

これだって、話の持ってゆき方次第では以下のようにできるんですよ。

女学校時代、一番の仲良しだったA子さんが、
戦争末期、勤労動員で軍需工場に連れてゆかれ、
空襲で還らぬ人になってしまいました。
アメリカは許せません。
私たちはいつも「勝つまで頑張ろう」と話していたのですが…。
息を引き取る直前、A子さんは何度も何度も
「仇(かたき)を取ってほしい」と涙を流して訴えていたそうです。
降伏したとたんアメリカに尻尾を振って、
70年たっても追従をやめないとは、まったく恥ずべきものです!

たまにはこんな語り部がいても悪くないとは思いますがね。

とまれ、お涙頂戴はなぜ悪いか?
ずばり、どんなことのダシにでも使えるからです。

そして前回も書いたとおり、物事をまともに考えようとせず、チープな感情に支配されたまま付和雷同することこそ、全体主義の始まり。
われわれの自由は、主体的な思考を続けることによってのみ保証されるのです。
ではでは♪

—メルマガ発行者よりおすすめ—
【YouTube】
三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

〈佐藤健志からのお知らせ〉
1)主体的な思考を放棄したら最後、保守も左翼も区別がつかなくなってしまいます。詳細はこちらを。
「愛国のパラドックス 『右か左か』の時代は終わった」(アスペクト)
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2)国家が全体としてチープな感情に支配され、興奮状態に陥ると、とんでもないことになるという警告です。
「〈新訳〉フランス革命の省察 『保守主義の父』かく語りき」(PHP研究所)
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3)戦後日本は付和雷同と無縁だったか? これも危なかったりするんですね。
「僕たちは戦後史を知らない 日本の『敗戦』は4回繰り返された」(祥伝社)
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4)いや、近代日本そのものが非論理性を抱えているのです。
「夢見られた近代」(NTT出版)
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5)アメリカ建国の原点にも、けっこうお涙頂戴の発想が見られるのですよ。
「コモン・センス完全版 アメリカを生んだ『過激な聖書』」(PHP研究所)
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6)そして、ブログとツイッターは以下の通りです。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

【藤井聡】大切な事(政治)でのウソを許さない空気を「保守」する戦いを

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授

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本当に経済学は経済を良くするのか?
https://youtu.be/T7qPdljmVfg

TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
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11月22日投開票の大阪ダブル選で,橋下維新側の二候補が,市長選,知事選の双方で勝利を収めました.

誠に遺憾ではありますが,この結果は「大阪の危機」に直結する結果であると同時に,日本の「自由主義政治の危機」にもまたつながり得るもの,です.なぜなら,橋下維新政治はウソと欺瞞に満ちた「ブラック・デモクラシー」という名の「全体主義」政治だからです.(詳細はこちらをご参照ください ⇒ http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/11/10/fujii-169/

「ブラック・デモクラシー」=「全体主義」政治とは,その最も典型的な事例は,第二次世界大戦のころのドイツで展開された政治です.

それは,大衆の潜在意識化の願望に応えるためだけにでっち上げられた「政治スローガン」がさも真実であるかのようなプロパガンダを繰り返して多数派を形成,議論や公正,正義の全てを度外視した「多数派のごり押し」であらゆる政治を進める――というブラックで邪悪な政治です.

この「全体主義」政治について,歴史学者(近代ドイツ史)である林健太郎氏が『ワイマル共和国』(中公新書)の最後で,次のように述べておられます.

「ドイツ国民は…決してすべてが無法者を好んでいたわけではない…。しかし彼らは目前の苦境に追われて、社会と人間の存立のために最も重要なものがなんであるかを認識することを忘れた.そしてそれを破壊するものが民主主義の制度を悪用してその力を伸ばそうとする時に、あらゆる手段をもってそれと闘わねばならぬということを知らなかった。それがヒトラーを成功させた最大の原因である」

政治哲学を学び,それに基づいていく冊もの書物を出版した当方としては,林氏が論じたこのドイツでの政治社会現象(全体主義現象)が,まさに今,大阪で起こっているものの正体であると考えています.

この林氏の言葉を,大阪に当てはめれば,そっくりそのまま,次のようになります.

「大阪の人々は…決してすべてが無法者を好んでいたわけではない…。しかし彼らは目前の苦境に追われて、社会と人間の存立のために最も重要なものがなんであるかを認識することを忘れた。そしてそれを破壊するものが民主主義の制度を悪用してその力を伸ばそうとする時に、あらゆる手段をもってそれと闘わねばならぬということを知らなかった。それが橋下維新を成功させた最大の原因である」

つまり橋下維新は,大阪の人々が関西の地盤沈下とデフレ不況のダブルパンチという「目前の苦境」状況であることにつけこみ,彼らのブラック・デモクラシーの「力を伸ばそう」として「民主主義の制度を悪用」しているという次第です.

もちろん「決してすべてが無法者(=橋下維新)を好んでいたわけではない」のは事実ですし,そういう方々が精いっぱい「闘った」こともまた間違いないでしょう.

しかし,実に数多くの大阪の人々が「社会と人間の存立のために最も重要なもの」を忘れ,「あらゆる手段をもってそれと闘」うことを忘れてしまったことも事実なのです.そしてその事実こそが,今回の維新の勝因の最大の原因である―――これが,上記の林氏のフレーズの趣旨です.

では,今回,数多くの大阪の人々が忘れてしまった,

「社会と人間の存立のために最も重要なもの」

とは一体何なのかと言えば――それを一言で言うならそれは,

  「大切な事柄での『ウソ』は許さない」

という態度です(もちろんこれは,人間が人間であるために求められる真摯な態度と言い換えることもできます).

そもそも,大切な事柄で人々がウソをつくことが当たり前になってしまったとしたら――私たちの社会は根底から瓦解してしまうのは必定です.社会というものは様々な「約束」で成り立っているのに,そんな約束を反故にするようなウソがまかり通れば,あらゆる秩序が崩壊することは避けられないのです.

そして今回の選挙結果は,多くの大阪の人々が「政治という最も大切な事柄についてのウソ」を

『許している』

ことを意味していると考えざるを得ません.

例えば,今回圧勝した橋下維新は,大阪都構想の先日の住民投票は「ラストチャンス!」と言っていたのに,今回再度公約に掲げていました.つまりと彼らのその「ラストチャンス!」という主張は「ウソだった」ということを,彼ら自身が認めているのです.にも関わらず,多くの有権者たちはこのウソを「許した」わけです.

あるいはそもそも大阪都構想で大阪に豊かになるという理性的根拠は存在していません.したがってそれで大阪を豊かにすると叫び続けることは「ウソ」ですし,「二重行政が問題だ!」という主張もまた実証的根拠を欠いた主張であり,それもまた「ウソ」にすぎません.こうした「ウソ」はいずれも様々な専門家によって明らかにされていたのですが(http://amzn.to/1GF42Us),それらのウソもまた全て不問に付されました.

あるいは,吉村次期市長は選挙運動の中で「大阪が伸び率ナンバーワンの経済成長をしている」と述べ,過去の維新政治をアピールしていましたが,これは明確に「ウソ」であることが知られていますし,
http://satoshi-fujii.com/151112-2/

同じく吉村氏は,都構想で「○○の住民サービスが下がると流布されているのは全てデマ。」だと断じているのですが,この主張それ自身もまた「デマ」であることもまた明らかにされています.
http://satoshi-fujii.com/151013/

さらには,松井知事は都構想の住民投票の投票運動の際,負ければ政治家を引退すると明言していたのに,このたび「しれっ」と立候補しました.これはつまり,かつての引退宣言がウソであったことを示しています.
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151103/

・・・

この様に,橋下維新政治は,政策についても政治プロセスについても,さらには政治家の「進退」についてまで明らかな「ウソ」をつき続けてきたのですが,こうしたウソは全て多くの有権者たちによって不問に付され,「許された」のです.
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151123-00010000-shincho-pol

つまり,大阪の多くの方々は,「大切な事柄での『ウソ』は許さない」という当たり前のことを「忘れて」しまったわけです.

――これは,大変に由々しき事態です.

政治でウソをつくことを有権者が許してしまえば,それこそ,政治家は,どんなブラックなことでもやり放題になってしまうからです.

もちろん「ウソをついているのは,橋下維新だけじゃない.政治家はしょっちゅうウソをついているじゃないか」としばしば耳にすることは事実です.

しかし,
「政治家がウソをつく」ということと,
「政治家がウソをつくことを許す」といこととは,根本的に異なるのです!

前者の場合はそういう政治家を糾弾すれば事足りるのですが,後者の場合は,それすらできなくなるのです!

それは犯罪がこの世に存在することと,犯罪者を無罪放免にしてしまう事とがまったく異なる,というのと同じです.

今回の選挙結果は,ウソをついていることが明白な有権者を,そうと知りながら多くの有権者たちが支持したのです.そうである以上,有権者たちは今,橋下維新が口にしている「公約」が守られる保証はないと覚悟しなければなりません.

例えば,橋下維新達の公約に反して,大阪都構想で大阪が豊かする,成長戦略で大阪を成長させると「明言」していますが,今回「だけ」それらがウソでないと信じられる根拠など,あるのでしょうか?

もちろん,その根拠について理性的に答えられる有権者は皆無でしょう.問い詰めても問い詰めても,最後の最後に出てくるのは「どうせ政治家なんて皆ウソをつくんだから」という程度の発言しかないでしょう.

ですから,少なくとも以上の分析に基づくなら,今回の選挙結果が大阪の未来を明るくするとは,残念ながら思えない――というのが筆者の見解(といより確信)なのです.

したがって,豊かな大阪を作りたいと考えるものは,この選挙結果を重く受け止めつつ,如何にすればウソと欺瞞に満ちた政治勢力による被害を最小化できるのかに,今日,この瞬間から全力で考えはじめ,動き続けなければなりません.

さらに言いますと,今回の選挙結果は,国政政党「おおさか維新の会」を通して橋下維新政治の「中央政治への拡大」をもたらすことも必定です.

第一に,東京の(国会,政府,官邸などを含む)政治諸勢力が,今後,橋下維新をこれまでよりも重視する傾向が高まることは決定的です.

そして第二に,これからの様々な選挙で橋下維新勢力が勢力を伸ばしていくこともまた,間違いないでしょう.

もしここで,一つでも橋下維新側が落としていたら「橋下維新も,もうこれまでかも」という空気が出来上がっていたとも考えられる一方,この二勝で「これからは維新が台頭するかも」という空気が醸成されることが予期されるからです.

(とりわけ,大阪と空気感が近い「兵庫」では,維新の台頭は目覚ましいものとなると危惧されます.ちなみにそうなれば,「常勝関西」を標榜する公明党の基盤が脅されることもあり得るでしょう)

これらを背景として,現在の「自公政権」が,「橋下維新」勢力と協調していく可能性も十分にでてくることになります(弱小勢力は無視すればそれで事足りますが,あなどり難い相手の場合には相手の言い分を飲んでいく傾向が高まるものです).

いずれにせよ,これらの展開は橋下維新による「ブラック・デモクラシー」がこれからいよいよ,大阪というローカルだけでなく,日本のど真ん中の東京で展開し始めることを意味しています.

それはつまり,ウソにまみれた政治が,日本の中央で始まることを意味しているのです.

より正確に言うのなら,小泉政権から始められた「ウソと欺瞞が許される政治」が,橋下維新により「完成」に向かうこととなるわけです.

そうなったとき,我が国の国益は首都直下地震や南海トラフ地震を遥かに上る水準で激しく棄損していくこととなることが,真剣に危惧されることとなります.

そうである以上,もはや今や,橋下維新と闘わなければならないのは,大阪の人々のみではなくなったのです.

つまり今回の選挙結果を受け,林氏が述べた「社会と人間の存立のために最も重要なもの」を守る戦いの戦場が,大阪から,日本の中央である東京へと拡大することとなったと考えざるを得ません.

勘の鋭い方々は,今回の選挙結果を受けてこうした戦線の拡大が生ずる懸念をすでに理解していることでしょう.しかしそうでない大半の日本国民はいまだ,事態がここに至ったことをほとんど理解していないでしょう.そしてむしろ,当方の指摘について「何を大げさな」と感ずることでしょう.

そうである以上,少なくとも本メルマガ読者だけは,その事態の展開を,大局的な視座から認識し,「社会と人間の存立のために最も重要なもの」(人としての真摯さ)を守るために,すなわち政治にてウソを「許さない」という空気を「保守」するために,一体何が求められているのかを,ぜひとも考え始めていただきたいと思います.

今回の選挙結果を受けてもなお,「未来は僕らの手の中」にあるのです.

筆者の懸念が杞憂にすぎぬことを祈念しつつ――今なすべきことを,筆者もまた一つ一つ考え始めたいと思います.

PS今こそ,日本の自由主義を守るために,下記書籍ご一読ください.
・ブラック・デモクラシー:民主主義の罠http://www.amazon.co.jp/dp/4794968213
・デモクラシーの毒 http://www.amazon.co.jp/dp/410339661X
・凡庸と言う悪魔:21世紀の全体主義 http://amzn.to/1Jsre9O

—メルマガ発行者より

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本当に経済学は経済を良くするのか?
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TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
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三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
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【三橋貴明】生産したら必ず売れる世界

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【今週のNewsピックアップ】

2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本(前編)
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12096481162.html
2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本(後編)
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12096841415.html
続 2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12097198534.html

財・サービスは生産すれば、必ず売れる。
預金は必ず借り入れられ、投資に回る。
法人税を引き下げれば、必ず企業の設備投資が増える。

雇用環境は常に完全雇用が成立している。
金利を引き下げれば、必ず企業の投資が増える。
為替レートが下がれば、必ず輸出が増える。

国債を発行すると、金利が上がり、企業の設備投資が減り、成長率が下がる。
デフレ脱却のために必要なのは、マネタリーベースの拡大である。
個別価格が低下しても、余ったおカネが必ず他の財・サービスの購入に回るため、一般物価は上がらない。

潜在成長率を高めれば、成長する。
生産性向上は常に正しい。
消費税を増税しても、十分な金融緩和(定義不明)を実施すれば、デフレにはならない。

などなど・・・・。

上記、現在の日本で全く成立していない「常識」は、全て「ある仮設」を前提にしています。すなわち、セイの法則ならぬ「セイの仮説」です。
セイの仮説。「供給が需要を生み出す」という経済学の基本となる考え方に基づくと、経済成長のためには潜在GDP(供給能力)を高めればいいという話になります。

そのためには、規制緩和、自由貿易を推進し、競争を激化すればいい。政府の財政出動は、不要な需要を創出するだけなので、NG。
という話なのですが、上記は「デフレーション」という現象を想定していません。さらに、国民の安全保障も無視します。

そして、決定的な話なのですが、なぜかデフレ対策は「国民」を豊かにする政策であり、逆に緊縮財政・構造改革(規制緩和・自由貿易)というインフレ対策は、国民ではなく一部のグローバル投資家を潤す政策になってしまうのです。

ここで言うグローバル投資家には、もちろん一部の日本人も含まれています。

現在の世界は、デフレ期にも関わらず「インフレ対策」に各国が血眼になり、状況を悪化させてしまっています。その根っこには、そもそも、
「緊縮財政や構造改革というインフレ対策が、グローバル投資家を利する政策である」
という現実があるわけです。

というわけで、現在の世界が抱える大問題「グローバリズム」に焦点を当てた一冊、「2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本」を徳間書店から刊行いたしました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4198640475/

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[三橋実況中継]大阪ダブル選に望むこと

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講演で地方を回っていると、我が国の地方は本当に交通インフラが「未」整備であることが分かります。

インフラ未整備の地域と、インフラが完備し、しかも大都市圏に近い地域を同じ土俵に乗せ、
「さあ、競争しなさい」
などとやった日には、インフラ完備側が必ず勝ちます。

ユーロ・EUという「フェアな市場」で、高生産性国ドイツと低生産性国ギリシャが競争し、当たり前の話としてドイツが勝ち、ギリシャが負けたのと同じです。

また、都市圏にしても、インフラが未整備、もしくは整備に失敗した結果、十分な経済成長を達成できていない地域があります。
特に、関西圏は「インフラの失敗」が目立ちます。本来、東海道新幹線は新大阪ではなく、大阪に接続するべきでした。さらに、関西国際空港は「神戸空港」の位置に建設するべきだったと思います。

関空が三ノ宮から18分、大阪から40分という話になれば、阪神地域の経済成長率は確実に高まったはずです。
インフラ整備の失敗が目立つ関西圏ですが、この上、リニア新幹線が27年に「名古屋まで」、北陸新幹線も「敦賀まで」という話になってしまうと、冗談抜きで経済はマイナス成長を続けることになると思います。

本日は、大阪W首長選挙です。「交通インフラ」の重要性を理解している大阪府知事、大阪市長が誕生することを、一日本国民として願ってやみません。

◆徳間書店「2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本」刊行となりました。
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発売直後に増刷がかかりました。ありがとうございます。
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すでに、Amazonでご購入頂いた皆様にもご参加頂けます。11月23日(月)23:59までになります。

◆ヒカルランド 「ドイツ第4帝国の支配と崩壊 亡国の新帝国主義(グローバリズム) 日本人に緊急警告!」発売中!
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◆飛鳥新社「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな」 またもや増刷になりました(これで第五刷です)。ありがとうございます。
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◆週刊アサヒ芸能 連載「三橋貴明の列島丸わかり報告書」第四十五回「物価と所得の関係から、デフレの正体が明らかになる」
http://www.asagei.com/

◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第151回「合成の誤謬を打破せよ!」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/

◆Klug連載 三橋貴明の「経済ニュースにはもうだまされない」 第332回 歴史に名を遺した安倍政権
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2015/11/17/024801.php

◆有料メルマガ 週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~ 週刊三橋貴明 Vol339 担保なきマネー
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
先週に引き続き、さらに皆様が愛する「おカネ」について突っ込んで考察してみました。

◆メディア出演

11月25日(水) 6時から文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/

◆三橋経済塾

11月21日(土) 第十一回対面講が開講になりました。インターネット受講の皆様は少々お待ちくださいませ。
http://members4.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?page_id=8
ゲスト講師は柴山桂太先生(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)でした。

◆チャンネルAJER 更新しました。
『投資の重要性①』三橋貴明 AJER2015.11.17(5)
https://youtu.be/PLPnW3LWuPQ

【おすすめ動画】

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【平松禎史】霧につつまれたハリネズミのつぶやき:第十九話

From 平松禎史(アニメーター/演出家)

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TPP日本の植民地化を進めるのか・・・?
その答えはこちら
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

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 ◯オープニング

フランスはパリで同時多発のテロが起き、130人を超える市民が犠牲になりました
亡くなられた方々への哀悼と、痛みを共有したい気持ちです。

すでに多くの方が指摘しているように、テロ集団「ISIL」によるフランスのテロ以前に、欧米社会による空爆、掃討作戦でシリア・イラクなどイスラム世界の人々が殺されています。
双方が「正義」を唱え、相手を「平和を乱す者」と設定して殺し合っています。

すべての被害者に対して哀悼の意を捧げたいと思います。

私たちにとって全く理解の出来無い暴力の連鎖です。
一連の事件に対し、様々真剣な意見が交わされていていろいろと考えを巡らすのですが、まずは自分に対して、どこまでいっても『裏窓』から見た眺めにあれこれ言っているだけじゃないのか、と疑問が湧いてくるのです。
イスラム社会についても、欧米社会の考え方も、私たちには「よく知らない」世界と考えざるを得ないところがあります。

少し角度を変えてみて
ヒッチコック監督作品でも人気の高い『裏窓』の世界観と重ねあわせて考えてみます。

第十九話「『裏窓』からの眺めが襲って来る日」

 ◯Aパート

映像の技術的な話になりますが、映像演出では映っている画面が誰の視点なのかを意識します。
誰の視点なのか明確にしない映像は、あまり長く続くと不安を覚え、「で、何?」と疑問が湧いてしまうのです。
ドキュメンタリーではナレーションが共感の糸口を担保し、物語では観客が共感できる「よく知っている」主人公が必要になります。

観客と多くの情報が共有される登場人物が主人公になります。どんなに有名な俳優が演じていても、前情報で主人公だと説明されていても、映像での情報共有が不十分だと物語をうまく伝えることができなくなります。
信頼関係ですね。
そうすると、主人公の見た景色であるとか、会話している人物は、主人公の気持ちを元に観察することになります。
ボクはこの言葉には慎重ですが、一般に「感情移入」と言われるものです。

観客が「よく知っている」と感じる主人公の見た世界を、観客も共有することになりますから、特に古典的な演出スタイルの場合、視点を明確にすることが最も重要なのです。

 × × ×

『裏窓』の主人公ジェフはカメラマンで、危険な場所へ赴いて刺激的な写真を撮る行動派カメラマン。
カーレース事故の決定的瞬間を撮った時に巻き込まれ、脚を骨折して車椅子生活を強いられていることが冒頭の1分ほどで分かります。
観客のほとんどの人々とカメラマンの生活は重ならないのですが、この向こう見ずな人物に親近感を持つように演出されているので、ジェームス・スチュワートの人柄とあいまって「よく知っている人」のように感じられるようになるのです。

もう一人の主人公リザはグレース・ケリー扮するファッションモデルで、カメラマンの恋人。
絶世の美人でチャーミングだが、どこかプライドの高いイメージ。役柄もそのままで、見ているうちに「よく知っている人」になっていく。

ジェフとリザには対立する人物が二人登場します。
一人は看護婦で往診にやってくるステラ。
口うるさくて何かと説教口調で、ああ言えばこう言うタイプ。恋人との関係にも口を出したりして疎ましがられますが、憎めないおばちゃんで好感が持てます。
もう一人はカメラマンの旧友のドイル刑事。
熱血気味なジェフとは対象的に、ものごとを冷静に見るややニヒリストで良い感じではない。
この二人には「よく知っている」人である主人公たちと信頼関係があるので、意見は対立しても仲間だと認識することになります。

車椅子生活のジェフは暇つぶしに裏窓から見える景色を観察して過ごします。
裏窓から見える景色は「よく知らない」人たちが住んでいる、世界の縮図なのです。
ジェフにとって「よく知らない」人々は愛すべき隣人たちで、映画の観客も同じような共感を得ることが出来ます。

映画の舞台はジェフの住む一室と裏窓から見える中庭を囲むアパートのみ。
観客と対面する登場人物は四人だけです。
非常にコンパクトに設計された世界から、現代にも通ずる様々な愛憎が描写されます。

ジェフとリザ、ステラおばちゃんが観客にとって「よく知っている人」になり、裏窓の世界が紹介され、映画の主な要素が揃ったところで「事件」が起きます。
事件を起こすのは裏窓世界の「よく知らない」人のひとり、セールスマンのラーズ・ソーワルドです。

 ◯中CM

そのまま『裏窓』の話を続けます。

この映画の前半で重要なのは、「事件が起きた様に見える」ことなんですね。
ある日を境に病気で寝ていたはずの奥さんが忽然と消える。
その数日前の夜、悲鳴のような声をジェフは聞き、大きなトランクを何度も運び出す夫を目撃します。
カメラマンは事件現場に慣れているため、病気がちの奥さんを夫(ラーズ)が殺してバラバラにしどこかに捨てたのだと結論づけます。
しかし、誰もその現場を見ていないし、映画でも映されません。あくまで「疑義」です。
リザは当初この話を疑いましたが、夫が始末している大型の包丁やのこぎりを見て「殺人」を信じます。それだけでなく、ジェフとふたりで推理に夢中になっていきます。
しかし
旧友のドイル刑事だけは慎重で、信用しません。
捜査はできないが調べてみると言って後日幾つかの証言を取ってきます。
その結果は「殺人」を否定するものでした。
奥さんは療養で田舎に行ったというのです。

主人公二人は、そんなはずはない。確かにあの夫が殺したに違いないと憤ります。

そして、リザは気付きます。

奥さんが無事ならそれで何より良いはずなのに ”殺人を期待していた”

…と。

この場面は、佐藤健志さんの本メルマガへの投稿『「聖羅ちゃん」のパラドックス』( http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/11/18/sato-64/ )でも指摘された問題点とも通じますね。

この前後が「起承転結」の「転」に位置する場面です。

 ◯Bパート

そんな時、向かいのアパートの奥さんが泣き叫ぶ。愛犬を殺されたのです。
裏窓から見える住人たちに叫びます。
「誰なの!?私の犬を…!これが”隣人”っていうの?隣人っていうのはお互いの生き死にまで気にかけるものよ。皆は無関心。こんないたいけな小さな犬を殺すなんて。唯一皆を慕っていたのに。慕ってきたから殺したの!?・・・」

この場面だけ、ジェフの視点から離れて描写されます。
この奥さんの叫びは映画の登場人物の誰の視点でもないのです。
この騒ぎを見ていた裏窓の住人たちは、同情したり、パーティの方が大事と無関心だったり受け取り方は様々。
ジェフとリザも殺犬事件が起きた中庭からの視点で、住人たちのひとりとして映されます。彼らはどう受け取るのか?と。

このかなり唐突な視点移動によって、見ている観客も我に返ります。
あの騒動にひとりだけ無視を決め込んでいた人物がいました。
ラーズ・ソーワルドです。
ジェフは、花壇の土を掘り返す犬をラーズが怒っていたのを思い出します。
2週間前の写真と比較すると手前の花が低くなっている。掘り起こして再び植えない限り一部だけ低くなることはあり得ない。
「何か」を埋めたのだ。

殺人を期待するゴシップ趣味から誤認したのではなく、現実に起こっていた、とわかります。

ここからはラーズが妻を殺したことに疑う余地がなくなり、行動に出ます。
リザがラーズの部屋へ忍び込み、生きていれば付けているはずの結婚指輪を発見します。
この時、戻ってきたラーズとリザが揉み合いになります。

車椅子のジェフと同様、観客はリザを助けに行くことができません。
映画館で観た時は「誰か助けて!」と叫びたくなりました。緊迫した見事な場面です。
この後はラストに向けて一気に畳み掛けていきます。

 × × ×

この映画は女性の批評家に覗き見を肯定する悪趣味な映画だと酷評されました。
しかし、「映画」そのものが他人の人生や他の世界を覗き見する装置ですから、この批判は映画自体を理解していないことになってしまいます。

世界の縮図として描く意図は明確ですし、人が持つ予断や、与えられた一方的な情報で事実を捻じ曲げかねない危険性を示唆している点でも一種の社会批判になっています。

今回は、映画の見方や解釈は控えめに、ほとんどあらすじを書いただけになりましたが、それだけでも現代社会に対する問題提起を紹介することになる。
『裏窓』に限らずですが、歴史に残る名作と言われる作品は時代を超えて楽しめます。
作り手に刹那的な話題性に頼らない社会を見る目があり、作品を多角的に見ても楽しめるからだと思います。

さて、『裏窓』のグレース・ケリーは、彼女が出演したヒッチコック映画3本の中で最も魅力的です。
ファッションモデルでどこか気取っていた感じの前半から、自ら容疑者宅へ忍び込む行動力を見せるとこなど、いわゆる「ギャップ萌え」の古典です。
そんなグレースのライバルが、ラーズ・ソーワルドの隣りに住む「美人ダンサー」。
彼女は下着姿でダンスのレッスンをしたり、リッチな男たちにモテモテなエンジョイ系のギャルなのですが、最後の場面で本命の男性が登場します。
彼氏はリッチな男どもと違って背が低くてぶさいくな軍人でした。

『裏窓』は1954年公開です。
ドイル刑事は、ありもしない事件なんかより戦争のホラ話でもしようやと言うのですが、ニュアンスからして昔話で、この戦争とは第二次世界大戦のことでしょう。
しかし、前年まで朝鮮戦争があったのです。
会話は聞こえないので戦地から帰ってきたのかわかりませんが、長いこと遠く離れていた感じが二人のしぐさから伺えます。
ジェフとドイルの話し方とはかなり温度差があります。
現代では「忘れられた戦争」と言われる朝鮮戦争ですが、太平洋の向こう側の戦争は、もしかしたら「裏窓から見えるどこか」のように感じる面が当時からあったのかもしれません。

 ◯エンディング

裏窓から散々覗き見をしていたジェフは、ラーズが部屋に襲来し殺されかけることで罰を受けます。
自分は安全地帯にいるのだから身の危険はないはずだ、という思い込みで過度な干渉をしたせいだ、とも思えます。

ジェフが気が付かなったとしても、あるいは疑いを持ちつつ干渉しなかったとしても、ラーズは遅かれ早かれ逮捕されていた可能性があります。
しかし
その保証がないからこそ、ジェフは事件に干渉した。
映画としては、その行動を正当だと位置づけています。
裏窓からの眺めが襲ってきたとしても。

ラーズにどんな言い分があったとしても妻殺しは明確に重罪です。

テロも、どんな言い分があったとしても殺人に違いはない。
テロリスト掃討作戦も、どんな言い分があったとしても殺人に違いはない。
お互いに理解し合うのが不可能な者同士の「心中」のようです。

こんな風に考えられるのは、「今のところ安全な」日本にいるからでしょうか。

私たちはこれに軍事的な干渉を(後方支援含め)するべきかそうでないのか。
「ISIL」は日本に宣戦布告し、すでに殺された邦人がいるのだから悩む余地などない、と考えるべきか。

「ISIL」側の視点に立つことは不可能でしょう。
では、欧米側の視点には立てるだろうか。
日本の視点とは?

 ◯後CM
一方的にしか考えることができなくなった人々の物語。
アニメ(ーター)見本市第22話 「イブセキ ヨルニ」
原作:さかき漣「顔のない独裁者」、監督:平松禎史
http://animatorexpo.com/ibusekiyoruni/

↓↓発行者より↓↓

【YouTube】
三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

TPP日本の植民地化を進めるのか・・・?
その答えはこちら
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

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